副業といえばブログなど個人作業やウーバーイーツのようなスポットバイトを連想する人が多いだろう。しかし、新型コロナによる生活変化で「会社を掛け持ち」する人が増えている。正社員で働きながら、他社でも業務委託として働くのだ。今回の記事では、「副業×地方」の可能性について、地方企業と大都市の副業兼業人材のマッチングサービスを手掛ける「JOINS」代表の猪尾愛隆氏に取材した。

◆東京にいながら地方で働く?「副業×地方」の可能性

 昨今、注目されているのが、「大都市の人材が地方企業で働く」という副業のスタイルだ。なぜ今、地方なのか。地方企業と大都市の副業兼業人材のマッチングサービスを手掛ける「JOINS」代表の猪尾愛隆氏に話を聞いた。

「当社の’20年9月末時点での登録者は3527人。これは1月の約3倍の数字です。登録者の多くは首都圏や大都市の会社員で、特に目立つのが、40代前後の大手IT企業人材と定年を控えた大手製造業の50代の社員ですね。また、受け入れを希望する地方企業も約6倍の243社と急増しています」

◆慢性的な人手不足を救う副業人材

 圧倒的な買い手市場ではあるものの、コロナ禍を経て地方企業での副業のニーズが高まっているのは間違いない。求人を出す企業の業態を見ても、機械・製造業から小売業、酒造会社、水産加工業、和菓子店など多彩なジャンルの企業が副業人材を募っている。

「日本のGDP比率を見ると、その6割を占めているのは地方です。また、全国で約360万社ある企業のうち、地方企業が約7割です」

 まさに日本経済の屋台骨ともいえる地方企業だが、労働人口の減少により慢性的な人手不足状態に陥っているのは周知の通り。そこで一筋の光明となるのが、リモートで参加する副業人材なのだ。

「地方の中小企業には、『目先の業務に手いっぱいで、やりたくても手が回らない』という課題が山積しています。しかし新たに正社員を雇うには人件費が賄えないし、過疎地では条件に見合う人材がそもそも見つからないなど、ハードルが高い。一方、リモートでの副業なら首都圏の人材が参加できる。

 極論ですが、僻地にある企業でグーグルの社員が働くことだってあるわけです。そういった『リモートU・Iターン』のような働き方が、徐々に広まりだしています」

◆実際に求められるスキル

 では、実際にどのようなスキルが求められるのか。

「副業求人のなかでももっともニーズがあるのが、業務改善の領域ですね。ECを強化したい、ウェブ経由で集客したい、ITツールで手作業の業務を自動化したい……という内容です。

 これらは、やったことがない人には難しそうに見えますが、経験のある人にとっては難易度が低いもの。特に大企業で働いている人の中には、現場の生産性を上げるための組織化や業務マニュアル作成をしている人も多く、ニーズが高いんです」

◆副業を地方移住のきっかけに使う人も

 また、昨今のコロナ禍をきっかけに地方への移住を考える人も増えている。そんな人にとっても、副業が移住の足掛かりになりうる。

「定住者でもなく、観光客でもない、その地域に関わっている人口を『関係人口』と呼びます。これは昨今、地域との新たな関わり方のモデルとして注目されているのですが、地方企業での副業はまさにこれ。いきなり移住するのはハードルが高いですが、実際に地元の企業の一員として働くリモート副業を通して、地域社会との密な関係を築くことができるはずです」

 そう語る猪尾氏自身、’18年からはJOINSに加えて長野県白馬村の地元企業でも兼業し、都心との二拠点居住を行っている。

「実際に地方の企業に関わり、いろんな施策を提案・実施したのですが、『一番効果があったのは何ですか?』と聞くと、『会社にSlackZoomを取り入れてくれたことだ』と言われました(笑)。そういったニーズがまだまだ地方の企業にはあるわけです」

 自分が当たり前と思っていた業務も副業人材として大いに喜ばれる可能性がある。そんなキャリアの好循環が地方には存在するのだ。

◆地方企業の「副業人材」求人例(「JOINS」より)

※情報は取材当時のものです

ニューズ(衣料品小売業/滋賀県
業務形態…業務委託
勤務形態…リモートOK
業務内容…ECサイトの改善・効率化や自社サイト集客の強化
目安稼働時間…可能な業務時間と訪問回数を提示してください
報酬…時給~5000円

ウィルグラン化粧品(化粧品メーカー京都府
業務形態…業務委託
勤務形態…リモートOK
業務内容…品質管理の業務フローや受発注管理システムの改善
目安稼働時間…可能な業務時間と訪問回数を提示してください
報酬…時給~5000円

【「JOINS」代表・猪尾愛隆氏】
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、広告代理店クラウドファンディング会社を経て’17年、同社を起業。東京と白馬で二拠点生活を送る。

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[副業解禁!]―


イラスト/bambeam