猿の知能が高いことは周知の事実だが、このほどカナダとインドネシアの共同研究で、インドネシアのバリ島に住む野生のカニクイザルが、食べ物を手に入れるため人間と取引交渉するほどの能力を持っていることが発表された。
研究では、カニクイザルは寺院を訪れる観光客が身に着けている高価な所持品をターゲットにして強奪し、それを「身代金」として、価値に見合った質もしくは量の食べ物と交換するまで所持品を返さない知恵を持っていることが判明したという。『The Guardian』などが伝えている。
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人間と取引交渉する高い知恵を持つカニクイザル
1月11日、カナダのレスブリッジ大学とインドネシアのウダヤナ大学が共同研究したカニクイザルについての論文が、英科学誌『The Royal Society』で発表された。
研究チームが、インドネシアのバリ島ウルワツ寺院に住む野生のカニクイザルと、寺院への訪問者の相互作用を撮影するのに273日以上を費やした結果、カニクイザルが食べ物を人間から入手するために、高い知能を発揮していることが判明した。
古代遺跡を徘徊しているカニクイザルは、無防備な観光客から所持品を奪い、「身代金」として相応の食べ物が提供されるまで、所持品を返さないという知恵を使い、利益を最大化させているという。
カナダのレスブリッジ大学心理学准教授で、今回の研究の筆頭著者でもあるジャン・バプティスト・レカ博士は、このように述べている。
寺院スタッフは、観光客には全ての貴重品をジッパー付きのバッグに入れ、しっかりと持ち抱えておくようアドバイスしていますが、それに耳を貸さない観光客は決まって猿の被害に遭っています。抜け目のない猿は、ヘアピンや空のカメラケースなど、人が盗られてもあまり気にしないような物ではなく、電子機器など食べ物と交換する可能性が最も高い所持品をターゲットにすることを好みます。
携帯電話や財布、眼鏡は猿が狙う高価な所持品の一部です。猿は、被害者にとって最も価値あるアイテムを判断する能力に長けていて、それらを奪うことでより良い質の、もしくはより多い量の報酬(食べ物)を要求するのです。
研究によると、猿が人間に所持品を返すまでの最長待機時間は、観光客と寺院スタッフの17分の交渉を含めて25分にも及んだそうだ。
また、価値の低いアイテムを盗んだ場合、猿はより少ない報酬を受けることになるが、逆に物々交換の頻度を成功させる可能性が高くなったことも明らかになったという。
パンデミックで餌が減ったことも一因か
この研究では、過去に実験室の別の猿で同様の行動を調べた時には観察されなかった行為、つまりは「前例のない経済的意思決定プロセス」が発見された。
このような行動は、猿が4歳になるまでに学習することが判明しています。価値ある物を人間から奪い、“取引き”を求めるのは猿の文化的知性の表現です。社会的に学習されており、集団では少なくとも30年間は世代を超えて維持されてきた知恵と言えるでしょう。(レカ博士)
ウルワツ寺院では、スタッフが猿と観光客の関係が悪化しないように仲介役を務めているが、野生の動物管理は決して容易ではなく、地域にとっては大きな問題となっている。
インド全域では、猿が農作物を食べ散らかしたり、村人の家を襲撃したり、医療従事者からコロナ検査用の血液サンプルまで盗んだりするなど、頭の痛い事態が頻繁に発生しているという。
しかしこれらは、パンデミックにより観光客が激減し、貰える餌が少なくなったことが原因ともいわれている。
去年には、タイのロッブリー県で観光客が減ったことから空腹になっている猿の現状を知ってもらおうと、イギリス人ピアニストが寺院前でピアノ演奏をしたニュースが伝えられていた。
written by Scarlet / edited by parumo
http://karapaia.com/archives/52298489.html
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