タクシー乗務員に行先を告げると、「この道で行っていいですか?」などとコースを聞かれることがあります。乗務員は地理を心得ていても、それを聞くのが基本という会社もあるのはなぜでしょうか。

コースはお任せでも「ルート確認は基本」

タクシー乗務員に行先を告げると、「大通りで行きますか? それとも、●●の前を通って行きますか?」などと道を聞かれることがあります。なぜでしょうか。

道のことなら、乗客よりもタクシー乗務員の方がよく知っているというイメージはあるでしょう。あるいは経験の少ない乗務員であれば、「このあたりは詳しくないから、ナビをセットしてもいいですか?」などと正直に言われることもあります。上述した乗客へのルートの質問は、乗務員も道を知っていて、あえて聞いていると考えられます。

東京都内タクシー大手の日本交通によると、同社の場合、乗客への行先とコースの確認は「スタンダードマニュアルに定める基本行動として、必ず行うこと」だといいます。

というのも、乗客が希望する目的地までのコースは、必ずしも最短ルート、あるいはナビ通りとは限らず、特定の場所を経由するルートを求められることもあるそう。「乗務員が勝手にコースを判断することは、お客様の満足度を下げ、場合によってはトラブルにつながってしまうケースもあります」と話します。

このため、“コースはお任せ”の場合であっても、乗務員からは「では、●●通りで進行しますが、よろしいでしょうか」というような確認をするよう指導しているそうです。

ちなみに同社が利用者へのアンケートで、東京のタクシーの「悪いと思う点」を集計したところ「乗務員の接客態度が悪い」の次に「地理に詳しくない」を挙げる人が多かったといいます。このため同社は、地理の知識がサービスの品質、ひいては安全な運行に直結する重要事項と考えているそう。そのうえで、必ずしも最短ルートやナビが案内する通りではなく、乗客の要望や道路状況へ柔軟に対応しつつ、乗務員が適切にルートを判断していくのが望ましいといいます。

タクシー車内のイメージ(画像:Anurak Ponapatimet/123RF)。