群れで大電撃を放ち狩りをするデンキウナギを確認

群れで大電撃を放ち狩りをするデンキウナギを確認 /iStock

 水族館では薄暗い水槽の中にただ独りひっそりと佇んでいることが多いデンキウナギだが、ひょっとすると本来は仲間と一緒にいるのが好きなのかもしれない。

 ブラジル、アマゾン川流域のとある小さな湖で、これまで誰も見たことがなかった、群れで狩りを行うデンキウナギが目撃されたそうだ。

 そうした戦略はどうやらかなり有効であるようで、その湖では1.2メートルを超えるデンキウナギがたくさん生息しているという。

―あわせて読みたい―

きょうれつ!ってひらがなで打ちたくなるくらい強烈な電気ウナギの攻撃を可視化した映像
美しすぎる暗殺者。クリスタルブルーな電気クラゲ「カツオノエボシ」が大量漂着地獄だっちゃ!(オーストラリア)
1種類だけじゃなかった。最強の電気を放つ種から最弱の種まで、奥深いデンキウナギの世界。
デンキウナギの放電でメリークリスマス!
トマトが発する電気信号を数学モデルで分析。菌を媒介して仲間に合図を送っていた(米研究)

100匹以上で包囲して、電撃でとどめを刺すエレクトロマスター

 比較的最近になって発見されたデンキウナギの仲間「エレクトロフォラス・ボルタイ(Electrophorus voltai)」は、860ボルトの電気を放出する地球上の動物界で最強の電撃使いだ(なおデンキ”ウナギ”といっても、ウナギとはかなり異なる種)。

 米スミソニアン自然史博物館の魚類学者デビッド・デ・サンタナ氏らによって、E・ボルタイが群れで狩りをしているらしき場面が目撃されたのは2012年のこと。その様子は、100匹以上がみんなで力を合わせて獲物を狩っているかのようだったという。

 しかしたった1度の観察だけでは、それが普段からの習性だと断定することはできない。そこでデ・サンタナ氏らは2014年にも再び72時間におよぶ観察を行い、さらに5回群れでの狩りを目撃したとのことだ。

 これまでE・ボルタイのエサを食べる姿が観察されたのは一般に夜で、しかも単独でだった。ところが、その湖のE・ボルタイは昼夜ほとんどじっとしているという。彼らが狩りに出かけるのは明け方と夕暮れの時間だ。

 狩りが始まると100匹以上が円を描くように泳ぎ、小さな魚(ほとんどはカラシン科の仲間)の群れを徐々に浅いところへと追いやっていく。

 獲物を包囲して、もうどこにも逃げ場がなくなったところで、10匹ほどのE・ボルタイが進み出て、一斉に強力な電撃を浴びせる。

 獲物は水から飛び出し、再び落ちてくるときにすでに意識はない。あとは煮て食うなり、焼いて食うなりE・ボルタイの思うがままだ。


Solitary electric eels sometimes hunt in roving bands | Science News

集団で放つ合計8600ボルトの大電撃

 「この種の個体は最大860ボルトの放電を行えるわけですから、10匹が同時にそれを行えば、理屈の上では8600ボルトの電撃を放っていることになりますね」と、デ・サンタナ氏は語る。

 狩りは毎回1時間ほどで完了し、その都度5~7回の電撃が放たれるという。

 「群れでの狩りは哺乳類ではありふれたことですが、魚ではとても稀です。こうした行動が知られている魚は、ほかに9種しかいません。この発見がそれだけ特別なものだということです。」

群れでの狩りが一般的な習性かどうかはなお不明

 こうした狩りが普通の習性である可能性はあるが、それでもなお非常に珍しい行動かもしれないとデ・サンタナ氏らは考えている。

 というのも、地元の人たちへの聞き込みでは、そのような群れでの狩りの話が出てこなかったからだ。

 そのため、E・ボルタイが群れで狩りをするかどうかは、たとえば個体数が多かったり、それだけの仲間が隠れられる場所があるなどといった、何らかの条件に左右されている可能性がある。

デンキウナギ、エレクトロフォラス・ボルタイ(Electrophorus voltai

image by:Douglas Bastos

 定かではないものの、E・ボルタイは毎年湖に里帰りしている可能性が高いようだ。そこでデ・サンタナ氏らは草の根のデンキウナギ・プロジェクトを立ち上げ、地元の人々に協力を呼びかけた。

 地元の人たちの観察によって、群れで狩りを行うデンキウナギのほかの生息地が発見されたり、群れでの狩りが行われる条件が解明されたりするかもしれない。

 この研究は『Ecology & Evolution』(1月14日付)に掲載された。

References:nerdist / Smithsonian Institution / sciencenews/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52298481.html
 

こちらもオススメ!

―水中生物についての記事―

世界最大種のシロナガスクジラ、お尻の穴はどれくらい大きいのだろう?
地球史上最大のサメ「メガロドン」は母親の胎内で熾烈な生存競争を繰り広げていた可能性
新手の潜水艦?水中を泳ぐこの生き物の正体は?
海岸に打ち上げられた黒い袋状の謎の物体。その正体は?(アメリカ)
ウニに帽子を被せてみたら超かわいくなっちゃってどうしよう

―知るの紹介記事―

新型コロナウイルスの全症例をゲノム解読、世界をリードして変異種に備えるアイスランドの予防対策
人間から高額な所持品を奪い、価値に見合った餌をくれるまで返さない高度な知恵を持つバリ島の猿
オランダの保安検査場で、イギリスから来た入国者のハムサンドウィッチが次々と没収される。その理由とは?
子育て中の母猫の懐に忍び込み、子供のふりをした孤独な子猫、愛と幸せを手に入れる(インドネシア)
燃える山。炭層火災で6000年も燃え続ける「バーニング・マウンテン」(オーストラリア)
集団で放つ大電撃!デンキウナギは100匹以上の群れで狩りを行っていた