アイドルファンが東海道新幹線キセル乗車をし、書類送検されました。なぜ不正乗車をキセルというのでしょうか。またこうした場合、請求額はいくらになるのでしょうか。

両端だけ「金」だから

東海道新幹線へのキセル乗車で2021年1月15日(金)、複数の男性が鉄道営業法違反容疑で書類送検されました。

各メディアの報道によると、品川駅の改札を入場券で通過して新幹線に乗車した男性に、別の男性が名古屋駅で同駅の入場券を手渡すというもの。名古屋駅で入場券を用意した男性は、自分の分と別の男の分、2枚の入場券を改札に通したといいます(自動改札機での入場記録がない入場券は自動改札機で出られない)。

アイドルファン同士が「追っかけ」のため連携して以前から10回以上行っていたそうで、同様のアイドルファン同士による新幹線不正乗車は、2017年11月にも逮捕事例があります。

キセル」とは、広義では鉄道の不正乗車全般を意味することもありますが、そもそもは鉄道の不正乗車のうち、乗車時と降車時のみにきっぷを使い、そのあいだは対価を支払っていない場合をさします。

乗車時と降車時だけ――両端だけきっぷ代(お金)を使っていて、そのあいだは使っていないことを、両端だけ金属を使う構造である喫煙具のキセルにたとえて生まれた表現です。

キセルの請求額はいくらに?

キセルなどの不正乗車に対して、鉄道営業法、鉄道運輸規程により、鉄道会社はその区間の運賃に加え、2倍以内の増運賃を請求することができます(合計で3倍以内の金額。特急料金なども含む)。

今回のアイドルファンが、品川~名古屋間で東海道新幹線自由席を利用したとしたら、正規のきっぷ代は1万560円。その3倍は3万1680円です。

定期券を使い継続的に不正乗車を行っていた場合、以前にさかのぼって請求され、高額になる場合も珍しくありません。今回のアイドルファンも10回以上やっていたと伝えられているため、相応の金額が請求される可能性もあるでしょう。

また今回のアイドルファンのように、悪質な場合は、さらに鉄道営業法違反や建造物侵入などで逮捕、起訴といった措置がとられることがあります。

東海道新幹線のN700系(恵 知仁撮影)。