京都を中心としたMKタクシーが、2025年までに全車を電動化すると発表しました。LPガス車の運用は、あと半年ほどで終了する予定。国が掲げる新車の電動化目標よりも、大幅に早く燃料シフトが進む可能性があります。

LPGのジャパンタクシーは不採用

京都を中心に全国でタクシー事業を展開するMKタクシーが2021年1月19日(火)、今後の採用計画において、2025年までに全車両を電動化する構想を公表しました。国は2035年までに、東京都2030年までに新車を全て電動車にするという目標を掲げていますが、それよりも大幅に早く電動化を達成する構えです。

加えて現在、タクシー業界で数多く使われているLPガス(液化石油ガス、以下LPG)車については、早くも2021年8月に運用を終了するとしています。急速とも思える燃料シフト計画について、グループの中核である京都のエムケイに聞きました。

――従来のLPG車をEV(電気自動車)へ置き換えているのでしょうか?

いえ、ピュアEVである日産「リーフ」もタクシーに導入していますが、現時点ではガソリンHV(ハイブリッド)車への置き換えが主流です。トヨタの「クラウン」や「コンフォート」などLPG車の置き換えを進めており、京都のMKタクシーにおけるLPG車は、残り30台ほどとなっています。

――全国的にはLPGハイブリッドであるトヨタのタクシー専用車「ジャパンタクシー」への置き換えが進んでいますが……?

ジャパンタクシーは採用していません。クラウンコンフォートの置き換えでは「シエンタ」が多いですね。そのほかトヨタアルファード」「ヴェルファイア」「ボクシー」「エスクァイア」、あるいは日産「セレナ e-POWER」といったミニバンのほか、「カローラフィールダー」「カムリ」など、いろいろな車種を導入して試しているような側面があります。

――タクシー営業所内にLPGの供給設備があるケースも多いですが、インフラはどうするのでしょうか?

グループでLPGスタンドを2か所運営していましたが、すでに1か所は閉鎖しており、今年のLPG車の置き換え終了とともに、残る1か所も閉じます。当社の場合、グループでガソリンスタンドも運営しており、もともと営業所では燃料を入れていませんでした。

EVだと選択肢が… 電動化=EVに非ず

2017年に発売されたジャパンタクシーは、業界の強い要望でLPGハイブリッドが採用されましたが、エムケイではそれ以前から、LPG車を置き換える考えだったといいます。その理由について、「HVなどの燃費向上により、ガソリンとLPGとでトータルの価格差が縮まってきていたから」と話します。

LPGはガソリンに比べて4割ほど安いとされ、タクシーでは昭和30年代から広く使われてきました。しかし、タクシー車両の燃費向上と、LPG車の減少により、LPGスタンドの数は2016(平成28)年までの10年間でも約14%減少。地域によっては経営難からLPGスタンドがなくなり、タクシーが遠方まで燃料を入れに行かなければならないケースも生じています。

冒頭の通り2025年までの全車電動化を掲げたエムケイですが、この「電動化」は必ずしもEVではなく、PHVプラグインハイブリッド)やe-POWERなども含めた広義の「電動化」のようです。これに関しては、EVの導入にも課題があるからとのこと。

「現時点でEVのタクシー車両の選択肢としては、日産リーフ以外にありません。もっと1回あたりの航続距離が長く、充電時間の短い、タクシーに適したモデルが出てほしいというのが正直なところです。EVのタクシー専用車は、そうそう出ないと考えられるので、もし適した車両がなければPHVなどにするかもしれません。現状でもセレナ e-POWERはまとまった台数を導入しています」(エムケイ

2025年までに全車電動化したいというのは、MKグループの社内報などでかねてから明かしていた構想で、地域により多少の差は生じると考えられるものの、全国のグループすべてで共有している目標だといいます。MKタクシーでは4~5年のサイクルで車両を入れ替えていることもあり、2025年を見据えて、対外的な発表のタイミングを判断したということです。

多くのタクシーが行き交う京都の四条通。手前がMKタクシーの「プリウス」(画像:piyato/123RF)。