大乱闘スマッシュブラザーズ』(『スマブラ』)はとてつもないバケモノといえるゲームだ。Nintendo Switchで発売されているシリーズ最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』は2110万本の売上を記録しており、まさしく全世界で愛されるゲームとなっている。

四半世紀にも迫ろうとする『スマブラ』の歴史

 本作はさまざまなゲームキャラクターが一堂に会し、ふっ飛ばして相手を倒す対戦アクションゲームである。「マリオ」や「ピカチュウ」といった任天堂に関連したキャラクターを操作できるだけでなく、「パックマン」に「ロックマン」といったゲーム業界の古参と呼べる有名キャラクターも登場。そして『ストリートファイターシリーズの「リュウ」、『ファイナルファンタジーVII』の「クラウド」なども一緒に戦うという、ありえないコラボが実現している驚くべき作品だ。

 シリーズ初代となる『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』が発売されたのは1999年1月21日。つまり、いまから22年前だ。その長い歴史を重ねるうちに、『スマブラ』はここまでとてつもない作品になったのである。しかし、『スマブラ』は最初からいまのような“最強のゲーム”だったわけではない。

考えられない規模のコラボレーション

 まず、最新作である『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』がどれほどすごいのかを説明しよう。本作は歴代シリーズに登場するファイタープレイヤーが実際に操作できるキャラクター)がすべて登場しており、記事執筆時点で78体が存在。ここまで操作キャラクターが多いゲームはほとんどないと言ってもいいだろう。また、対戦を行うステージや、対戦中に流れるBGMの数も過去最多。「史上最大規模」の名にふさわしい一作となっている。

 前述のように、任天堂以外のゲーム会社からファイターとして参戦しているキャラクターも存在する。『メタルギア ソリッドシリーズの「スネーク」、『悪魔城ドラキュラシリーズの「リヒター」、『ペルソナ5』の「ジョーカー」、『ドラゴンクエストシリーズの「勇者」など、考えられないレベルコラボレーションだ。任天堂の『スマブラ』なのに、『ドラクエ』も『FF』も入っているのである。

 最も驚くべき参戦キャラクターは、『マインクラフト』の「スティーブ / アレックス」だ。『マインクラフト』は自由にブロックを設置してものづくりを楽しむゲームであり、「世界一売れたゲーム」としても有名。販売本数は1億7600万本を突破しており、もはや名前を知らない人のほうが少ないかもしれない。

 もちろん、単純にゲーム作品同士がコラボするのであればよそでもありうる。『スマブラ』はただコラボするだけではないのだ。

単なるコラボとは一線を画する“こだわり”

 ファイターとして登場するキャラクターにはそれぞれ技が用意されており、それがきちんと原作を再現したものになっている。たとえば『マインクラフト』のファイターであればブロックを置くことができる。もともと『スマブラ』にそのような要素はないので、ファイター追加と同時に新たなシステムも追加されるわけだ。

 あるいは、『ストリートファイターシリーズファイターであれば、波動拳昇龍拳コマンド技(特殊な動作で技を出せる格闘ゲーム特有のシステム)で出せるようになる。『ドラクエ』の勇者なら「メラ」や「メガンテ」といった呪文が使えるシステムが追加されるなど、原作をリスペクトしつつ細部まで徹底して再現を行うのだ。

 通常のコラボであれば、単純に作品にキャラクターが顔を出してもとのゲームシステムに合わせた形で活躍する流れになりやすい。しかし『スマブラ』の場合、コラボ作品のゲームシステムを吸収して成長していく。

 ステージのこだわりもかなりのもの。単純に100ステージ以上が用意されているうえ、その種類も豊富。『スマブラオリジナルのものもあれば、参戦ファイターに関連したステージもあり、あるいは『ドンキーコング』や『星のカービィ』を意識したレトロなものもあれば、ニンテンドーDSや『Wii Fit』といった大ブームを起こしたゲームモチーフにしたものも存在。そして、それぞれで発生する仕掛けが異なるこだわりよう。

ゲーム博物館”とすらいえる圧倒的な情報量

 楽曲は800曲以上も収録されており、これだけでゲームソフトの定価を越える価値を持つだろう。元の曲がそのまま収録されているケースもあるが、『スマブラ』のために新たにアレンジした楽曲も多数収録されており、アレンジ担当の作曲家もゲーム音楽の有名な人物ばかり。

 また、最新作ではファイターとは異なる「スピリッツ」という存在がある。これはファイターの能力を変化させる役割を持っており、シンプルイラストのみで登場するサポートキャラクターだ。イラストで登場するがゆえに、実に多くの作品のマイナーキャラクターも出せるようになっている。

 たとえば、ゲーム機のなかで犬を飼えるゲームNintendogs』の「トイ・プードル」なんてキャラクターもいれば、有名なインディーゲームCuphead』のキャラクターデビル」など、本当にピンからキリまでさまざまなキャラクターが出てくる。記事執筆時点でスピリッツ1400体存在しており、アイテムの「モンスターボール」や「アシストフィギュア」などから出てくるキャラクターも含めれば、『スマブラ』に登場するゲームキャラクターはまさしく膨大な数になる。もはや『スマブラ』は、“ゲームの歴史博物館”とすら呼べるくらいとんでもない作品なのだ。

マリオの生みの親、宮本茂からはNGを出されていた

 そんな『スマブラ』の企画を考えたのは、現在も同シリーズディレクターを務める桜井政博氏。『星のカービィシリーズの生みの親としても有名で、当時はHAL研究所というゲーム会社で開発を行っていた。

 このころは『ストリートファイターIIシリーズなど、2D対戦格闘ゲームがとても人気だった。しかし2D対戦格闘ゲームは進歩を続けると同時に複雑になり、プレイヤーを選ぶようになっていった。ゆえに桜井氏はそのアンチテーゼとして本作を発案。ニンテンドウ64の特徴である3Dスティック360度自由に動かせるアナログスティック)を活かし、気軽に楽しめて奥深さもある対戦アクションゲームを目指していた。

 任天堂の第4代社長としても有名な故・岩田聡氏もHAL研究所に所属しており、同作プロトタイププログラムを手掛けていた。桜井氏と岩田氏、どちらが欠けていても『スマブラ』は生まれなかっただろう。

 プロトタイプ段階の名称は『格闘ゲーム竜王』。HAL研究所のある竜王町から取られたもので、当初は任天堂キャラクターを使うことを考えていなかったという。しかし、対戦アクションゲームには魅力的なキャラクターが必要で、任天堂キャラクターを使用するアイデアが浮かぶ。

 そこで岩田氏は、マリオの生みの親として有名な宮本茂氏に『スマブラ』の話を持ちかける。しかし、最初はNGを出されたという。単純にマリオらしさが保たれているかどうかも重要だし、もしそこに問題がなくともOKを出してしまえば、今後のマリオは『スマブラ』で作られたものをすべて引き継がなければならない。ゆえに宮本氏は慎重にならざるを得なかったそうだ。

 ならば実際に作りあげたもので納得してもらおうと、岩田氏はNGが出たことをあえて桜井氏に伏せたまま制作を続けた。そのままプレゼン用のテストバージョンが開発され、改めて宮本氏のもとに提出される。宮本氏が実際にゲームを遊んでみると、「ああ、これ、遊べるね。悪くないね」と納得できるほどおもしろいゲームに仕上がっており、ついにOKが出たという。

すぐには大成功といかなかった

 こうして『スマブラ』の企画は正式に動き出したものの、すぐには大成功とはいかなかった。そもそも考えてみてほしいのだが、「マリオピカチュウを殴る」というのはありえるだろうか? 容易にファンからの反発が想像できるのに、『スマブラ』ではそれをやらねばならないのだ。

 また、いまでこそ『スマブラ』は定番のパーティーゲームであり、かつプロプレイヤーも存在する対戦アクションゲームとなっているが、初代が出る前はその奥深さがゲーム雑誌などであまり評価されなかったという。岩田氏によれば、当時のゲーム業界には丸いものでなければという呪縛のようなものがあり、それと比較すると『スマブラ』は作家のこだわりが出た、だいぶ尖ったゲームだったようだ。

スマブラ』はこれからも進化を続ける

 任天堂オールスターが登場するとはいえ、キャラクターの知名度も足りなかった。「マリオ」、「ピカチュウ」、「ドンキーコング」あたりはともかく、「サムス」や「キャプテン・ファルコン」に至ってはゲーム好きでも「誰?」と思ってしまっても不思議ではなかった。

 しかし、桜井氏たちは「おもしろいゲームになる」という確信があるからこそ、『スマブラ』を作り上げた。同時にキャラクターたちの見た目や特徴も活かし、原作に対するリスペクトも込めた。最初こそ『スマブラ』の魅力は伝わりにくかったかもしれないが、そのうち人気は広まり熱狂するプレイヤーも増えていったのだ。

 その後もシリーズは続き、ゲームキューブの『大乱闘スマッシュブラザーズDX』は現在でも大会が開かれるほどプレイする人がたくさんいる人気の高いタイトルになり、Wiiで発売された『大乱闘スマッシュブラザーズX』では他社のゲストキャラも参戦。最新作は超ビッグタイトルになり、著名タイトルの人気キャラクターが参戦しまくるとんでもない作品になったのである。

 いまでこそ『スマブラ』は誰もが知るすごいゲームだが、初代が出るまでの苦労と22年間の積み重ねがあってこそ、いまの地位を築いている。しかも驚くべきことに、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』には追加コンテンツとして今後も新たなファイターが登場予定。つまり、さらなる成長を遂げるのは間違いないのだ。はたして『スマブラ』はどこまですごいゲームになるのだろうか。


参考文献
ゲームの話をしよう』(ファミ通Books) 著:永田泰大 2000年

・参考サイト
ほぼ日刊イトイ新聞 - 樹の上の秘密基地https://www.1101.com/nintendo/nin4/index.htm)

社長が訊く大乱闘スマッシュブラザーズX
https://www.nintendo.co.jp/wii/interview/rsbj/vol7/index.html

(渡邉 卓也)

各メーカーを代表するキャラクターが戦い合う/『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018年)