◆入国制限で引き裂かれる恋人たち

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「#愛は観光ではない」。このハッシュタグをSNSで見かけたことがある人も多いのではないだろうか。

 終わりの見えないコロナ禍で、海外に住む恋人と離れ離れになっている国際カップルが、このスローガンを掲げ、入国緩和を求めているのだ。

 日本では、2020年3月からの入国制限で、海外に自由に行き来できない状態が続いている。同年10月には、留学生やビジネス渡航など中長期の在留資格を持つ外国人の新規入国を認めるなど、制限を緩和し始めていた。しかし同年12月28日から、変異種の拡大に伴い、全ての国・地域からの新規入国を一時停止するという事態に逆戻りしてしまった。

 会いたくても、会えない。

 世界中の未婚の国際カップルが恋人から引き離され、このコロナ禍の犠牲となっているのだ。

◆ワーキングホリデーで入国も検討
 千葉県に住む20代の太田奈々さん(仮名)もコロナ禍で恋人に会えなくなったうちの一人。

 パンデミックが始まる直前の2020年1月に韓国人男性との交際を始め、同年2月末に韓国・ソウルで再び会う約束をしていた。ところが、2月下旬に韓国・大邱(テグ)で大規模感染が起こり、再会を見送ったという。その後、コロナウイルスの感染が拡大の一途を辿り、もう一年以上会っていない。

「最後に会ったのが去年の1月18日なので、もう1年以上になりますね。その時は、コロナがこんなに長引くなんて夢にも思わなかったですし、きっとすぐ落ち着いて、会いに行けると思っていたんです。今思えば、入国制限が始まるまでに無理をしてでも会いに行けばよかったなと思いますね」

 この一年間、直接会えない代わりにテレビ電話でやり取りをしてきたという。

「毎日2~3時間のテレビ電話は欠かせませんね。あとは、月に一度手紙やお菓子などをお互いに送り合っています。私たちは日本と韓国なので時差がなく、毎日電話もできますが、それでも直接会えないのはしんどいですね」

恋人が太田さんに送った手紙

 太田さんは、もし今後も入国制限が緩和されないのであれば、中長期の滞在を視野に入れ、ビザの取得を目指すつもりだという。

「徐々に暖かくなって3月頃になっても入国が緩和されないようであれば、ワーキングホリデービザか、長期の留学ビザを取得して、彼に会いに行くつもりです。お金もかかるし、今の仕事に支障も出るけど、彼に会うためには仕方ないですよね。日本は今年オリンピックを何としても開催すると意気込んでいるから、夏になれば入国できるようになるのかな、とも思っていますが、変異種も出てきている中で、もうあまり日本政府に期待していないんです」

 苦悩の表情を浮かべながら話してくれた太田さんの左手の薬指には、記念日に彼が送ってくれたというペアリングが光っていた。

◆直接会えないまま涙の破局
 一刻も早くまた会えることを信じながら待ち続けるカップルもいれば、コロナ禍で破局という選択をせざるを得なかったカップルもいる。

 韓国・ソウルに住む30代のチェ・ソンヒョンさん(仮名)は、流暢な日本語インタビューに答えてくれた。

 チェさんは、大阪旅行中に出会った日本人男性と、2018年から交際を始めた。遠距離恋愛ではあったが、月に一度は互いの国を行き来し、結婚も視野に入れながら順調に愛を育んできた。

 だが、2020年1月に会ったのを最後に、一年以上直接会えない状況が続き、破局という道を選んだ。

「次にいつ会えるか分からないストレスから、今まではしたことのなかったケンカが絶えないようになりました。いつからかお互いを疑うようになってしまったり……。2020年11月に、お互い鬱のような状態で、こんなにつらいならもう別れよう、ということになりました。

 お互いの誕生日や記念日を一緒に祝うことができなかったことですね。テレビ電話で彼は『ごめんね』と何度も謝ってくれました。『会いたいね。いつ会えるのかな』と言いながら二人で泣いたことも数え切れません。道行く恋人たちを羨ましく思う自分が惨めに思えたり……。別れるにしても、せめてあと一回くらい彼に直接会いたかったですね」

 そんなチェさんは、政府に対して、入国規制の緩和を求めている。

「日本政府はGOTOトラベルで国内旅行を推進していた時期もあったでしょう。それなのに、結婚を前提に真剣に交際している国際カップルが、未婚というだけで、依然として入国できないなんておかしいと思います。

 韓国政府も、世界中の未婚の国際カップルの声に耳を傾けてほしいです。私達は観光地には行きません。愛する人の腕の中に行ければ、それ以上は何も望んでいないんです」

◆結婚していなくても入国できる国も
 様々な制限はあるものの、デンマークが昨年6月に許可したのを皮切りに、ノルウェーオランダオーストリアアイスランドでは、検査で陰性であれば、国籍に関係なく、交際中の外国人の入国を許可している。

 諸外国との対応の差も浮き彫りになっている中で、日本政府は今後どのような対応をとっていくのだろうか。

 何千組もの国際カップルが、恋人が入国できる日を待ち望んでいる。彼らの声に耳を傾け、日本政府も柔軟な対応をとっていくべきではないだろうか。

 ただでさえ、言語や文化、宗教の違いなど障害の多い国際カップル。このコロナ禍が、未来あるカップルをこれ以上引き裂かないことを切に願う。

<取材・文/平良旺子>

【平良旺子】
ライター立教大学文学部卒。韓国語、韓国文化に精通。

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