国鉄時代から走る「大垣夜行」の流れを汲む、臨時夜行快速列車「ムーンライトながら」。なぜ廃止されてしまったのでしょうか。「車両の老朽化」といいますが、その置き換えはできなかったのでしょうか。

別の車両を使えばいいのでは?

東京駅大垣駅岐阜県大垣市)を結ぶ臨時夜行快速列車「ムーンライトながら」を廃止すると、JR東日本JR東海2021年1月22日(金)に発表しました。

「大垣夜行」と呼ばれていた国鉄時代からの長い歴史を持ち、普通列車乗り放題の「青春18きっぷユーザーなどに親しまれてきた列車で、廃止発表の当日はTwitterで日本のトレンド1位になるなど、鉄道ファンから、またそうでない人からも、大きな反応がありました。

なぜ今回、廃止されることになったのでしょうか。

理由のひとつにJRは「使用車両の老朽化」を挙げていますが、乱暴に言ってしまえば、「別の車両を使って運転するのが絶対不可能だ」というわけではありません。単純に別の車両を使って運転するだけならば、可能でしょう。

変わってしまった「ながら」を取り巻く状況

「大垣夜行」の流れを汲む臨時夜行快速「ムーンライトながら」。その廃止理由は、やはりJRが合わせて挙げている「お客さまの行動様式の変化により列車の使命が薄れてきたこと」が大きいのでしょう。

新幹線はもちろん、高速バスLCCなど、東海道の移動手段は21世紀に入っていっそう豊かになりました。夜を明かすにしても、ホテルからネットカフェまで、いろいろある時代です。

また「ムーンライトながら」は、2009(平成21)年まで毎日運転の列車でしたが、当時、期間限定で販売される「青春18きっぷ」のシーズン以外は空いていました。すでにそのとき「『青春18きっぷ』と500円ほどの指定席券で東海道を安価に、宿代も浮かして移動できる」という列車になっていた、と言えるかもしれません。

しかし、その運行には手間を要します。普段走らない列車を運行するコスト、深夜の運行にともなう人件費や勤務体系への影響、そこにJR東日本JR東海の2社にまたがって走ることによる、車両の使用料や収入の配分といった調整も必要です。

社会の状況が昔と変わっているうえに、走らせて得られる収入は安価な「『青春18きっぷ』と500円ほどの指定席券」。JRが「ムーンライトながら」を積極的に運行する理由は、見つかりにくいところです。

「銀河」とは根本的に違う「ながら」

こうした背景があり、むしろもっと早い段階に運転が終了してもおかしくはなかった臨時夜行快速「ムーンライトながら」。使用車両である185系電車が、2021年3月で定期運用から引退するタイミングをきっかけとして今回、廃止の発表になったと思われます。

「お客さまの行動様式の変化により列車の使命が薄れてきたことに加え、使用している車両の老朽化に伴い」というJRのリリース文、文字通りのところでしょう。代替車両を入れるにも、乗務員の訓練などが新たに必要になるなど、さらにコストを要します。

JR西日本2020年から新たな夜行列車WEST EXPRESS 銀河」を運行していますが、こちらは特急列車なほか、そもそもこの列車を中心に沿線地域、JR西日本エリアを活性化することを目的に誕生しており、昔から「移動手段」であった「ムーンライトながら」とは根本的に立ち位置が違います

一時、日本各地を走った夜行快速「ムーンライト○○」が「ながら」の廃止で終わることにもなり、正直、今回の発表にはいち鉄道ファンとして寂しさが拭えませんが、これが時代の流れというものなのでしょう。

東京~大垣間を結んだ「ムーンライトながら」(2009年、恵 知仁撮影)。