JR東日本には「死神」と呼ばれる電気機関車があります。「双頭連結器」といった特殊な装備を持つのが特徴ですが、近い将来に、その「死神」が引退するかもしれません。またこの「死神」、「コウノトリ」の一面も持ちます。

異なる連結器

「死神」という俗称を持つ機関車があります。JR東日本EF64電気機関車1000番台のうち、1030、1031、1032号機の3両です。

この3両は「双頭連結器」といった特殊な装備を持ち、引退した電車をけん引。解体工場へ運ぶ仕事をしていることから、鉄道ファンのあいだで「死神」と呼ばれることがあります。

一般的に、機関車と電車をそのまま連結することはできません。連結器が違うからです。

機関車や貨車は「自動連結器」を、一般的な電車(モーターを搭載し自走できる車両)は「密着連結器」を使っています。

このため、機関車に電車を連結してけん引するには、工夫が必要です。

その工夫が「双頭連結器」です。自動連結器の車両にも、密着連結器の車両にも連結が可能。「死神」と呼ばれるEF64形1000番台の3両はこれを備えることで電車のけん引を容易にし、解体工場へ運んでいます。

「コウノトリ」でもある「死神」 近い将来に引退?

ただこの「死神」、近い将来に引退するかもしれません。

JR東日本が2021年1月19日(火)、回送列車のけん引などを目的に、E493系交直流電車を新たに製造すると発表したからです。

EF64形1000番台が国鉄時代に製造され老朽化していることにくわえ、「機関車」特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃することによる効率化が理由に挙げられています。

E493系は「機関車」ではなく、現代の一般的な鉄道車両である「電車」。メンテナンスも運転も、数多く存在するほかの電車と共通的に行うことができるでしょう。

今後はE493系が「死神」と呼ばれる日が来るのでしょうか。

なお「死神」と呼ばれるEF64形1000番台の3両は、車両工場で製造された新しい電車を車両基地へ連れてくるという「コウノトリ」のような仕事も担当。電車の生と死に関わる機関車です。

武蔵野線用205系電車をけん引するEF64形1032号機(画像:photolibrary)。