―[貧困東大生・布施川天馬]―


 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆「鼻マスク受験者」の失格は妥当

共通テスト会場でマスクルール通りに着用しなかった受験生が強制退去を食らった」というニュースが連日、報道されています。

 1月16、17日に行われた共通テストにて、40代の受験者が「鼻を出してマスクを着用している」と6回注意を受けた挙句、不正行為と認定を受け、試験失格処分になったのです。この受験生は処分を不服としてトイレに立てこもり、警察が出動する事態にまでなりました。

「このコロナ禍に人が密集する試験会場で、マスクを鼻出しで着用するなんて!」と思われた方も多いと思います。しかし、その一方で「たかがマスクの着用法ひとつで受験資格はく奪はやりすぎだ」という意見も見られました。

 僕はこの処分に対して「受験資格を失って当然である」と考えています。おそらく他の東大生たちに聞いても意見はおおむね一致するのではないのかなと思います。

 なぜなら僕を含めた東大生たちは、全員この共通テストの前身にあたるセンター試験を受けていますので、そのルールの厳しさは身に染みて分かっているからです。

「たかがマスク」がいったいどうして「即失格」につながるのか? 今日はこれについてお伝えしたいと思います。

テストに厳しい掟が存在する

 センター試験から変わらないことですが、共通テストでもルールは絶対です。

 学校の先生たちは1月初旬になると、受験生たちに向かって「ある話」を必ずするようになります。それは「文字の書いた服を試験会場には絶対に着ていくな」という話です。

 共通テストセンター試験では徹底したカンニング対策が取られています。その一例として、文字が印刷された服を着て受験会場に行くと、「不正行為」として認定されてしまう危険性があるのです。

 これは実際に大学入試センターが公開している「受験上の注意」という冊子の11ページ目に規則として明記されています。

◆「受験上の注意」に違反行為が明記

 まさかそんな大げさなと思われるかもしれませんが、学校によっては「実際に着ていた服を脱がされた先輩がいた」という実体験が伝わっていることもあります。少なくとも僕が通っていた高校ではそうでした。

 極端な話、着ているパーカーの肩や背中などの目立たない部分裾に「ABC」と刻まれていてもいけません危険です。それがどんなに短く、どんなに簡単で、どんなに受験に関係ないであろう単語であったとしても、それが「文字が書いてある服」であるならアウトになる可能性が高いのです。

「社名ロゴが入ったSHARPマスクセーフ」のように個別にセーフ判定が出ている場合もあるにはありますが、基本的にはアウトになると思ったほうがいいでしょう。

◆「正しいマスクの着用法」とは?

 となると、あとは「鼻出しマスク」が受験のルールに違反していたのかということが問題になってきます。マスクについて調べてみると「受験上の注意」の5ページ目にマスクについての規定が明記されていることがわかります

マスク(予備のマスクを含む。)を持参し、試験場内では常にマスクを正しく着用してください。」

 そう記されているのです。それでは「正しいマスクの着用法」とは何でしょうか?

 これについては厚生労働省が公式YouTube上で「正しいマスクのつけ方」という動画を公開しています。

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 この動画によれば、「マスクは鼻の形にしっかりと合わせ、口元から鼻までをしっかりと覆わなくてはならない」というように解説しています。

 ですから、件の鼻出しマスク受験生は「マスクを正しく着用」できていなかったということになります。これは間違いなく「受験上の注意」に違反しており、不正行為に該当するといえるのです。

ゲーミングマスクもOK?

 このように共通テストをはじめとする試験では厳密にルールが定められていることが非常に多いのです。しかし、これは逆にいえば、「ルールに違反さえしていなければ何をしても問題はない」ということになります。

 たとえば、今回、マスクに関して規定されているのは「マスクを正しく着用しなくてはいけない」と「文字がプリントされたものを身につけてはいけない」という2点だけです。ですから、マスクは何色でもいいですし、どんな素材でもいいわけです。

 極端なことをいえば、先日、Razer社が発表したピカピカ光る「ハイテクマスク」(通称:ゲーミングマスク)をつけてもいいわけです。



 もっともこれは換気ファンが内蔵されている以上、試験中に使用してはいけない電子機器類としてカウントされてしまうかもしれませんが……。

◆「与えられた枠の中」で最大限工夫する

 同じような話は東大受験にもあります。東大入試の国語では解答用紙にいくつかの長方形の枠があり、この中に納まる範囲であれば、いくら解答を書いてもよいということになっています。

 問題文も「2行で書きなさい」というような指示になっており、受験上の注意にも「解答は与えられた枠の行数におさめましょう」と書いてあるだけです。

 つまり、「与えられた枠の中」という条件さえ守ればよく、解答の文字数は完全に自由なわけです。とはいえ、1行の枠の中には1行分しか文字を書くことができませんから、東大受験生の多くは「おおむね1行あたり30文字ちょっと」と習います。

 しかし、かつてこのルールを逆手に取った裏技が考案されたという噂が流れました。

◆2倍の文字数を書くことできる「神の一手

 それは「枠内に縦棒を1本引いて、枠を2分割する」というものでした。つまり、「与えられた枠内に収まるように書けばいいのであれば、すでにある枠を縦に2分割して行を増やせばいいのだ」と考えたのです。

 そうすれば、解答を2倍の文字数で書くことができます。解答文字数がカツカツになる東大国語において、この工夫はさまざまな可能性をもたらす「神の一手」でした。

 当然、東大の中でもこの噂は問題視されたようで、現在の東大入試の注意事項には「解答用紙の枠1行あたり1行しか文字を入れちゃダメだよ」という注意があります。

「枠1行を2分割して2行の解答を作成する」という荒業の対策がされているわけです。

◆「ルールの中で遊ぶ」ことも重要

「普通」に考えればそんなことはしません。しかし、ある年、突然現れて定着した「1枠1行ルール」に対し、「わざわざ東大がそんな注意事項を追加するなんて、こんなことをしたヤツが現れたに違いない」と話題になったわけですね。

 厳しいルールが設けられているのが受験ですが、そんな環境の中でこそ「ルールを破る」のではなく、「ルールの中で遊ぶ」という柔軟な発想が時には求められているのかもしれません。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』が発売中

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※写真はイメージです(以下同)