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混ざり合ったさまざまな話?

text:Kenji Momota(桃田健史
editor:Taro Ueno(上野太朗)

トヨタが2021年半ばミッドサイズSUVのEVを市場導入する。

この話の出所はヨーロッパだ。そうなると、噂があったRAV4 EVの日本導入はどうなるのだろうか?
 
トヨタのEV開発に関する発表や、業界内での噂によって、自動車メディアのスクープ班などが翻弄されてしまったことで、そこからさまざまな情報がネットやSNSを通じて流れてしまい、RAV4 EVという話が独り歩きしたように思えるのだが……。

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トヨタRAV4 PHV

RAV4 EVは日本市場向けに、あるのかないのか?

あらためて、これまでのトヨタ周辺の動きを時系列で整理してみたい。

まずは2019年6月6日トヨタスバルが、CセグメントからDセグメントのセダン、またSUVで活用するEVプラットフォームを共同開発すると正式発表した。その内容を見る限り、既存車を改良するのではなく、EV専用化することで、モーターの位置、駆動用電池の大きさ、そしてボディ形状の多様化が実現できることが示されている。

となれば、基本的にはガソリン車やハイブリッド車向けとして開発された新世代シャーシTNGAトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)とは違うものとなり、TNGAを使うRAV4のEV化は難しいと思われた。

ところが、それからしばらくして、筆者も参加したトヨタ東富士研究所で一部メディアが試乗したあるクルマの存在が注目された……。

UX 300eがあるのなら……

そのクルマとは、レクサスUX 300eだ。レクサスではエントリーモデルに属するUXをEV化したモデルである。

レクサスは、2019年の東京モーターショーで「レクサスエレクトリファイド」という電動化戦略を打ち出しており、UX 300eはその第1弾となる。正式な世界発表は、2019年11月の中国・広州モーターショーだった。

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レクサスUX 300e    レクサス

なぜ、中国での先行発表かというと、中国政府が進める新エネルギー車(NEV)規制への対応として必要不可欠なモデルだからだ。

トヨタブランドとしては、UXと同じプラットフォームを持つC-HR EVを中国で発売することを明らかにしており、トヨタ全体とし電動化に対する本気度を中国政府と中国のユーザーに示すためにも、UX 300eを中国でいち早く公開する必要があった。その後、UX 300eは日本で2020年度限定135台が発売された。

こうして、C-HRとUXという、ガソリン車とハイブリッド車が存在するCセグメントでも小型に属するSUVでEV化が実現するのであれば、「RAV4 EVも当然あるのでは?」というイメージを持つユーザーがいてもおかしくはない。

なぜならば、RAV4は、ガソリン、ハイブリッド、さらにPHEVプラグインハイブリッド)をすでにラインアップしているのだから。さらにいえば、RAV4 EVは、過去に2つの世代で生産されている。

初代、2代目ときて……

最初のRAV4 EVは、初代RAV4の車体を改造したものだった。登場したのは1997年で6年間に渡り少量が生産され、米カリフォルニア州内の個人や企業向けに販売、またはリースされた。

導入の目的は、同州のZEV(ゼロエミッション・ビークル)規制に対応するためだ。当時、筆者も現地で何度もRAV4 EVを試乗したが、かなりズッシリとした走り味だったことを思い出す。

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トヨタRAV4 EV(初代RAV4がベース)    トヨタ

近年でも初代RAV4 EVに遭遇することはあるが、多くの場合は北カリフォルニアシリコンバレー周辺である。当時から、この地域の住民は地球環境に対する関心が高い人が多かった。

そのシリコンバレー2000年代後半、2代目 RAV4 EVの開発が進んだ。テスラに対して、トヨタがZEV法対応として開発委託したのだ。

2010年代前半、2代目RAV4 EVのコンセプトモデル、そして量産モデルのお披露目の場で、テスライーロン・マスクCEOやトヨタ関係者から筆者は直接話を聞いたが、その時点では当然、テスラモデルSが登場していない。

それから10年も経たずして、テスラの時価総額がトヨタどころか日系全自動車メーカーの合計額を抜いてしまうことをだれが想像できただろうか?

そして時代は2020年代へ。世界でカーボンニュートラルなどCO2削減が大きな社会課題となり、ハイブリッドが主流のトヨタも早期のEVシフトを余儀なくされている。

e-TNGA登場

話をトヨタスバルとの共同開発EVに戻すと、そのコンセプトモデルの実車が公開されたのが2020年1月。渋谷区恵比寿スバル本社で開催されたスバル技術ミーティングだった。

コンセプトモデルとはいえ、「これをRAV4 EVと呼ぶには、イメージが違い過ぎる」と筆者を含めて集まった報道関係者の多くが口にした。これが、一部でスバルがアメリカで「EVOLTIS(エヴォルティス)」を商標登録していると報じられてきたモデルなのか?

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新型電動SUVのティザー画像    トヨタ

スバル幹部らは、トヨタとの技術協業の詳しい状況や、このモデルとRAV4 EVとの関係について、その場では明言を避けた。

そして2020年12月7日トヨタ・ヨーロッパは、2021年半ばにEVの量産型ミッドサイズSUVを発表するとして、そのラフスケッチを公開。また、EV専用のプラットフォームを「e-TNGA」と呼んだ。ミッドサイズSUVという部類で考えると、近年大柄化したRAV4も含まれる可能性があるが、e-TNGAといわれると、RAV4 EVは該当しない。

このミッドサイズSUVは、スバルEVの兄弟車と見るのが妥当だろう。

トヨタのEV戦略は、足元のCO2規制やEV義務化が厳しい欧州や中国での導入が優先され、新規ミッドサイズSUV EVの日本導入は2022年以降になるのか?

一方で、2021年中頃登場の日産アリア対抗として、3代目RAV4 EVの日本登場の可能性はないのだろうか?今後のトヨタの動向を注視してきたい。


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