「あ、申し訳ないです」と、つい口をついて出ることはありませんか? 軽い言い方から謝罪まで、私たちは「申し訳ない」という言葉をよく使います。

プライベートでもビジネスシーンでもなじみのある「申し訳ない」について調べてみましょう。

■「申し訳ない」の意味とは?

「申し訳ない」を辞書で引くと、「申し訳」と共に次のように掲載されています。

もうしわけ【申し分・申し訳】
(1)いいわけ。いいひらき。申しひらき。
(2)実質が伴わず、体裁だけであること。

もうしわけない【申し訳ない】
弁解の余地がなく、相手にすまない。わびるときなどに言う語。
(『広辞苑 第七版』岩波書店

「申し訳ない」の「申し訳」とは、言い訳や言い分という意味です。自分の行動や目の前にある状況を説明したり、弁解したりする時の「申し開き」のことです。

「申し訳ない」とは、その「申し訳」が「ない」のですから、「言い訳ができない」ということになります。

つまり「申し訳ない」には、「相手に対して言い訳や弁解をする余地がない、申し訳が立たないほどすまないことをした」という意味があります。

■「申し訳ない」はどういう時に使うのか?(例文付き)

「申し訳ない」は、「申し訳なく思います」「申し訳ない気持ちです」など、謝罪する時の言葉としてよく使われます。

謝罪の場面で使う言葉は、「申し訳ない」の他にも「すみません」「ごめんなさい」「失礼しました」などいろいろあります。

中でも「申し訳ない」は、「言い訳できないほどすまないことをした」という気持ちを表す言葉です。「すみません」や「失礼しました」よりも深い謝罪の気持ちを表すことができます。

実際にどのような場面で使えるのか、例文と一緒に紹介します。

◇相手に迷惑をかけてしまったことを謝罪する時

人に迷惑をかけてしまったことを謝罪する際に用いることができます。

☆例文

・「本当に申し訳ないことをいたしました。心から反省しております」

◇約束に遅れたことをわびる時

人との約束に遅れてしまったことをわびる際に用いることができます。

☆例文

・「お待たせしてしまい、申し訳ない(です)

◇忙しい相手に時間を都合してもらった時

忙しい相手にわざわざ時間を取ってもらった時にも、「申し訳ない」を使って気持ちを表すことができます。

☆例文

・「お忙しい中お時間をいただき、申し訳ないです

◇人に配慮してもらった時

「申し訳ない」は、謝罪以外の意味でも使われることがあります。

例えば、自分に配慮してくれた相手に対して恐縮している時、手間を掛けたと感じている時などに、次のように使います。お礼の言葉を添えることもあります。

☆例文

・「申し訳ないです。ありがとうございます」

◇人に頼み事をする時

前段同様、謝罪以外で人に頼み事をする際などにも「申し訳ない」を使うことができます。

☆例文

・「申し訳ないですが、ちょっと席を詰めていただけますか?」
・「申し訳ないのですが、明後日までにお見積もりいただけますか?」

■「申し訳ない」を使う上での注意点

「申し訳ない」を使う際には、次のような注意が必要です。

◇「申し訳ないです」は上司や取引先に使わない方が無難

「申し訳ない」に「です」を加えて、「申し訳ないです」とすることで、丁寧語になります。

丁寧語は敬語の1つです。気の置けない先輩や親しい上司などに対してであれば、「申し訳ないです」でも十分敬意を表せるでしょう。

しかし、普段から尊敬語・謙譲語で話すような上司や取引先などへの敬意を表すには不十分であるため、使わない方が無難です。

より深く敬意を表現したい場合には、謙譲語である「申し訳なく存じます」や「申し訳ございません」を使う方が適切だといえます。

◇公式な謝罪の場面で「申し訳ないです」を使用するのは避ける

遅刻、納品ミス、不良品事故、食中毒……ビジネスでは、社会や取引先に心を込めて謝罪すべき場面があります。

そうした公式な謝罪の場面で「申し訳ないです」を使うことはおすすめできません。

前述のように、「申し訳ないです」はあくまで丁寧語のレベルである、ということが1つ目の理由です。

2つ目の理由は、「形容詞+です」の形が許容されるようになったのは比較的最近であるためです。

年配の人や言葉にこだわりのある相手には、誤用だと受け止められる可能性も高いでしょう。

特に、会見などの公式な謝罪や重要な取引先への謝罪では、「誠に」や「大変」も加え、「誠に申し訳ございません」「大変申し訳なく存じます」などと言う方が良いでしょう。

■ビジネスシーンで使える「申し訳ない」の言い換え表現(例文付き)

「申し訳」という言葉を使った、言い換えの表現を例文と共に紹介します。

丁寧語や謙譲語など、相手や場面に応じて使い分けましょう。

なお、公式な謝罪の場面では特に、おわびの言葉だけを単独で使うのでなく、「今後はこのようなことがないようにいたします」など、場面にふさわしい言葉を添えると、より誠意が伝わるでしょう。

◇「申し訳ありません」

「申し訳ないです」と同じ意味で、丁寧語です。

「ありません」をより丁寧に言い換えれば、「申し訳ございません」となります。

☆例文

・「申し訳ありません。大変お待たせしました」

◇「申し訳ございません」

「申し訳ありません」の謙譲語。「申し訳ないです」よりも深い敬意を表します。

「誠に」を加えることで、さらに謝意が伝わります。

☆例文

・「ご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ございません

◇「申し訳ないことをいたしました」

「申し訳ないことをした」の謙譲語。「言い訳が立たないことをした」という意味があります。

後ろに、謝罪の言葉を添えて使うと良いでしょう。

☆例文

・「このたびは大変申し訳ないことをいたしました。心よりおわびいたします」

◇「申し訳が立たない」

「言い訳や弁解ができない」の意。

事後に謝る場面というよりも、事が起こる前、あるいは起こりつつある時に「〜してしまっては、申し訳が立たない」というように使います。

☆例文

・「謝らないでください。先生がそこまでなさったら、私こそ申し訳が立ちません

◇「申し訳なく存じます」

「申し訳なく思う」の謙譲語。

申し訳なく思う気持ちをへりくだった表現です。

☆例文

・「お役に立てず、本当に申し訳なく存じます

■「申し訳ない」の類語(例文付き)

ここでは、「申し訳ない」と似た意味を持つ言葉を紹介します。

◇「お許しください」

文字通り許しを乞う意味。

「申し訳ない」よりもストレートな謝罪の表現です。

☆例文

・「ぶしつけなお願いをいたしますこと、お許しください

◇「弁解の余地がない」

「申し訳ない」と同じで、「申し訳・言い訳」する余地がないという意味。

「弁解の余地もございません」という表現もあります。

☆例文

・「このたびは、弁解の余地がないことをいたしました。心から反省しております」

◇「心苦しい」

「申し訳ない」とほぼ同じで、「すまない気持ちがする」という意味です。

☆例文

・「もったいないほどのご配慮をいただき、大変心苦しく存じます」

◇「すまない」

「このままでは終わらない」の意から転じて、自分の気持ちが片付かないという意味です。

「すみません」は、「すまない」の丁寧な表現です。

☆例文

・「すみませんが、ちょっとお願いしてもよろしいですか?」

◇「おわびする」

「申し訳ない」よりもストレートな謝罪の言葉です。

☆例文

・「皆さまに心よりおわび申し上げます。今後同じことが起こらないよう、対策を練りたいと存じます」

■謝罪の場面ではしっかりわびること

失敗したり非礼があったりした場合には、そのことを早めに認めて素直に謝罪するのが一番です。場合により「深く反省しております」などの心情を加えるといいでしょう。

また、ビジネスでもプライベートでも謝りさえすれば良いということでもありません。

「今後、改善策をしっかり講じてまいります」など、前向きな考え方や姿勢を伝えることが大切です。

(前田めぐる)

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公式な謝罪で「申し訳ないです」と言わない方がいい理由