ソニーがいよいよデジカメプロフェッショナル市場に本格参入する。1月27日フラッグシップカメラ「α1」を発表した。3月19日に発売する。これまで同社は、α7シリーズ、α9シリーズでフルサイズミラーレスカメラを販売。プロカメラマンにも少なからず採用されてきたが、新製品は最初からプロユースを意識したものだ。税別の実勢価格は80万円前後。価格もプロ級だ。

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 現在、プロ向けのレンズ交換型カメラは一眼レフが主流。キヤノンの「EOS 1Dシリーズ」やニコンの「D6など1桁型番シリーズ」が大半を占めている。レンズ交換型カメラの主流がミラーレスにシフトするにつれ、ミラーレスでのプロ向けモデル発売を待望する声も聞かれるが、両社にはまだミラーレスのプロ向けをうたうモデルはない。プロ向けを意識したミラーレスカメラは、パナソニックが2019年に発売した「LUMIX S1シリーズ」があるくらいだった。そこに登場するのがα1だ。

 レンズ交換型デジカメで、特にハイスペックモデルが集中するフルサイズモデル。プロ向けのフラグシップモデルを頂点に、中・上級のアマチュアの支持も高い。一眼レフミラーレスを問わず、フルサイズのレンズ交換型デジカメソニーは高いシェアを握っている。12月で42.6%と、ライバルのキヤノンニコンを引き離してトップを独走。昨年春は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で部品調達に支障をきたし、一時的にシェアを落とす場面もあったが、2019年夏ごろからトップの座に君臨し続けている。まだ一眼レフの勢いがあった18年初頭までは、キヤノンニコンがトップを走っていたが、市場が一眼レフからミラーレスにシフトするに従って、ミラーレスに強いソニーのシェアが拡大した。

 ミラーレスカメラでソニーは、20年の販売台数No.1を表彰するBCN AWARD 2021 を受賞。6年ぶりにトップシェアメーカーに返り咲いた。全国の実売実績を集計するBCNランキングによる年間販売台数シェアは27.4%だった。さらに、フルサイズミラーレスに絞った年間シェアでは、49.4%と市場のほぼ半数を握っている。フルサイズミラーレスで競合他社に差をつけている間に、プロ向けフラグシップモデルを発売することで、ハイエンドからエントリーまで、ミラーレスカメラの覇権を握ろうという戦略だ。

 α1は、数少ないミラーレスのプロ向けモデルとして、多くの特徴がある。5010万画素と高画素数のセンサーを搭載しながら、AF/AEも追随させて毎秒30コマの撮影が可能。1/400秒と超高速でフラッシュが同調するシャッターも備える。動画性能も高く、8K 30pの動画撮影に対応。ファンなしで連続30分撮影可能な放熱システムも備える。さらに、スマートフォンをもつソニーアドバンテージを生かし、同時に発表した5Gミリ波対応スマートフォン「Xperia PRO」との連携で高速5G通信を使ってリアルタイムな画像・映像送信を可能にする。

 開発を指揮したソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズのコンスーマー&プロフェッショナルビジネスセクターカメラ事業部の大島正昭副事業部長は、「α1は、スピード、画質、小型化、レンズ、スタミナの五つの基本で、さまざまな高いハードルを越えて、幅広いジャンルのプロカメラマンに使っていただけるカメラに仕上がった」と胸を張る。「プロ向けのサポート体制も14年に開始し25カ国で整備、競合社に追いつくとこまではきた」と話し、ハードだけでなくサービス面でも抜かりはない。今後は、「α1で採用した最先端の技術を、下位モデルにも使いやすく展開していきたい」と語った。

 ミラーレス時代のフラグシップカメラは、静止画撮影のスピードと解像度だけでなく、動画性能や5Gを生かしたリアルタイムシステムなど、一眼レフ時代とは次元の異なる進化を求められることになりそうだ。(BCN・道越一郎)

レンズ交換型デジカメのフルサイズではソニーがトップシェアを走る