エンターブレインから発行されている月刊マンガ雑誌「コミックビーム」が最近やけに熱い! というか、ただいま発売中の8月号がとくに熱い!

まず、「コミックビーム」は新年から「怒濤の新連載攻勢2011」と題して、ほぼ毎月、人気作家の新連載を立ち上げている。1月号は塚本晋也原作、深谷陽作画の「鉄男 THE BULLET MAN」と松田洋子「ママゴト」の2本スタート。2月号は武内柚樹明原作、おおひなたごう作画による「まほう少女トメ」。3月号はいましろたかし「ぼけまん」に、鮪オーケストラマグロ交響曲」の2本スタート。4月号はタイム涼介「-I.C.U.-」。5月号は朝倉世界一「春山町サーバンツ」。6月号はカネコアツシ「WET MOON」で、7月号は休み。そして発売中の8月号では、安永知澄の「赤パン先生!」が表紙&巻頭カラーで連載スタートした。

赤パン先生……。タイトルがいいね。物語はある日の夏。あどけない表情の少女(小学4年生)が、突然、高鳴りはじめた胸の鼓動に戸惑いを覚えるという、意味深な場面から始まる。……かと思ったら、水泳の授業の場面になり、いきなり真っ赤なビキニパンツを履いた水泳の先生があらわれる。タイトルにもなってるくらいだから、たぶんこの赤パン先生が主人公。もしかして、さっきの少女はこの赤パン先生にファーストラブ? と思ったところで場面は変わり、となりの中学校の女性教師が登場。こっちの彼女はなんとなくアンニュイ。これまた意味深。そのあと、赤パン先生の熱心な指導風景と、冒頭の少女が水泳のよろこびをつかみはじめる場面なんかもあったりして、物語がどっちへ転がっていくのか予想がつかず、次号が非常に待ち遠しい。

その次号では、このところエッセイや小説といった活字の仕事をメインにしている巨匠いしかわじゅんの「吉祥寺キャットウォーク」が始まる。マンガ、久しぶりだよねえ。
予告イラストには、いしかわじゅん特有のおたふく顔した女子高生と、ミミちゃん(いしかわ先生んちの猫)っぽいシロクロ猫の絵が描かれている。吉祥寺のヌシのような存在で、しかも愛猫家としても有名ないしかわ先生だけに、かなり期待の高まる作品だ。

と、このように怒濤の新連載攻勢で迫る「コミックビーム」だけど、それ以前にもヒット作はいくつか出始めていて、雑誌としては安定期に入っていたんじゃないかと思うんだよね。それでも攻撃の手をゆるめないあたり、いかにも奥村編集長という感じだけど。

「コミックビーム」から生まれたヒット作といえば、まずはタイム涼介の「アベックパンチ」がある。これは古澤健監督の手で実写映画化されて、現在、公開中。男女のペアが手をつないだ状態で格闘するという、マンガじゃなければあり得ない設定を見事に実写で表現していて、不思議な味わいの青春スポ根ラブコメディに仕上がっている。

そしてもうひとつ、古代ローマの風呂場設計技師ルシウスがタイムスリップを繰り返すという、ヤマザキマリの「テルマエ・ロマエ」。第15回手塚治虫文化賞短編賞、マンガ大賞2010大賞受賞というこの作品は現在も連載中で、ルシウスはあいかわらず裸で歩き回っては、平たい顔族(現代日本人のこと)を戸惑わせている。こちらも2012年に映画公開が決まっており、ルシウス役は阿部寛が演じるとのことだ。彼の大袈裟な芝居はこの作品に合うと思う。

このように、他にも注目作や話題作はいろいろあって、全部紹介していったらキリがないので本題に入るけど、今月号は特別寄稿「岩手漫画家応援ツアー“寄せマンガ”」が必見なのだ。

岩手漫画家応援ツアー、覚えてますか? エキレビ!でもレポートを書かせてもらいました。5月に市川ラク、しりあがり寿、寺田克也、三宅乱丈、安田弘之、安永知澄、吉田戦車五十音順、敬称略)といった漫画家たちが、岩手県の被災地を応援しにいってきたボランティア・ツアーのこと。この7人は、「コミックビーム」に連載を持っていたり、あるいは発行元であるエンターブレインと縁の深い作家さんたちだったのだ(安田弘之先生はエンターブレインの雑誌初登場だそうです)。で、彼らによる応援ツアーのマンガレポートが、各自2ページずつ一気に掲載されているというわけ。

エキレビ!でのレポートでは文字数の関係で割愛した出来事も、漫画家さんの手にかかるとコンパクトでうまく盛り込まれていたりする。いきなりクギ踏んじゃった人とか、自分の作ったゲームが瓦礫の下から出てきたとか、現地NPOの人がすんごくタフだったとか、朝市のラーメンうまそうだったなあとか、とか、とか!
エキレビ!でのレポートとあわせて読むと、被災地の状況がより立体的に感じられるのでお薦めです。
(とみさわ昭仁)

「コミックビーム」8月号。は毎月12日発売。「岩手漫画家応援ツアー“寄せマンガ”」が掲載されているのは、現在発売中の8月号ね。8月12日になると9月号が発売されるのでご注意を。