2020年販売トップ10 トヨタ7車種
2020年には、国内で約460万台の四輪車が販売された。コロナ禍の影響を受けながら、前年に比べて12%しか減っていない。ほかの業種に比べて落ち込みが少ない。
【画像】第1位のヤリス・シリーズ【どんなモデルがある?】 全200枚
月別に見ると、4/5/6月は対前年比が23-45%のマイナスだったが、7~9月は減り方が20%以下になった。10~12月は対前年比がプラスに転じたので、2020年のトータルでは12%の減少にとどまった。
クルマは実用的な生活のツールで、一定の期間使用すれば、新車に乗り替える必要も生じる。コロナ禍でもクルマのニーズは根強く、販売店も時間を短縮しながら営業をつづけたから、販売は極端には下がらなかった。
そして2020年のメーカー別販売台数をみると、1位:トヨタ、2位:スズキ、3位:ホンダ、4位:ダイハツ、5位:日産と続く。
例年はホンダが2位でスズキは3位だが、2020年は順位が入れ替わった。スズキの販売台数は前年と比べて9%の減少だが、ホンダは14%減ったから順位も下がった。
このように2位以下は状況に応じて入れ替わるが、トヨタの1位だけは50年以上にわたり安定している。しかも2020年の車名別小型/普通車販売ランキングを見ると、1位:ヤリス、2位:ライズ、3位:カローラと、トヨタが上位を独占した。
さらに5位:アルファード、6位:ルーミー、8位:シエンタ、10位:ヴォクシーと続く。トップ10のうち、7車種をトヨタが占めた。
このうち、トップになったヤリスの登録台数は、軽自動車のホンダNボックスを上まわり、2020年における国内販売の総合1位になった。
登録台数 各モデル合算値の車種も
販売ランキングの上位にトヨタ車が数多く並んだ背景には複数の理由がある。
その筆頭は、2020年に商品力の優れたトヨタ車が多く発売されたことだ。ヤリス/GRヤリス/ヤリス・クロスはすべて2020年の登場で合計15万1766台を登録した。ライズも2019年の末に発売されて、2020年に売れ行きを伸ばし12万6038台を登録した。
ヤリス・シリーズとライズの登録台数を合計すると、2020年に国内で売られたトヨタ車の19%を占める。トヨタもコロナ禍の影響を受けたが、これら設計の新しい車種が伸びたため、トヨタの対前年比はマイナス7%(レクサスを含む)に収まった。
国内市場全体では前述のとおり12%減ったから、トヨタは落ち込みが少ない。逆に日産は18%、スバルは20%、三菱は32%減っている。
その結果、2020年に国内で売られた新車のうち、33%がトヨタ車になった。軽自動車を除いた小型/普通車に限れば、トヨタ比率は51%に達する。
小型/普通車におけるトヨタ比率は、2018年は46%、2019年は48%だったから、例年以上に比率を高めた。そのために小型/普通車登録台数ランキングの上位にもトヨタ車が並んだ。
日本自動車販売協会連合会による登録台数の公表方法も、トヨタ車のランキングに影響を与えている。ヤリスであれば、前述のとおり「ヤリス+GRヤリス+ヤリス・クロス」を合計したシリーズ全体の数字だ。
カローラも2019年に発売されたセダンとワゴンのツーリングに加えて、2018年に登場したハッチバックのスポーツ、継続生産されるアクシオ&フィールダーまで含めたカローラ・シリーズとして公表される。
ユーザーが販売ランキングをクルマ選びの参考にするなら、少なくともヤリスとヤリス・クロスは別々に集計すべきだ。エンジンやプラットフォームは同じでも、外観は大幅に異なり、ヤリス・クロスは全幅がワイドな3ナンバー車になる。
車名には共通性があっても、一般的に考えれば別の車種だから、登録台数を合計するとユーザーのニーズに合わない。
そこで2020年の登録台数を別々に算出すると、ヤリスはGRヤリスを含めて約11万9000台だからNボックスを下まわる。さらにライズよりも少ない。ヤリスが納車を開始したのは2020年2月だから、1月が欠けて不利になった面もあるが、分割すると人気度も変わる。
しかも、2020年11/12月の登録台数によると、ヤリス・クロスは1か月に9000~1万台に達した。つまりヤリス・クロスの登録台数は、コンパクトカーのヤリスと同等か、それ以上に多い。
このようにシリーズ全体の数字で公表された結果、ヤリスの登録台数が集約され、国内販売の総合1位になった。
いっぽうでプリウスやアクアは低迷
トヨタ車が販売ランキングの上位に数多く入った理由として、トヨタが国内販売体制を変更したことも挙げられる。2020年5月から、東京地区に続いて、全国的にトヨタの全店で全車を販売するようになった。
その結果、好調に売れる車種は、トヨタ全店(約4600か所)で売れ行きを伸ばす。逆に低調な車種は、好調な車種に顧客を奪われた。
例えば人気車のアルファードは、以前はトヨペット店のみが扱った。ネッツトヨタ店のユーザーは、姉妹車になるヴェルファイアを購入していた。
トヨタ店ではアルファード、ヴェルファイアともに販売していないから、仮にクラウンからアルファードに乗り替えるとすれば、販売店を変更する必要が生じた。
このような経緯もあり、ネッツトヨタ店の顧客はヴェルファイア、トヨタ店の顧客はアルファードに魅力を感じながらも従来どおりクラウンを購入していた。
ところが2020年5月以降は、すべての店舗でアルファードを買える。トヨタ店としても、クラウンの顧客がアルファードに乗り替えるのを引き止める理由はない。
そのために人気車のアルファードでは、2020年下半期(7~12月)の登録台数が前年の1.6倍に増えた。逆にヴェルファイアは、基本的に同じクルマなのに、前年の半数以下に減った。アルファードとヴェルファイアでは、今では7倍の販売格差がついている。
2020年におけるトヨタの対前年比は、前述のとおり7%減少したのに、販売ランキングの上位にはトヨタ車がズラリと並ぶ。その背景には、売れる車種はさらに伸びて、下がる車種は一層低迷する二極分化があるわけだ。
プリウス/アクア/ヴェルファイアの登録台数は、前年に比べて40%以上も減った。C-HRも40%弱のマイナスで、かつての人気車が軒並み減少している現実もある。
二極分化の国内販売 リストラ加速?
二極分化したトヨタの国内販売からは、今後の動向も読み取れる。現時点で売れ行きを伸ばしたり、堅調に売れる車種は、今後もラインナップされる。逆に売れ行きを下げた車種は、廃止される可能性が高い。
既にコンパクトカーのポルテ&スペイド、ルーミーの姉妹車となるタンクは終了した。今後はセダンのプレミオ&アリオン、ワゴンのプリウス・アルファも廃止される。ヴェルファイアの廃止は公表されていないが、アルファードとの販売格差を見ると、廃止される可能性が高いだろう。
クラウンをSUVに変更する報道もあった。現行クラウンは若返りを図ってスポーツ指向を強めたが、本来の魅力は、安楽な乗り心地、静かで滑らかな運転感覚と、走行安定性を両立させたことだ。このクラウンの特徴は、低重心で後席とトランクスペースの間に隔壁を設けて剛性を高めたセダンボディでないと実現できない。
つまりクラウンをSUV化するアイデアはナンセンスだと筆者は思うが、そんな話が持ち上がるほどに、今のトヨタの国内販売は合理化を迫られている。
2020年の販売ランキングを見ると、トヨタの活躍が華々しいが、この先には厳しい展開も待ち構えている。
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