2月に入って早々、ミャンマークーデターが発生した。

ミャンマーの与党・国民民主連盟(NLD)の報道官は1日、国軍が強行的なクーデターを行い、ノーベル平和賞も受賞したアウン・サン・スー・チー外相やウィン・ミン大統領など政府高官やNLDの幹部らが一斉に拘束されたと発表した。

選挙不正疑惑によるクーデターの前兆はあった

日本時間の1日現在、ミャンマー国内のテレビやラジオ、電話やインターネットなどがつながらない状況となっており、現地がどうなっているか具体的な情報も入ってこないという。

今回のクーデターの背景には、昨年11月に実施された総選挙の結果がある。総選挙では、NLDが全476議席の396議席を獲得し、国軍系の最大野党である連邦団結発展党(USDP)は33議席に留まり惨敗した。

しかし、国軍は選挙で恣意的な不正があったと主張し、国軍はこの総選挙結果について、「重複投票などの不正があった」と主張し、政府・与党に対して再選挙を要求するとともに、2月1日に召集される予定だった総選挙後初の国会のボイコットを示唆していた。

また、国軍の報道官は1月26日、政府が誠意ある対応を示さなければ、軍事クーデターの可能性は否定しない趣旨の発言をしていた。

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日本企業の進出が著しいミャンマー、邦人の安全は?

近年、ミャンマーへの日系企業の進出は増加し、ミャンマーは新たなフロンティアとして注目されている。

日本政策金融公庫が2020年8~9月に日系中小企業の海外現地法人を対象に実施した「今後3年程度の事業展開での有望国・地域」に関する調査でも、ミャンマーは中国に次いで2番目となり、インドインドネシア、タイやフィリピンなどを抜く結果となった。

現在のところ、現地の日系企業や邦人への被害は報告されていないが、電話やネット回線が繋がらないなど、仕事や私生活などで社会的な制限は出てくるだろう。

日本外務省も外出を控えるなどを呼び掛けている。今後、抗議デモや暴動など治安が悪化して、それに巻き込まれる危険性は十分にある。

おそらく、突然のことで現地に進出する日系企業関係者の中には驚いている方々もいることだろう。しかし、今回のミャンマーのケースでも言えることだが、その前兆を事前に察知することは可能だった。

日本企業に必要な政治・地政学リスクを重視した経営

世界では現在でも、紛争やテロ、暴動や抗議デモが絶えず、イラン情勢のように国家間緊張も残る。世界情勢が混沌とするなか、各企業には政治リスク、地政学リスクというものをこれまで以上に重視した経営戦略が求められている。

進出する国や地域にはどういった政治リスクがあるかを情報収集・分析することを習慣化し、それによって最も重要な駐在員の命の安全と保護を徹底し、想定される被害を最小化することが求められている。

世界情勢は今後より複雑化するだろう。在外邦人の安全を守るのは国の役目ではあるが、当然ながら何から何まで手が回るわけではなく、それにも限界がある。

よって、各企業、駐在・出張する一人一人が自らを取り巻くリスク1つ1つを注視し、危機管理意識を向上させておく必要がある。そのために重要なのは、日頃からの情報収集と分析である。