俳優スティーヴン・ユァンが主演する映画『ミナリ』より、アメリカンドリームを胸にたくましく生きる韓国人一家の姿を映し出す予告映像が、ポスタービジュアルと共に解禁された。

【動画】アカデミー賞最有力『ミナリ』予告映像

 本作は『ムーンライト』や『レディ・バード』など作家性の強い作品で今やオスカーの常連となったA24と、『それでも夜が明ける』でアカデミー賞作品賞を受賞したブラッド・ピット率いるPLAN Bがタッグを組んだ作品。1980年代、農業で成功することを夢見て米国南部のアーカンソー州に移住してきた韓国人一家を描き、サンダンス映画祭をはじめ世界の映画祭で観客賞を総なめにした。辛口批評サイトRotten Tomatoesでは100%を更新中(1月26日現在)のほか、ハリウッドリポーター誌、ヴァラエティ誌ほか有力誌もこぞってアカデミー賞有力作品として名を挙げるなど、観客、評論家の二方向から支持されている。

 韓国出身の移民一家の父親ジェイコブ役には『バーニング 劇場版』、ドラマ『ウォーキング・デッド』のスティーヴン・ユァン。監督は、米国有力映画メディア「インディワイア」で、2020年の「今年最高の監督10人」に、デヴィッド・フィンチャースパイク・リーらと共に選ばれたリー・アイザック・チョン。新海誠監督『君の名は。』のハリウッド実写版の監督にも抜てきされたた新鋭だ。

 予告映像は、一家がアーカンソー州に移住してくるシーンから始まる。雑草だらけの荒野、打ち捨てられたようなトレーラーハウスを自慢げに披露する父ジェイコブ(スティーヴン・ユァン)の傍ら、不安と不満顔の母モニカ(ハン・イェリ)。農業での成功を夢見るジェイコブの満足げな笑みとは対照的に、モニカは、病院もない土地での生活を勝手に決めてしまった夫に納得いかない様子。明るくも不思議なトーンの音楽と、白人ばかりの教会で一家の居心地の悪そうな様子が、新生活への不安と期待が混ざり合う彼らの複雑な気持ちを演出している。

 一方、子どもたちの関心は、一緒に住むことになった祖母(ユン・ヨジョン)について。文字も読めず、毒舌家で破天荒な祖母に戸惑う姉弟。しかし本作のタイトルでもある「雑草みたいに強い」と祖母が教えてくれた“ミナリ(セリ)”を通じて絆を深めていく繊細な描写が、予告映像からもうかがえる。

 さらには、「子どもたちに成功した姿を見せてやりたい」と願うジェイコブと、子どもたちの安全な暮らしを願うモニカが、激しくもぶつかり合いながらも、家族としてたくましく成長していく様子が映し出される。しかし、「今日が終わる。また明日がくるー」という優しいナレーションから一転、まがまがしい炎をあげて暗闇に燃えあがる小屋のカットで映像は終了。一体、彼らに何が起こったのか。

 ポスタービジュアルは、晴れでもなければ荒天でもない空模様の下で、あすへの希望と不安を見据えるかのような家族のまなざしが印象的なもの。アメリカンドリームを胸に、たくましく生きる家族の物語に注目したい。

 映画『ミナリ』は3月19日より全国公開。

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