新型コロナウイルスの感染が拡大する中、テレワークの導入などにより、出社回数が減った人も多いことでしょう。こうなると気がかりなのが鉄道定期券を購入するか否か。毎回きっぷを買う場合とどちらがお得か、首都圏の路線で調べました。

定期券だと、同じ会社でも距離により運賃体系が異なることも

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、首都圏緊急事態宣言が再発令されてから1ヶ月が経ちました。広く休業要請が出された前回と異なり、会社によっては出社する日と在宅で作業する日を使い分けているケースもあることでしょう。中には再発令以前から、一部テレワークに切り替えている会社もあるほどです。出社日が減ったことで、通勤定期券代の支給を取りやめ、出社日ごとの実費精算にする会社も出てきています。

通勤に使う定期券は、会社の規則に合わせて買うのが前提ですが、悩ましいのは個々人に選択や判断の余地がある場合です。出社が週に1日や2日であれば回数券などを買った方がお得かもしれませんが、3日や4日となるとなんとも言えないところです。また、鉄道事業者によって定期券割引率も異なるため、一概に言えない部分があります。

そこで東京都心に直結する鉄道会社別に、定期券(通勤定期運賃)ときっぷ(普通運賃)とではどちらがお得なのかを調べてみました。区間は10km圏、20km圏、30km圏の主要駅間です。運賃は定期券もきっぷも距離(営業キロ)をもとに計算されています。1ヶ月のうち何往復すれば元が取れるか、1ヶ月定期券と6ヶ月定期券の場合で日数順に並べています。

なお、運賃体系は鉄道事業者ごとに異なりますが、同じ事業者間でも異なる場合があります。例えば、都営地下鉄の本八幡~市ケ谷間と西高島平~大手町間のきっぷ代はどちらも330円ですが、定期券代は前者が1万2060円、後者が1万1910円と150円の差があります。これは本八幡~市ケ谷間の方が1.5kmほど営業キロ数が長いためです。

こうした事情により同じ鉄道事業者間であっても、区間によってお得になる日数が1日から2日程度異なる場合がありますのでご了承ください。そのため、順位付けは行っていません。

10km圏と20km圏で、1ヶ月・6ヶ月の定期券ときっぷを比較

それでは、10km圏から見ていきましょう。1ヶ月定期券の場合、JR東日本はひと月あたり15日から16日出社すれば元が取れる計算になりました。ほかの区間でも同様ですが、定期券割引率はJRが頭ひとつ抜けています。

大手私鉄などだと、東武鉄道小田急電鉄京急電鉄都営地下鉄が、それぞれひと月あたり18日の出社でお得になる計算です。続いて西武鉄道東急電鉄京王電鉄が19日で並んでいます。東京メトロは20日、京成電鉄は21日出社すれば割に合うラインです。

6ヶ月定期券の場合はどうでしょうか。どの鉄道会社も割引率が1か月定期券より高くなっています。月あたりの元が取れる往復日数は以下の通りです。

JR東日本:12日から13日
小田急電鉄京急電鉄:16日
東武鉄道都営地下鉄西武鉄道東急電鉄:17日
東京メトロ:18日
京成電鉄:19日

月あたりの元が取れる往復日数を1ヶ月定期券と6ヶ月定期券で比較すると、JRは3日ほど、私鉄・都営地下鉄は2日ほど少なくなっており、より有利です。

距離による違いはあるのでしょうか。1ヶ月定期の20km圏を見ると、最もお得なのはJRに変わりありません。東京メトロは、元を取るには10km圏だと月20往復ですが20km圏だと月16往復と大幅に減ります。東京メトロの運賃は、距離に対して運賃の上昇が緩やかなのが特徴ですが、これは定期券にも該当するようです。小田急電鉄東武鉄道都営地下鉄東急電鉄西武鉄道京王電鉄京急電鉄京成電鉄は、10km圏と20km圏とで元が取れる日数は0~2日ほど増減します。

6ヶ月定期券は、週に何日出社すれば元が取れる?

30km圏の1ヶ月定期券は、京急電鉄の上大岡~品川間が17往復で元が取れるようになっている以外は、あまり大きな変化はありません。京急電鉄が20往復から17往復と減ったのは、きっぷの運賃の上昇幅に対して、定期運賃の上昇幅が小さいからだと考えられます。

6ヶ月定期券でまとめると、JR東日本なら出社は週3日ほどで元が取れる計算になります。JR東日本以外は、週4日から5日ほどの出社なら定期券の方がお得と言えそうです。

ただし、以上はあくまで目安です。祝日などを考慮すると、区間によっては日数が前後する場合もあります。その意味では、定期券を買わずに出社日に合わせて都度、通勤費を実費精算する方が合理的と言えるのかもしれません。

新型コロナウイルス感染拡大による緊張状態がまだまだ続いています。従来は通学や通勤に定期券を利用するのが当たり前という発想がありました。新型コロナウイルスによって様々な生活のあり方が変わろうとしている今が、こうした考え方からも脱却する良い機会なのかもしれません。

駅に設置されている自動改札機(画像:写真AC)。