Seiho

私たちが一生のおよそ1/3の時間を費やす「睡眠」。誰もが毎日自然に行っていることにも関わらず、実は未だに睡眠そのものについては解明されていないことが多い。その「睡眠」をテーマにした作品『DESTINATION』を深夜の一定時間にYouTubeへと公開する試みを行なったアーテイストSeiho。作品についての直接的な話ではなく、あくまで「睡眠」という現象について追及しようと、今回、睡眠に深く関わる方々との対談シリーズを決行した。 第1回のお相手は、「みるめも」を主宰するみるみさん。体外離脱明晰夢について、ご自身の体験を言語化したブログ「みるめも」は、睡眠に関心を持つ人なら避けては通れない内容だ。今回の睡眠対談では、Seiho自身もこれまでの体験談を披露し、みるみさんとの共通点と違いを確認しあう唯一無二の内容。他ではちょっと読むことのできない貴重な体外離脱レポート。はっきり言って、全人類必読!

対談:Seiho × みるみ

Seiho

「具体的なものを夢に出す訓練をしていたんです」(Seiho)

━━最初に確認ですが、「体外離脱」と「幽体離脱」という言い方があります。みるみさんはどういう使い分けをしているんですか? みるみ 僕の印象では、「幽体離脱」はオカルト的で中身のない文章に使われることが多くて、「体外離脱」は夢の領域に関わるものです。僕、スピリチュアルなものは全然信じないタイプなので「幽体離脱」については知識がないですね。 Seiho 「体外離脱」、実は僕もみるみさんと同じくハマっていた時期があるんです。そんな話をQeticと、睡眠対談の企画を練っている時に話したことがきっかけで、今回みるみさんとの対談につながったんです。 ━━じゃあ、Seihoさんも体外離脱ができる? Seiho そうですね。「できる」と言っていいかどうかも含めて、いろいろ難しい現象じゃないですか。だから、そこも含めて今日は話したいですね。 みるみ ちなみに「みるめも」に書かれてある内容と、ご自身の体験は同じものだという認識はありますか? Seiho 80%くらい一緒です。「違うな」と思ったのは、(体外離脱するときに)立ち上がるように抜けるってところだけです。僕は横に転がって抜けていく感じなんです。 みるみ 抜け方には個人差がありますので。でも、後はほとんど同じ? Seiho はい。僕も、昔から定期的金縛りになっていて、金縛りになる枕があるんです。たぶん最初に金縛りになったのが高校生ぐらいの時で、ウィズダム英和辞典ってあるじゃないですか? あの辞書を枕にして寝ていたら金縛りになって。そこから、硬い枕で寝ると金縛りになるようになりました。 みるみ それは、寝苦しさが関係しているんでしょうか。それとも枕が硬いこと自体に意味がありそうですか? Seiho 僕の感覚的には、脳にいく血流の状態に関係しているのかなと思っていて。座ってうつ伏せの状態でもけっこう金縛りになるんです。その時に意識はあって、たとえば講義中に金縛りになったら、その授業の内容は覚えているんです。 みるみ それ、まったく同じ経験ありますね。僕もきっかけは高校生のときで。基本的に授業中は寝ているタイプだったんですけど、やっぱり授業の内容は全部覚えているんです。誰が何を話していたかまで記憶に残っていて、「おまえ寝てたんじゃないのか」と言われることが頻繁にあって、それがきっかけで睡眠に興味を持つようになったんです。 Seiho まったく同じ!そう、だから金縛りの間ははっきり周りが見えている。でも身体は動かない。 みるみ ですね。そこで「脳が覚醒しているのに寝ている状態がある」と知りました。 Seiho どんどん踏み込んじゃっていいですか? 体外離脱の経験者同士だけで話すと、普通の読者には分からなくなっちゃうかもしれないですけど(笑)。金縛りの時に、怖いものを想像するとすぐに出てくるけど、自分が出したいものはなかなか出ない。たとえば「エッチなことがしたいから、女性を出したい」と思っても、難しくて。もし出せたとしても「なんか目がおかしいな」と思ったら、その目の部分から女性が崩れていくんです。 みるみ 分かります分かりますSeiho 自分の中で違和感が発生すると一気にフィードバックする。 みるみ 意図したものを見ようとすると、脳の覚醒度が上がって目覚めに近くなっちゃうというのと、誰かの顔を思い出そうとする時に、その人の顔のパーツを詳細に思い出そうとすると、どんどんイメージがぼやけちゃうじゃないですか。あれと同じことが起きていて。細かいところを集中して見ようとすると、そこを起点に崩れてしまうことは僕もよくあります。 Seiho そうそう。キャベツぐらいならパッと出るんですけど、たとえば人の顔とかを思い浮かべようとすると情報量が多い。あとは脳の回路って、たとえば知り合いの人の顔を思い浮かべようと思った時に、その人の顔にたどり着く前に通る「道」みたいなものがあるんです。わかります?  みるみ わかります。連想みたいな感じですね。 Seiho なんか無意識下に、記憶の通り道みたいなものがあるんです。たとえば難しい歴史上の人物の名前を思い出す時も、なんかこう、近所の駄菓子屋の名前に似てて……みたいなルートがある。だから、何かを思い浮かべようとしたらそのルートを通っちゃうので、それが全部出てきちゃう。、そうやって具体的なものを夢に出す訓練を一時期していたんです。ただそれをやると不安がフィードバックするのがしんどくて、疲れてきてやめていたんです。そしたら、ある時、NENEちゃん(ゆるふわギャング)から「金縛りの時に横にゴロンと転がったら体外離脱できるからやってみてほしい」と言われて……。 みるみ ローリング法ですね。 Seiho そう! そのローリング法を試したら、体外離脱できるようになってきたんです。 みるみ 僕は逆に、ローリング法で体外離脱をできたことがないんです。正確に言うと、(身体から)抜ける時に動く量が大きいと目が覚めちゃいそうで、試したことがない。僕は、すっと起き上がるのが一番自然ですね。 Seiho ゴロンと抜けるというよりは、揺れているといつの間にか(意識が)身体からズレていって、いつの間にかこっち側に自分がいる、みたいな感じですね。 みるみ 身体から意識が分かれた、と自覚したらすぐに動けますか? Seiho はい。でも、そこから起き上がる時に「あれ? 俺、部屋から出たら(身体に)戻られないかも、どうしよう」と思って、怖くなっちゃうんです。本当に戻れなくなるみたいな感覚。その不安が発生するとフィードバックしちゃう。 ━━そこで恐怖を感じない時もある? Seiho ですね、無の状態というか。無の状態で部屋を出て……だから逆にこの状態に何の意味があるんだ? とも思うんですけど。無の状態で出て「出たな、うん、じゃあ帰ろう」みたいな(笑)。 みるみ でも、その「固定観念を払拭できる力」みたいなのがすごく大事だと思います。無意識的に不安を感じてしまうと、それが具現化して現れるので、身体を抜けたら無になれる能力が大切。 最近僕が感じていることは、こういうことをやっていると夢を見る頻度が上がってくるんです。記憶にも残るし、リアルになる。で、不安の要素はやっぱり強く出やすくて、最近、嫌な夢を見る頻度が上がっている気がする。正確に言うと、記憶に残りやすくなっているだけなのかなとも思いますが、ついには痛みとかを本当に感じるようになってきちゃって……。 Seiho それはけっこうやばい(笑)。 みるみ 夢で銃で撃たれたら痛いんです。もちろん銃で撃たれた経験はないので実際の痛みとは比べられないんですけど、いつも胸を撃たれると、熱い血が出てくるような不快感と息苦しさを感じるようになってしまって、最近ちょっと体外離脱明晰夢から離れているんです。やっぱりそういう体験でみんな困っているんだなって、Seihoさんの話を聞いていて思いました。

Seiho

「僕、夢日記をつけていたんです」(みるみ)

みるみ 僕がこういう訓練をやっていて鍛えられたもののひとつに、ベッドに入ってから眠りに落ちるまでの自分の意識に対する認知レベルがすごく上がったというか。覚醒と睡眠の間のどのあたりに自分の意識がいるのかが分かるようになってきました。 Seiho めちゃめちゃ面白い。それ、言葉で説明してもらえますか。 みるみ 5つの段階があるんですけど、1つ目が「身体が宙に浮く感覚がある」。急に身体がフワーッと上がっていくような感じがきて、身体の重さの感じ方が変わるみたいなことがあるんです。これが一番最初の段階で、気づける確率もずば抜けて高いです。 次の2つ目は、「特に足のあたりからジーンとする感じが来る」。ひとつ目のと同時くらいに、足のあたりからジジジジジッっていうのがくる。 3つ目は「ふっと頭か身体が落ちる感じがする」。これは寝落ちしそうなときに頭がガクッとなることではなくて、脳みそが落ちるというかフワッとなる感じがある。これを感じ始めると、かなり入眠が近くて意識が中断されるレベルですね。 4つ目と5つ目はセットで、「一瞬記憶がなかったことに後から気づく」と「考え事をしていたときの情景が、いつの間にかムービーになっている」。たぶんこれは皆さん経験あると思うんですが、寝落ちしそうになる時の「あ、今寝てた」っていう、あの感覚に近いですね。 5つ目はたぶん夢なんですけど、その夢に後から気づく、みたいな。なんとなくこの順番に並んでいて、ベッド入ってから眠るまで、この5段階を毎日経ています。 Seiho 最後の5つ目を超えたら寝てるってことですか? みるみ 寝ています。この次に意識があるのは、下手したら翌朝。 Seiho 普段はどういう環境で寝てるんですか? みるみ 部屋は真っ暗が基本で、物音があると眠れないタイプですね。身体は仰向け。特に変わったことはしていないと思います。 Seiho 僕も仰向けですけど、けっこう明るくして寝ます。寝たいだけ寝れる職業なので、起きたいときに起きて、寝たいときに寝る、みたいなサイクル。作業しながらそのままテーブルで寝て金縛りになったりは、めちゃくちゃあります。 ━━おふたりとも仰向けに寝ているというお話ですが、仰向けだと体外離脱しやすいんですか? みるみ 眠りにくさを作る意味では、うつ伏せがいいと言われているんですけど……たぶん、自分が眠った後で抜けるイメージがしにくいからなんじゃないかなと思います。体外離脱はけっこうイメージの世界なので、自分がイメージできているかどうかはすごく大事なんです。 Seiho そのイメージトレーニングとか鍛錬って、けっこう危険じゃないですか。そこってどう考えてるんですか? みるみ 僕、夢日記をつけていたんです。よく「夢日記は危険」と言われるんですけど、それってオカルト50パーセント、理論50パーセントみたいな話だと思っていて。50%のオカルトは当然信用していませんでしたけど、実際に夢日記をつけることでかなり鍛えられました。 ━━何が鍛えられたんですか? みるみ 夢を思い出す能力と、夢の中での意識の向上。でも、結局それが怖い夢がリアルになる話につながるんです。だから、オカルトを信じているわけじゃないんですけど、良くも悪くも効果がありすぎたので、夢日記をつけるのはやめました。でも、夢の増強にはめちゃめちゃ効果があります。 Seiho 夢を鍛えると、ネガティブなものや怖いものが具現化されていく傾向があるじゃないですか。でも、それをなくそうと努力すると、現実の世界で無謀になっていくことってありますか? たとえば寝ている時は「ビルから飛んでも死なない」と思えれば実際に死なないけど、それを現実の世界でやったら死ぬじゃないですか。 みるみ どうなんだろう。夢の世界の中で鍛えられたことによって、普段の生活で何か意識が変わったかというと、それはあまり感じないですね。僕は、夢を見ていてそういう状況になりそうだなと察知したら、夢から抜けちゃいます。夢や金縛りから抜ける力って、普通の人に備わっていると思っていて。抜け方に個人差はあるかもしれないですけど、僕の場合は身体中に思いきり力を入れて(夢の中で)叫ぶんです。実際は叫ばないですけどね。そうすると夢から抜けられる。だから、怖いものが具現化するのはしようがない。そういう雰囲気を感じたら夢から出る、という感じですね。 ━━逆方向のフィードバックはないんですか? たとえば現実でこういうことをすると、夢の中ではこうなることが多いとか。 みるみ 夢の中で銃で撃たれことが多くなったのは、たぶん映画の観すぎだと思っています。アクション映画をよく観るので、普段観ている映像が出ちゃうんだろうなと(笑)。あと、夢の中で空を飛びたいので、いつか実際にスカイダイビングをやってみたい。夢の中で空を飛ぶのが難しくて、それはやっぱり実際に飛んだ経験がないからだと思うので。 Seiho 僕、逆です。めちゃくちゃ空を飛びます。 みるみ 体外離脱中に飛べます? Seiho 飛べます。それが気持ちよくて体外離脱をやっちゃう感じです。でも、鳥みたいに飛んでる感じじゃないんですよ。ジャンプしていって……。 みるみ 僕も大きいジャンプならできるんですけど、ずーっとは飛べない。ビルからビルへ、ぐらいのイメージですかね。 ━━飛べるんですか! ビルはどれくらいの高さですか? Seiho 普通のマンションとか、12階建てぐらいでも全然いける。僕の場合、その時に「飛んでいる感覚」がありますね。飛んでいる時はめっちゃ気持ちいいんですよ。どんどん上がっていく感じで「おお、めっちゃ高い!」みたいな(笑)。で、ビルからビルに飛んでいくのをずっと繰り返してたら、いつの間にか起きています。ジャンプして上がって、上から落ちてくる時の気持ち良さがすごいあるんです。 みるみ 僕は上がる時の方が好きですね(笑)。自分の重さがない感じします。 ━━それは普通の夢で空を飛ぶのとは違う感覚ですか? Seiho 自分自身で行動しているから全然違います。 みるみ 僕の場合、明晰夢体外離脱ははっきり区別があって。明晰夢は現実でありえないことが起きたり、自分が体験しているというよりは、ちょっと一歩引いて見ている感じが強い。体外離脱は必ず一人称視点で、自分のベッドから始まる。体外離脱はリアルな自分の体験に近くて、明晰夢は夢寄り。僕の中ではそういう棲み分けですね。

Seiho

「バネで引っ張られて戻される感覚、あります」(Seiho)

みるみ あとそうだ、今日ひとつ聞きたかったんですけど。体外離脱に成功して、自分の家から離れるとバネみたいなものでビヨーンって引き戻される感覚って……。 Seiho あります。 みるみ ありますよね? あれが何なのかずっと分からない。でも、あれ、みんな「ある」って言うんです。あの不思議な感覚だけは説明がつかないんです。 Seiho (身体から)抜けてから最初5回ぐらいは、玄関を開けて家から出れなかったんです。家から出た時にいつも失敗するのは、「外に出て地面がなかったらどうしよう」って思っちゃうんです。そこでいつも失敗して目が覚めてしまう。 みるみ 今Seihoさんがおっしゃった「玄関を開ける」という行動がポイントです。どこかに行きたいときは、ドアを開けるのがいいんです。なぜかと言うと、風景が変わることが分かっているから。全然違う場所に行きたい時は、ドアをきっかけにするのが正しい。ただ、逆に目が覚めちゃいやすいポイントでもあって、ドアを開ける以外だと「カーテンを開ける」。違う景色が見えて光が入ってくることが分かっているせいで、カーテンを開けると目が覚めちゃうんです。だから、なるべく閉まってるものは開けないようにする。ドアを開ける時も、明確に行きたい場所がない時はむやみに開けないようにしています。 Seiho すごい面白い。本当にそうなんですよね。僕は修行が足りないから、ドアを開けた時に街があったりすると、情報量が多くて目が覚めてしまうことがすごく多かったんです。だから、「出てからのことは考えずに、全然違う場所を想像した方がいいんじゃないか」と思って、まったく見たことがない広い野原を想像するようにしたら、家の外に出れるようになった。その時に、バネで引っ張られて戻されるような感覚はめちゃくちゃあります。 みるみ そこで目覚めますよね? Seiho そうですね。その感覚がない時もあるんですけど。あと、僕の場合、上に行こうとした時の方がバネが強いですね。僕の場合、ローリング法で(身体から)抜けるじゃないですか? だから、そこから起きあがるまでに(身体を起こすという)ワンアクションが入るんです。そこで立てずに、そのまま天井の方に近づいていっちゃう時があるんです。そうなった時の方が後ろに引っ張られる感覚が強いです。 みるみ その時はちゃんと抜けられたんですか? それとも目が覚めちゃう? Seiho 目が覚めちゃいましたね。 みるみ その「引っ張られる」みたいなキーワードのせいで、オカルト的なものだと思われちゃうんですよね。でも、まあ、それは聞けてよかったです。身体に戻らなきゃいけないと思っちゃうのかな……。 ━━あのー、根本的な話に戻しちゃいますけど、おふたりとも体外離脱にそれだけハマった経験があるということは、最初にそうなった時に「面白い! これをもっと突き詰めたい!」と思ったということですよね? みるみ はい。初めて知った時はそう思いました。ただ、最近は、普通に生活をしていて「できたらラッキーだな」という程度のモチベーションですね。 Seiho 僕もまったく一緒ですね。ちょっと疲れている日に金縛りになったら、「お、久々に体外離脱しようかな」という感覚です。 みるみ 僕は、体外離脱に関しては全然スキルがない方だと思っていて。ただ、夢を見ることとか、それに関わる睡眠全体に関しての興味はずっとあって。正直、普通の夢と明晰夢の境界線も、僕の中ではごっちゃになりつつあるんですけど、とにかく夢をリアルに見られるようになって、朝起きたときにそれを覚えていられるだけでもすごく楽しいなと思っているんです。さっき言ったような嫌な要素もあるんですけど……。 ━━でもやっぱり、ベースにあるのは楽しいという感情なんですね。 みるみ まあ楽しいですね。なんかもうクセになっています。僕、頻尿で、夜中によくトイレ行きたくて起きるんです。その時って実はすごくいい状態で、身体は動いているけど脳はほぼ寝ているんです。そういう時に便座に座って無意識に夢を思い出す。それでベッドに戻ると夢の続きが普通に見れたりします。 Seiho それは楽しい。 みるみ そういうのが普通に面白いなっていう。最近はそんな感じです。あとは、「誰も知らないことを自分ができる」という感じもあったかもしれません。「みるめも」を始めてからは、自分と似た体験をしている人が多いと分かったので、その感覚は薄れてきましたけど。最初はそういうシンプルな欲求だったと思います。

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「瞑想と睡眠は近いジャンル」(みるみ)

みるみ あと、明晰夢からはズレちゃいますけど、どういう環境や寝具だと熟睡できるかとか、安眠するとはどういうことか、みたいなことを「研究している」とまでは言わないですけど、自分なりに実験していて。その実験結果を確認するのは、自分しかできないわけじゃないですか。だから、自分の睡眠への感度を高めるしか、その実験が効いたのどうかが分からない。それで睡眠への意識が鍛えられたんだと思います。 ━━Seihoさんがわざと硬い枕で寝ていたのも「金縛りが楽しかったから」ってことですか? Seiho はい。最初はもう「楽しいから」しか理由がないですね(笑)。 みるみ 新しいゲームを買ってきたらそれで遊ぶじゃないですか。最初はそれと変わらないと思います。 Seiho 本当そうですよね。しかも足が攣る感覚と一緒で、一回なったらけっこうな頻度でなるんですよね。それも不思議です。 みるみ 身体が感覚を覚える、ということはある気がします。 Seiho そう。だから同じ条件で寝たらまた発生する。 ━━「みるめも」を読むと、みるみさんは瞑想に関しても造詣が深いですが、もともと瞑想に詳しくて夢に興味を持ったのか、それとも最初に睡眠に興味を持って、そこから瞑想に入っていったのか、順番的にはどっちですか? みるみ どうなんだろう。ほとんど並行していたのかな。小さい頃から、自分の意識を観察することは好きでした。だから、瞑想にはいろんな種類があって、それぞれのやり方があって、ということを知ったのはずいぶん後です。もともとは小中学生の頃から、呼吸に集中して自分の意識を鎮める、いわゆる「無になる」という状態にハマっている時期がありました。それと睡眠は近いジャンルじゃないですか。って、交感神経が活発だと冷静な判断ができなくなるんです。スマホの画面をずっと見たり、YouTube見たりしているあの状態から、お風呂あがりの脳がクリアでスッキリしている状態に(お風呂に頼らずに)自力でなれたらすごいじゃん、っていう。最近はやっていませんけど、めっちゃゲームやって脳がぐちゃぐちゃになった状態から、いかに脳を落ち着けるかにハマっていた時期がありました。これが面白くて、時間経つのが早いんです。はっと気づいたら30分ぐらい経っている。気持ち的には5分間くらいなのに。 Seiho 僕らアーティストがライブで集中している状態の脳は、瞑想に近いかもしれないです。 みるみ 極度に集中することをトランス状態って言いますよね。あと、ランナーズハイってあるじゃないですか。あれも同種のものだと思います。 Seiho そういうときって、感覚が研ぎ澄まされていく方と、感覚が解放されていく方の、2種類がありませんか? みるみ 解放……? 解放は分からないですね……。 Seiho 解放というか、自分の姿かたちがなくなる感じ。周りと自分の境界線がなくなっていく感覚と、もうひとつは逆に自分の中にぐっと入っていく感覚。みるみさんはどっちにイメージが近いんでしょうか。 みるみ 今の例えだと、前者。境界がなくなる感じの方が近いです。それで30分ぐらい経って瞑想を終えると、自分がそこに再び現れたような感覚になるかもしれない。 Seiho 僕には、今言った2種類の感覚があって。たとえば走ったり運動している時は、境界線がなくなっていくような感じなんです。でも逆に、プールで泳いでいたり、お風呂に入っている時は世界に自分しかいなくなっていくような感覚で。 みるみ あ! 今のですごく分かった気がします。 Seiho だから、トランス状態にも2種類あるなと。いわゆるマインドフルネスは、どちらかと言えばディープフォーカスというか、お風呂に近い感覚で。逆に境界線がなくなっていく方向は、マインドフルネスじゃなくて禅とかに近い感じ。 ライブとかDJしていて「ゾーン」に入る時のイメージにも2種類あって。たとえばDJやっている時に、大勢のお客さんの前でやっているにも関わらず、家で自分ひとりだけになっている瞬間と、客席から自分を見ている瞬間があるんです。そのふたつがたまにくるのが不思議です。 みるみ ライブ中ってそんなに集中力高まる感じですか? Seiho 高まるときは高まりますね。分析的に「この曲とこの曲をかけて~」ってやっている時もありますけど、何かしら高まったりすると、さっきの寝ている感覚に近いんです。30〜40分記憶がなくて、気がついたら終わっている。で、その時の感覚を思い返したら、さっき言った2種類のどっちかですね。夢に近いと言えば近い。 みるみ ……僕の場合、仕事中はないです。 一同 (笑)。 みるみ 寝てる時にしかない現象です。

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「睡眠がログインなのか、起きていることがログインなのか」(Seiho)

━━ここでSeihoさんの作品『DESTINATION』の話をしたいのですが。これまでの対談シリーズでもお話されていたようにこれは“睡眠導入用”の音楽ではない。 Seiho そうですね。ヒーリングミュージックではなくて、「S N Sとかスマホ見てないで、早く寝ろ!」みたいな。でも、そのメッセージの伝え方をスマホ(S N S)の中でやる。要は、みんなが眠れないのは「ログアウトするのが怖いのかな?」と思っていて。社会からログアウトするのが不安でログイン状態を続けちゃうけど、その不安からどうログアウトするか? が全体のコンセプトです。みるみさんは、睡眠に対してログイン/ログアウトみたいな感覚はありますか? みるみ うーん……その日の金縛りが成功するかどうかにかかっている、という回答になるかな。別の世界に入るという意味では、ログインという言葉がしっくりくるのは分かります━━体外離脱=ログインという感覚? みるみ はい。夢に入るという言い方もできます。ただ、あくまでも睡眠は休むのがベースにあるので、基本はログアウトかな。あくまでも「寝る」という行為の上にいろんなものが乗っているので。僕はそういう感覚ですかね。 ちなみにこの睡眠をテーマにした作品制作は、今後も続けられるんですか? それとも今回だけのコンセプトですか? Seiho とりあえず『DESTINATION』が4時間ぶんの楽曲で、それプラス6時間ぶんを今作っていて。合計10時間ぐらいの作品になって、一旦それで締めかなと思っています。でも、これは初めて話すんですけど、睡眠をテーマにしつつ最後の1時間ぶんの曲は「覚醒」なんです。覚醒と睡眠も繋がる話だから、むやみに分けなくてもいいんじゃないかなと。さっきのログイン/ログアウトの話もそうですけど、睡眠がログインなのか、起きていることがログインなのか?という部分が全体のテーマになりますね。 みるみ 今言われた「覚醒」は、起きているという意味での覚醒なのか、トランス状態みたいな意味での覚醒なのか。 Seiho それは両方ですね。アンビエントミュージック環境音楽)みたいなものって、言ってしまえば1分聴こうが1時間聴こうが一緒なんです。映画だと1分観るのと1時間観るのでは、当たり前ですけど全然意味が違う。でも、アンビエントミュージックは、1分そこにいてもいいし、1時間そこにいてもいい。それを(音楽に詳しくない)普通の人に届けるとしたら、どういう手法で届けるのがいいのか? と考えて。あとは、コロナ禍にライブを配信するアーティストが増えたんですけど、そこに疑問を感じたり。観てる側とアーティストの条件が合っていない部分に違和感があったというか。画面の向こうは盛り上がってるけど観てる側はご飯食べているし……みたいな。それを合わせるために、観てる側も寝てるし、演ってる僕も寝てるってことだったら条件が合うかなと。繋がっている感覚が発生するんじゃないかなと考えましたね。 みるみ なるほど。では「時間」が大切なテーマのひとつですか? Seiho そうですね。そもそも音楽と時間は切り離せないものなので。これは僕の持論で、僕が思う優れたミュージシャンって、時間の操り方がすごく上手いんです。たとえば人が生まれてから死ぬまでの一生ぶんを3分間で表現したり、恋する一瞬を10分の曲にしたり。この時間の操作が上手いミュージシャンが好きって思うところもあって。だから、今回の僕のテーマは「この音楽を聴けば絶対に寝れます」みたいなことじゃなくて。音で聞き手に何かをフィードバックするというよりも、聴いて「眠れる」とか「興奮する」とか「泣ける」以外にも音楽にはいろんな側面がある、みたいなことが伝わればいい。一言で言えば、「睡眠について具体的に考える音楽」ですね。 ━━誰でも眠るわりに、睡眠について意識することって普段ありませんからね。 Seiho どうしても「睡眠時間はどれくらい取ればいいんですか?」とか「睡眠の質を上げるにはどうすればいいですか?」みたいな話になるけど、それって睡眠の本質とは全然違うものだと思っていて。「睡眠とは何か」ということについて、ちゃんと話し合うと面白いなというのがこの対談シリーズの狙いでもあったのです。 みるみ それ、僕も同感です。多くの人は自分の睡眠に興味がなかったり、表面的な睡眠時間の話ばっかりになっちゃって、睡眠そのものにフォーカスしている人、今まで会ったことがなかったんです。だから今日、誰かにこういうことを話したのは初めてなので、すごく面白かったです。 Seiho 普通はどうしてもスピリチュアルな方向とか、エセ科学的な方向にいっちゃいがちな話で、だからみんな話しにくかったり、考えにくかったりするのもその要素があったりするからで。今日は話せてよかったです。 みるみ ありがとうございます。僕にとって今日は歴史的な1日でした(笑)。

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Seiho - DESTINATION 最終目的地 ONE 瞑想 睡眠

Interviewed by 北尾修一(百万年書房) Photo by 中村寛史

PROFILE

みるみ

ブロガー、エンジニア。 「みるめも」という雑記ブログを運営しています。 みるめも

Seiho

大阪出身のアーティスト/プロデューサー/DJ。 米 Pitchfork や米 FADER など多くの海外メディアからのアテンションを受けながら、LOW END THEORY、SXSWといった海外主要イベントへも出演。 国内外問わずアーティストのプロデュースやリミックスを手がける他、ファッションショーや展覧会などの空間音楽、映像作品の音楽プロデュースも行う。 自身でもインスタレーション作品を発表するなど、音楽家の垣根を超え、表現の可能性を追求している。 公式Instagram | 公式Twitter

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