昨年9月にヒャダイン歌詞提供のディスコファンク「ドント・ストップ・ザ・ダンス」で念願のメジャーデビューを果たしたフィロソフィーのダンスが、2021年第1弾の新曲として、デジタルシングル「カップラーメン・プログラム」を配信リリースした。頑張った自分へのご褒美に食べる深夜のカップラーメンをモチーフにした歌詞を手掛けたのは、アンジュルムBEYOOOOONDSの作詞を担当する児玉雨子。そして、作曲はヨーロッパ在住の新進気鋭のクリエイターのコライトによる、オントレンドなサウンドになっている。彼女たちの代名詞であるファンクソウルディスコの香りをまといつつ、よりクールでメロウエレクトロR&Bへ。フィロソフィーのダンスらしさを変化、進化し続ける彼女たちが未来に臨むものとは――。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志

◆今までなかった“ナウい音”に挑戦してみた、自分たちとしても挑戦的な曲だと思います(奥津)

ーー 新曲を聴いたときに、まず、サウンドに驚きました。これまでのブラックミュージックの香りも残しつつ、より現代性のあるクールなエレクトロR&Bになっていて。

【 十束 】 私たちにとっても新しい挑戦だったので不安もあったんですが、自分たちの声でレコーディングしたものを聴いて、「あ、フィロソフィーのダンスになってるな」と思って。そこからは、ポジティヴな考えに変わって。今は、皆さんの反応がどうなのかが一番の楽しみです。みんなに「かっこいいでしょ?」って聞きたいですね。

【 佐藤 】 個人的にはK-POPが好きなので、挑戦してみたいなって思っていた最新のダンスミュージックに挑戦させてもらえる喜びがありました。曲もダンスもひたすらカッコいいところが多くて。フィロソフィーのダンスのライブのセトリを組むと、大体はコミカルな感じとか、明るくてハッピーな雰囲気になるんですけど、この曲ができたことで、これまではあまりセットリストに入れられなかった曲が入れられるなと思って。ライブの幅が広がるんじゃないかなと思うし、早く、皆さんにライブで観ていただきたいなっていう気持ちでいっぱいです。

【 奥津 】 これまでは比較的古めの年代のサウンドの中で遊んできた感じがあったので、「ついに令和のダンスを魅せる時がきた!」って思ってます(笑)。そうやって挑戦するのは前に進んでるときにしかできないことだし、進化し続けることで、今後、生きていく道の幅も広がると思う。今までなかった“ナウい音”に挑戦してみた、自分たちとしても挑戦的な曲だと思います。

【 日向 】 インディーズ時代に60年代〜80年代のダンスミュージックをめちゃくちゃやってきたので、メジャーに行って新しいアプローチをしていきたいなと思って。新たな風を入れるという感じですね。海外の方に楽曲提供していただくことも初めてだし、MVも今までと結構、毛量……じゃなくて、毛色が違って。

【 十束 】 あはははは。何を言い出したのかと思った。

【 奥津 】 MVで毛量、増やしたのかな。日向 いや、最初に“毛”っていう漢字が頭に浮かんで(笑)。ちゃんと言い直すと、毛色が変わって、自分の好きな世界観がMVにもぎゅっと詰まっていて。自分もその中の一人ではあるけど、客観的に見てこの4人がやってるのが新鮮でわくわくしたんですよね。曲もMVもすごく新しい方向になってると思います。

◆クールな表情だけをしていればいいわけじゃなくて、悩んでたりとか、見知らぬ廊下に迷い込んじゃった不安な表情とか(佐藤)

ーー 今、ハルさんからあったMVの話を先にしましょうか。それぞれの不思議な一夜を描いた、ストーリー性のある映像になってますね。

【 十束 】 今までで一番撮影時間が長かったですね。朝に集合して次の日の朝まで撮影して…ほぼ24時間かかったのは初めてだったんですけど、それくらい丁寧に撮っていただけてありがたいなと思って。あと、一人一人のシーンが多くて、最後に4人で集まるんですけど、4人のシスターフッド感がうまく表現されてる。初めての物語調のMVだったし、すごく新鮮でカッコよくて最高でした。

【 奥津 】 褒めまくりだね。

【 佐藤 】 (笑)表現が難しかったですね。クールな表情だけをしていればいいわけじゃなくて、悩んでたりとか、見知らぬ廊下に迷い込んじゃった不安な表情とか。今までは歌ってるだけのMVが多くて、表情で表現するのは初めてなので、新たなメンバーの一面が見られるんじゃないかと思います。

ーー まりあさんはポールダンスを披露してました。

【 佐藤 】 CSのダンスチャンネルで冠番組が始まって、そこで、ちょうどポールダンスに挑戦してたんですよ。ダンスの先生に教わった技を盛り込んでみました。学んだことが生かされてます。

ーー マリリさんが「男友達と家飲みしてたものの自分以外は寝てしまった」というシチュエーションですよね。

【 奥津 】 この設定やばくないですか?(笑)。アーティスティックな映像美になってますけど、アイドルのMVでは珍しいシーンだなと思って。映像にはそんなに映ってないんですけど、現場では、私の部屋のセットの中で男性が寝てる横で踊ってて。今までにないけど、それも女性らしさの表現につながったらいいなと考えながらやってました。だから、本当に今までにない表現とか、珍しいシーンがたくさんあるんですよね。自分のなかでもやもやしてる、どうしたらいいかわからない感じで踊ったりとか、なんとも言えない気持ちを表現するのってめっちゃ難しいなって感じて。でも、出来上がったものを見たら、みんな、妬みとか戸惑いとか、なんとも言えない気持ちをうまい具合に混在させていて、ぐちゃぐちゃになってていいなって思いました。

【 日向 】 私も表情が結構、難しかったですね。「可愛い」「楽しい」「笑顔」「かっこいい」「クール」という表情はやってきたんですけど、「切ない」「不安そう」な顔はあまり、人生においてもすることがなくて。他人から見て不安そうに見えるって結構、難しいんですよね。しかも、撮影の一番最初が、廊下を不安そうに歩くシーンから始まったので、「やばい撮影にきてしまった……。今日、大丈夫かな? 苦手なままで終わるんじゃないかな」って不安だったんですけど、監督さんの演技指導が的確で。見本も見せてくれたんですけど、めちゃめちゃ上手だったので、必死に頑張って真似しました(笑)。

ーー (笑)ダンスは4人が迷い込んだホテルの廊下で踊ってますね。

【 十束 】 狭かった!

【 奥津 】 今まで史上一番狭い場所で踊りました。人生でも一番狭かったかも。それなのに、入れ替わったりしなくちゃいけないから、すごい大変だったよね。4人の息が合ってるからよかったものの、「ありえん、ここで踊るの?」っていう驚きと楽しさがありました。

【 日向 】 元々はホテルのロビーで撮る予定だったのを、ロケハンに行ったスタッフの方々が、これだと見慣れた映像になってしまうということで、廊下にチェンジしてくれて。

【 奥津 】 しかも、ホテルを閉めてる時期だからこそ使えた、みたいな。よかったですね。

【 日向 】 ワンフロア貸し切っちゃったんだから!

ーー すごい贅沢ですね。歌詞はどう捉えましたか。

【 日向 】 この方向に決まったのはあんちゃんが言ってくれたんだよね。

【 佐藤 】 次のシングルのテーマ、何にしようかっていう話になったときに、一人ずつ意見を出して。私自身、自分に厳しいことが偉いとされていることが窮屈で。自分に激甘なんですけど、そういう人がいてもいいよねって思ってて。だから、頑張った日があったら、自分にご褒美を買い与えてもいいし、深夜に大好きなカップラーメンを食べる日があってもいいんじゃないかっていう話をしました。児玉さんにもそのお話をしたら気に入ってくださって、カップラーメンをテーマに私が言った意見をカッコよくまとめてくれました。

◆「カップラーメン・プログラム」も押しつけるのではなく、「そんな自分も愛してあげよう」「そんな日があってもいいよね」っていう曲になってます(日向)

ーー メンバー発信だったんですね。

【 奥津 】 そうですね。思ってることはみんな近くて。「わかる! ストイックでいなきゃいけないの疲れるよね」って。気を緩ませてあげられるような曲を歌いたいよねって言っていて。

【 日向 】 あと、「包容力で包み込んであげたいね」っていう話もしてたんですね。私たちはこれまで、「自信がないです」みたいなことを歌にすることがあまりなくて。「ドント・ストップ・ザ・ダンス」とか、私はこうだ!っていう自己主張バンバンの曲だったので、次の曲は、「こういう価値観があってもいいよね」って語りかけるような方向から……自己主張する。

【 佐藤 】 結局、自己主張はするんだ(笑)。

【 日向 】 うん。自己主張はするけど、言い方変えてみっかっていう話をしていたので。「カップラーメン・プログラム」も押しつけるのではなく、「そんな自分も愛してあげよう」「そんな日があってもいいよね」っていう曲になってます。

ーー どちらの曲にも<コンプレックス>というフレーズが出てきますが、「カップラーメン・プログラム」では<絡まってしまった>と歌ってて、「ドント・ストップ・ザ・ダンス」では<愛しき>という形容詞がついてて。

【 佐藤 】 はい。誇っちゃってます。

【 日向 】 自己肯定感が超高い女たちの集まりとして活動しているので。

【 佐藤 】 どんな活動?

【 十束 】 そんな活動してないよ、特に(笑)。

【 日向 】 あははは。でも、やっぱり、世の中の人、全員が自己肯定感が高いことに共感できるわけじゃないんじゃないかって話をメンバーの中でしてて。私たちは人前に立つ仕事をしてて、ある程度、心が座ってきて。……心って座る? 

【 佐藤 】 あははは。赤ちゃんの首みたい。

【 十束 】 首が座っちゃったね。据わるのは肝かな?

【 日向 】 そう! いろんな経験をした結果の今、肝が据わってきて。だから、自分のことを愛してあげて、嫌なところがあっても愛してあげようって言えるけど、果たして、世の中の人がみんな、そう思えるかって言ったら別だから。自己肯定感が低い人は全く共感できない話になっちゃうので、もっと優しく寄り添ってあげるような曲を歌いたいというのはありました。

◆ifとか<b>とか、プログラミング用語をちゃんと歌詞に入れてくださっていて。児玉さんの愛が随所にこもっている(十束)

ーー 聴き手を優しく包みながら自己主張してるんですね。タイトルはどんな意味があるんですか。

【 十束 】 「スパゲッティ・プログラム」っていうプログラミングで使われる言葉があって。ロジックがぐちゃぐちゃに絡まり、第三者が読み解くことができない状態のソースコードのことを言うそうなんですけど、そこから着想を得て、児玉雨子さんが新たな言葉を作ってくれたんです。児玉さんとは直接、お話しする機会も設けさせてもらって。だから、私たちプラス児玉さんの5人で作り上げた世界観という感じが気に入ってるのと、ifとかとか、プログラミング用語をちゃんと歌詞に入れてくださっていて。児玉さんの愛が随所にこもっているし、遊び心もあって、素敵な歌詞だなって思います。

ーー <甘いの? しょっぱいの?/ほんとうに欲しいのは どれ?>というフレーズもありますが、みなさんが深夜に食べたいカップラーメンもお伺いできますか。

【 佐藤 】 セブン-イレブンでも売ってる『蒙古タンメン中本』のカップラーメンが深夜に一番ベストですね。あの中に溶けるチーズをトッピングして食べるのが自分へのご褒美です。

【 奥津 】 定番なんですけど、「シーフード味」が大好きです。あの美味しいスープには残りご飯をぶち込みたくなります(笑)。

【 十束 】 私はセブン-イレブンで売ってる、レンジでチンするタイプの「辛口スタミナラーメン」。ニンニクの量がやばいんですよ! かなり破壊的な匂いがするんですけど、部屋を締め切って、狭い空間で食べるのがめちゃめちゃ好きです。ぜひやってみてください! 

【 日向 】 タイ料理が好きなので、トムヤムクンカップラーメンかな。でも、辛いのが苦手なので、泣きながら食べてます。痛めつけてますね、自分を。

ーー (笑)それはご褒美なのかな。もう1つ、自分で決める<あれが幸せ>も教えてください。

【 十束 】 好きなことをして、だらだらする時間がやっぱり幸せだなって思うようになって。私はゲームをしながら大好きなカフェラテを飲んでる瞬間が世界で一番幸せ。有り余る富と名声はいらないので(笑)、一生好きなことをして、ゆったりとした時間を過ごせたら私は幸せです!

【 佐藤 】 最近、特に強く感じるんですけど、本当の幸せはやっぱり健康じゃないですかね。コロナで大変な思いをされてる方もいて。健康でいられることは当たり前じゃないし、大事だなと思うので、家族、友達、メンバー、スタッフさん、そしてファンの皆さん、関わる人全ての皆さんに健康でいてほしいなと思います。

【 奥津 】 ためらいのない会話かな。自分が考えていることや感じたことを、これを言ったらどう思われるかなって、ためらわずに言えるとき。例えば、メンバーと話しているときとか。自分の意見が正直に言えたとき、私、生きてるって。真っ直ぐに健やかにつくしのように生きてると思って嬉しくなります。

【 十束 】 あはははは。少女マンガみたい。

【 佐藤 】 可愛い、なんか。

【 十束 】 アイドルっぽいね。

【 奥津 】 そろそろ芽を出すよ。

【 佐藤 】 (クールに)うん、がんばれ。

【 日向 】 あははは。私はありのままの自分でいられる環境がすごく幸せだなと思っていて。しかも、歌を仕事にするっていう小さい頃からの夢を叶えつつ、ありのままの自分でいられる場所が今、ここにある。それが自分にとっての幸せだなと思ってます。世の中いろんな価値観があるけど、自分が満足していれば、私はそれが幸せだと思うんですね。お金にはあまり執着はないし、多くは願わないので、今ある、当たり前の幸せがなくならないのがいいなって思います。

ーー 楽曲、MV、歌詞とこれまでとの違いを話してきましたが、歌い分けも印象的ですよね。特に<あの顔が好き>をハルさん、<あの胸がいい>をまりあさん、<あの声も好き>をおとはさん、<あの脚だって…>をマリリさんが担当してて。

【 佐藤 】 お気づきで。

【 奥津 】 「ドント・ストップ・ザ・ダンス」はかなり自信に満ち溢れた曲だったので、私たちはすごく自信があって、完璧で、自己肯定してると思っているファンの方が多いと思うんですけど、自分にも足りないものがあって。他のメンバーの「この脚いいな」「あの声いいな」「その顔好きだよ」って思う部分が私たちにもあるんですね。だから、今までの私たちと違う側面がでたらいいなってことで、今までだったら、私が胸の歌詞を歌うのが普通だと思うんですけど、あえて他のメンバーが歌うことで、メンバーを少し羨ましく思う気持ちが出たらいいなって思ってて、だから、狙い通りですね。

ーー (笑)まんまとそこが気になりました。誰がどこを歌うかはどう決めたんですか。

【 十束 】 自然と? 私は、ハルちゃんがフィロソフィーのダンスの歌を支えてくれているので、私はリスペクトを込めて声がいいなって思って、声にしましたよ!

【 日向 】 私は顔か脚が良くて、顔になりましたね。好きって言っている相手を触りに行く振り付けになっていて、あんさんの滑り台のようなお鼻を触るところがあるのでライブでも楽しんでもらえるかなと思います。

【 佐藤 】 ハルちゃんが、「私は胸はあるから、胸以外がいい」って言ったのが脳裏にこびりついてます(笑)。マリリの胸になれるように願いながら歌ってます。

【 奥津 】 私に足りないのは脚だけだと思います。

【 日向 】 自信がすごいな! あははははは。

◆これ聴きながら深夜にカップラーメンを食べてくれたらいいな(奥津)
みなさんがちょっと辛くなったときに寄り添える曲になったらいいなと思います(日向)
いろんなことに挑戦していくぞっていう、この活動に対する情熱を感じ取って、受け止めて聴いていただけたらいいな(佐藤)
この4人ならフィロソフィーのダンスとして進化し続けられるんだっていうことを証明したいです(十束)

ーー (笑)この曲も最終的には<たったひとりだけの私なんだもん>って胸を張ってますからね。リスナーにはどう届けたいですか。

【 奥津 】 これ聴きながら深夜にカップラーメンを食べてくれたらいいな。

【 日向 】 自分を甘やかすことを肯定してあげられたらいいなって思います。私たちもいつでも完璧なステージの状態ではなくて。部屋で一人でぼうっとする時間もあるし、みなさんがちょっと辛くなったときに寄り添える曲になったらいいなと思います。

【 佐藤 】 今までフィロソフィーのダンスを聴いてくれてた方にとってはかなり新鮮な楽曲だと思うんですけど、これからもいろんなことに挑戦していくぞっていう、この活動に対する情熱を感じ取って、受け止めて聴いていただけたらいいなと思います。進化していこうとしている勇気を感じ取ってほしいです。

【 十束 】 今回新たなサウンド感に挑戦しているので、その分、今まで私たちの曲が刺さらなかった人たちにも届けばいいなと思っています。フィロソフィーのダンスにとっては、今年が重要だと思ってて。去年、メジャーデビューして、ご時世的になかなか思うように動けないところがあったんですけど、この曲を皮切りに、スタートダッシュをうまく切って、4人で勢いよく活動できればいいなと思います。そして、この新曲を通して、この4人ならフィロソフィーのダンスとして進化し続けられるんだっていうことを証明したいです。私たちらしさは守りながら、いろんな曲を表現できる4人でいたいなと思います。個人的にはいつかは萌え萌えなキュンキュンソングとかもやりたいですね!(笑)

ーー 萌えキュンソングもいけますか、ハルさん。

【 日向 】 ね、なんか言ってますね。どうしましょうか。

【 佐藤 】 ポテンシャルは持ってるよ。やったら一番可愛いんですよ。

【 十束 】 ハルちゃんのいいところは、嫌だなって思ってても、ちゃんと仕事としてやり切れるところなんですよ。あはははは。

【 奥津 】 100%でやるよね。ハルちゃんはきっとできるし。

【 十束 】 そう。やるって決まったら、きっと本気でやってくれると思います。

【 日向 】 (可愛い声で)萌え萌えキュン! ……3人のユニット曲でお願いします。



フィロソフィーのダンス 深夜に食べるカップラーメンをモチーフにした新作は、サウンドと歌詞ともに新たな世界観へ。4人に進化と手応えを訊く。は、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press