リモートワークは運動不足をもたらす。健康への留意が必要だ。そんなとき、まず必要なものが「免疫力」だ。人気フィジカルトレーナー・吉田輝幸氏の新刊『6つの力を養い、理想の働き方を叶えるトレーニング』から、そのヒントをご紹介する。
前線に立ち続けるために必要な「免疫力」
新型コロナウイルス感染症は収束するのか、それともウイルスと共存する時代になるのか。どちらにしてもこれからのビジネス・アスリートには、今まで以上に健康な肉体が必要なのは間違いないと思います。健康を害して働けなくなっては、元も子もありません。この先の重要なこととして最後に挙げるのは「免疫力」です。
「免疫力」は、「栄養」でアップできます。つまり「食事」が鍵を握ります。
「免疫力」とは、細菌やウイルスなど身体の外から侵入してくる病原体や、がん細胞など身体の内側で起きる異常から身体を守る力のことです。目、鼻、喉、腸といった粘膜組織、その他体内の至るところで免疫システムが24時間働き、病原体の侵入を防いでいます。ところが、現代人の生活では、免疫の仕組みが正しく働かない要因が増えています。
免疫力が低下する要因はさまざまですが、偏った食事も大きな要因になります。免疫力を高めるためには普段の食生活が大事ですが、これは何か特定の食品を食べることではありません。コロナ禍でも、ネバネバ食品や発酵食品など、マスコミを中心にさまざまな食品が喧伝されました。でもそうしたものに飛びつく前に、それを食べて有効に生かせるよう、身体の土台部分に目を向けることが大切です。
人間の身体は、年齢や部位にもよりますが2、3カ月で全身約60兆個の細胞が入れ替わります。その間の栄養の仕組み、すなわち食生活全体が結果として2、3カ月後の身体に表れます。いくら特定の有効性があっても、納豆や海藻を数回食べて効果があるとは限りません。
トレーニングの基本として取り上げてきた「運動・栄養・休養」は、基本的な身体づくりや健康維持に必要なことです。戦いを強いられるビジネス・アスリートは特に、この基本部分を盤石にしておくことが大切です。安易な情報に流されないためにも、この章では「栄養」に関わる正しい食事や食生活についてお話しします。
筋トレに必要なたんぱく質量
たんぱく質は英語で「プロテイン」、ギリシャ語の「プロテオス」が語源で、第一のもの、チャンピオンといった意味です。生命活動の鍵を握るもので、身体の構成成分としても不可欠です。身体をつくるだけでなく、代謝に必要な酵素や機能を調節するペプチドホルモン、神経伝達物質、遺伝子、血液成分、免疫の抗体などにもなり、エネルギーとしても利用され、1gあたり4㎉のエネルギー源となります。
生命活動に欠かせない栄養素ですから、長期間不足すると命の危険に関わります。短期間の不足でも、さまざまなトラブルを引き起こします。体力やスタミナが不足し、抵抗力も弱くなります。脳の働きも低下して、記憶力・思考力が鈍ってしまいます。
一日でとりたい量は、体重1㎏あたり1gが目安。体重70㎏なら70gです。トレーニングを習慣にしているならより多く必要で、体重1㎏あたり2g前後が目安です。
たんぱく質が豊富な鶏のささみは、100gあたり約24g含んでいます。ほかにも肉や魚からとることが多いはずですが、種類によっては脂質も多いので要注意です。牛肉や豚肉より鶏肉、動物より魚介類というように、脚の数が少ないものを優先するといいかもしれません。豆腐などの大豆食品や豆類からも、植物性たんぱく質を摂取できます。白米1杯150gにも、約6g含まれています。
プロテインのすべてはタイミング
1回の食事で意外に多くのたんぱく質をとれそうですが、ここで注意が必要です。一日に必要な量をまとめてとっても、全部が吸収されるわけではありません。体内で一度に消化吸収できるたんぱく質量には限度があり、20~30gといわれています。必要以上に摂取した分は体外に排出されてしまうほか、脂肪に変換されてしまう恐れもあります。
最近は、プロテイン飲料や食品も普及しています。かつては筋トレに熱心な人の専売特許だったようなものが、今ではコンビニの棚にも粉末タイプが並び、プロテイン含有量の高いジュースなどもたくさんあります。
それらを気軽に取り入れる人が増えましたが、食事で十分なたんぱく質がとれているなら、追加したプロテインのたんぱく質は全部ムダどころか、太る可能性もあります。ジュース類はたんぱく質の含有量を確認してください。粉末タイプなら、1回分が一度に体内で処理できるたんぱく質量と同程度です(それに合わせて計量スプーンがつくられています)。つまり、プロテインは、ブームに乗ってただプラスするのではなく、食事でとれない分を補うために適正量を取り入れたり、もっと多くとりたいなら、1回ごとに2~3時間はあけ、回数を分けてとることが大事です。
【たんぱく質のとり方ポイント】
・一日に体重1㎏あたり通常1g・筋肉をつけたい人は2gを目安に。
・食品からとるときは脂質が少ない脚の数が少ないものを(大豆など植物性→魚介類→鶏肉→豚肉・牛肉)
・白米1杯(150g)あたりにも約6g含まれる。
・体内で1度に処理できるたんぱく質量(20~30g)を超えないように。
・プロテインドリンクなどで多くとりたい場合は回数を分ける。
プロテインと炭水化物、どちらもとる。
たんぱく質を一度に体内で消化吸収できる量は、20~30gと限度があります。プロテイン飲料・食品は適度に時間をあけながら、賢く取り入れてください。筋肉を鍛えたり大きくしたりしたい場合、食事とは別にトレーニングの前後にプロテイン(たんぱく質)をとれるように時間配分ができるといいでしょう。
その際、プロテインだけではなく炭水化物(糖質)もとるのがポイントです。糖質が不足している状態だと、トレーニングに必要なエネルギーを得るために体内のたんぱく質が分解されてしまうため、筋肉が合成されにくくなってしまうのです。トレーニング前には糖質、後には糖質とたんぱく質の両方をとるのがベストで、糖質とたんぱく質の間は30分くらいずつ時間をあけられると理想的です。たんぱく質はトレーニングの翌日も多めにとると、筋肉の回復を促します。
例:トレーニング → おにぎり(糖質)→(30分)→ プロテイン
第1回 筋トレすると脳が活性化する、の嘘・本当?
第2回 トップトレーナー直言「決断力はフィジカルトレで向上する」
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