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新しい世界が広がるID.3のインテリア

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
photoOlgun Kordal(オルガンコーダル)
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
両車のインテリアにも、ボディと似た違いがある。フォルクスワーゲンID.3には新しい世界が広がっている。日産リーフは従来的。ダッシュボードのデザインや素材などは、ほかの日産車から持ってきたような共通性を感じる。

しかし機能的で、少し上質な素材を採用してある。実際に触れてみれば、ソフト加工されてある場所も多い。エアコンの操作ボタンもシンプルで大きい。シートヒーターのスイッチも従来的。

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日産リーフとフォルクスワーゲンID.3

リーフのステアリングホイールは、前後方向のテレスコピック調整ができない。これも世代の古さを感じさせる。だが、形状自体は悪くない。

ID.3の車内は別世界。とてもクリーンなインテリアデザインが与えられ、実際に押せるボタンは最小限だけ。ブレーキペダルに足を置き、ダッシュボード上部のセレクターをドライブに入れれば、クルマは発進する準備が整う。

必要なら、回生ブレーキが強まるBか、前に進めないならリバースに入れても良い。

エアコンの温度調整は、リーフより難しい。実際のボタンを用いないから。レーンキープ・アシストをオフにしたいときも、タッチモニターからいくつかのメニュー項目をたどる必要があり、手間取る。

ステアリングホイールは、ID.3も良い。テレスコピックも付いている。

内装の素材は、コストやリサイクル性、重量など、いくつかの選択理由があるのだろう。少しでも軽い方が良いことは間違いない。少なくとも通常のゴルフから乗り換えるのなら、少し豪華に感じるはず。

明確な違いのない加速力とレスポンス

ID.3は新しいだけに、デザインのアドバンテージは高い。だが、リーフが明らかに劣るともいえない。この印象は、走り始めてからも同じだった。どちらも洗練されマナーが良い。想像以上に。

もちろん、エンジン音は聞こえない。速度を上げても、風切り音が気になるほど聞こえてもこない。

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フォルクスワーゲンID.3 1stエディション・プロ・パワー58kWh(英国仕様)

加速力やレスポンスに明確な違いはない。最高出力は217psと203psで、リーフの方が若干パワーはある。0-100km/h加速も6.9秒と7.3秒で、リーフの方が鋭い。車重はリーフが1634kgなのに対し、ID.3は1714kgと小さくない違いがある。

しかしID.3は後輪駆動という性質からか、遅くは感じない。アクセルレスポンスがリニアだから、電気モーターへ掛かる負荷も高くはないはず。

リーフでは、フロントタイヤの空転を避けるため、静止状態からの加速時は34.6kg-mの最大トルクが絞られているようす。一方のID.3は、最大トルクが31.6kg-mと少し弱い。

またリアへ効率的気に荷重がかかり、リアタイヤは空転しない。結果として、スタートダッシュの反応はID.3の方がイイ。

リーフでアドバンテージとなるのは、アクセルオフ時の回生ブレーキの制御。両者ともに、標準ではエンジンモデルのように、アクセルオフで徐々に減速する設定が与えられている。

だがID.3では、シフトレバーを回すと回生ブレーキの強さが徐々に増すだけ。リーフではダッシュボードのスイッチを操作すると、ペダルの反応が大幅に向上する。ブレーキペダルを使わず、発進から停止までを安定してできる。

重いハッチバックとして優れる回頭性

市街地や低速走行時は、このワンペダル・ドライブは驚くほど直感的なものになる。すべての純EVが採用しない理由を、疑問に思うほど。

ID.3は、運転席からの視界に優れる。フロントタイヤには駆動システムがないため、最小回転直径は9.9mと、リーフの11.0mより小回りが効く。全幅も1809mmとコンパクトだから、都市部では乗りやすく感じるだろう。

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日産リーフ e+ 3.ゼロ(英国仕様)

続いてはハンドリングと乗り心地。ID.3が履いていたのは19インチアルミホイールで、タイヤは215/40というサイズ。リーフの17インチ215/50という組み合わせより、だいぶカッコは良い。しかし、乗り心地では有利になりにくい扁平率といえる。

リーフの全体的な乗り心地は、良好といえる。しかし若干ゴツゴツ感があり、もう少しの洗練度を求めたいところ。

路面が波打っていたり、隆起部分を通過すると、コンバーチブルのようにミラーが振動することもある。ステアリングホイールには、大きな路面からの入力がキックバックとして伝わる場面もあった。

フロントタイヤが駆動を受け持つものの、バッテリーは低い位置で均一に搭載されるため、前後の重量配分は悪くない。1630kgのハッチバックとして、回頭性に優れている。

フォードフォーカスのような安定感や俊敏性はないものの、活発さは充分にあり、楽しい。コーナーでの立ち上がりでは、トルクステアが看取された。

ドライバーが感じる魅力度としては、ID.3の方が上。ボディはねじり剛性に優れ、路面に隆起部分があっても滑らかに均して通過してくれる。

後輪駆動の特性は純粋に楽しめる

反面、うねりがある路面では垂直方向のボディの動きが大きく、頭が少し揺さぶられることも。姿勢制御はしっかりしており、ステアリングには不要な手応えが伝わらず、反応はリニア

後輪駆動だから、トルクステアも発生しない。ID.3の方が走りに落ち着きがあり、挙動も予測しやすい。しかも運転が楽しめる。

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日産リーフとフォルクスワーゲンID.3

ID.3も低重心ではあるものの、リーフより車高が高く、ボディロールは多めに生じる。それでも軽快に旋回し、フロントタイヤのグリップ限界も優れている。

前後の重量配分がエンジンモデルより良好なことに加え、リアエンジン・リアドライブという特性もプラス。フロントタイヤの限界が近いことは、軽くなるステアリングホイールの感触から掴み取れる。

加速時にはリアタイヤに荷重が移動し、グリップ力が高まる。とても気持ちがいい。ポルシェ911ではなく、ルノー・トゥインゴの走りに似ているが、純粋に好印象な体験だ。

日産リーフの運転の楽しさが、大きく劣るわけではない。それ以外の面でも。だが今回の2台で選ぶなら、インテリアにもアドバンテージを備えるフォルクスワーゲンID.3となるだろう。

多くのモデルがリーフの市場へ参入することで、競争が生まれ走りも良くなる。ID.3はゲームチェンジャーや、革新的といえるほどのモデルではないかもしれない。クラスリーダーともいえない。だが、選ばれるのに充分な内容は備えていると感じた。

フォルクスワーゲンID.3と日産リーフのスペック

フォルクスワーゲンID.3 1stエディション・プロ・パワー58kWh(英国仕様)のスペック

価格:3万5215ポンド(493万円/英国政府補助金適用後)
全長:4261mm
全幅:1809mm
全高:1568mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.3秒
航続距離:418km
CO2排出量:0kg/km
車両重量:1714kg
パワートレイン:AC誘導同期モーター
バッテリー:58kWh(有効容量)
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:1速オートマティック

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日産リーフ e+ 3.ゼロ(英国仕様)のスペック

価格:3万6970ポンド(517万円/英国政府補助金適用後)
全長:4480mm
全幅:1790mm
全高:1540mm
最高速度:157km/h
0-100km/h加速:6.9秒
航続距離:384km
CO2排出量:0kg/km
車両重量:1634kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
バッテリー:62kWh
最高出力:217ps
最大トルク:34.6kg-m
ギアボックス:1速オートマティック


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