成人式の思い出を描いた漫画「子どもの晴れ姿」がSNS上で話題となっています。大学時代、1人暮らしをしていた女性。成人式を前に母親から「一生に一度のイベントだよ」と帰省するように言われますが、面倒だからと帰らないことに。その後、真夏の8月に、振り袖を着るために帰省すると…という内容で「ジーンときました」「母のことを思い出しました」「わが子の成人式が楽しみです」などの声が上がっています。作者の女性に聞きました。(同作は「with online」連載の「思い出ひらひら」の一部として発表されたもの)

当日は終始幸せそうだった母

 この漫画を描いたのは、イラストレーターのさざなみさん(30代)です。2021年1月、「『どんなときでも味方だよ』って伝えたい!親子のコミュニケーション、試行錯誤中!」(KADOKAWA)を出版。インスタグラムツイッターでは、子育てなどの日常をテーマにしたエッセー漫画を発表しています。

Q.今回の漫画を描いたきっかけは。

さざなみさん「自分が親になり、成人の日に関する話題に昔とは違った感慨を抱くようになりました。20年間、子どもを慈しみ育てたであろう親御さんの、とても誇らしくてちょっぴり切ない、そして、晴れ晴れしい思いを漫画の形にしたいと思いました」

Q.振り袖の購入も、お母さまが熱心に行われたのでしょうか。

さざなみさん「まだ高校生だった頃、展示場に伴われて行きました。販売員の方と母が熱心に着物を選び、私はぼんやりと試着していたのを覚えています。私は着物に全く興味がなく、着る機会がめったにないのに高価だなという感想でした」

Q.当日、お母さまが張り切る様子をどのように見ていましたか。

さざなみさん「着物を羽織るだけで歓声、帯の仕上がりにうっとりため息、髪にはわざわざ、生け花で作った飾りを手配してくれました。それらも最初は、私のために無理をしてくれているのかなと思っていました。お誕生会を盛り上げようとする司会者のようなつもりなのかなと。ただ、その日の母は終始幸せそうに誇らしそうにニコニコしていて…どうやら、本気で楽しんでいるのだと気付いたときはそのあまりの利他精神にがくぜんとしました」

Q.写真撮影を終えて、お母さまは何を話されていたのでしょうか。

さざなみさん「出来上がったら誰に見せようかという話をしていました。親戚に見せなきゃ、どこそこに飾らなきゃと。私は『そんなの誰も見たがらないよ』と返していましたが、あれは母が純粋に見せたいから言っていたのだと今なら思います」

Q.母親になられて、成人式のご自身の対応についてどう思いますか。

さざなみさん「当時は、親にとっても人生の節目イベントであるという認識が全くありませんでした。常に新しい刺激を求めていた時期で、地元に帰ることや幼なじみと会うことは停滞としか感じられなかったのだと思います。母がどうしてそんなに熱心にすすめたのか、もう少し心情を思いやって考えていれば、きちんと式に参加していたかもしれないので…昔の自分に『コラ!』と言いたいですね」

Q.お子さんが成人したら、どのようにお祝いされるつもりでしょうか。

さざなみさん「絶対、一緒に写真は撮りたいです。式に出るか、服装をどうするかは本人の望むようにすればいいと思いますが、写真だけは何とか頼み込んで、一緒に撮ってもらいます。喜んでそうしてもらえるような、信頼のある親子関係を築いていきたいと思っています」

Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。

さざなみさん「私と同じように、成人式をおっくうに思っていた人が意外と多くて安心しました(笑)今年の成人式に出席するか迷っていた人から、『母の気持ちに思い至ったので出席したい』とのコメントもありました。『今年はコロナ禍で成人式も諦めていたが、写真だけでも撮ろうと思った』というお声もあり、うれしくなりました」

オトナンサー編集部

漫画「子どもの晴れ姿」のカット=さざなみ(sizuqphi)さん提供