ステイホームが呼びかけられた「巣ごもり生活」の中で、例年以上にゲームに触れる機会の多い1年だった2020年。毎年「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を開催している雑誌『CONTINUE』編集長の林和弘氏に、そんな2020年の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー BEST&超クソゲー」について聞いた。(全2回の1回目/#2に続く)

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ゲーム・オブ・ザ・イヤー」とは何か?

――『CONTINUE』さんは毎年「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」という企画をやってますけど、ランキングはどうやって決定されてるんですか?

林 もともと『CONTINUE』は『超クソゲー』っていう単行本から派生した雑誌なんですよ。『超クソゲー』はその名の通り、ゲームメーカーへの忖度もなくクソゲーを面白おかしく紹介した本だったので、そこからゲーム雑誌を創刊するにあたって、同じように毎年、その年に一番面白かったゲームと……まあ、言っちゃうとクソだったゲーム(笑)を勝手に決めちゃおうと思ったんですね。それが「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」の始まりです。

 毎年、編集部とレギュラー執筆陣が集まって夜通しでランキング決定座談会をやるんですけど、昨今の状況もあって、2020年は初めてZoomでのリモート開催となりました。第1回目は2000年で、その年はコーエー(現・コーエーテクモゲームス)から発売された『真・三國無双』がベストゲームの第1位になってますね。

――「勝手に決める」っておっしゃってますけど、ゲームメーカーからの反応とかあるんですか?

林 いくつかはあって、たとえば2004年ベストゲームの第1位に選んだ『メタルウルフカオス』はフロム・ソフトウェアの方に喜んでいただいて、当時の公式サイトにコメントを寄せたことがありましたね。

 あとは2002年、当時は海外版のプレステ2でしかプレイできなかった『Grand Theft Auto:Vice City』をベストゲームの第1位にしたんですけど、その記事を、たまたま来日したロックスターゲームスのメンバーが目にして「日本のゲーム雑誌で第1位になってるぞ!」「俺たちのゲーム日本人にも受け入れられる!」という確信を持った、という話をロックスターの方から直接聞いたことがありますね。

明智光秀はドMである」で一点突破した『THE 落武者

――じゃあ、クソゲー部門にクレームが来る、というようなことは……?

林 これも、いくつかはあって(苦笑)、夜中にとあるメーカーの広報の方から電話がかかってきて「読みました……残念です」みたいなことを言われたりとか。

――いやいや、それは(苦笑)。

林 でも、実際に記事を読んでいただけるとわかるんですけど、僕たちが毎年選んでるのは「クソゲー」ではなくて「超クソゲー」なんですよ。アタマに付いてる「超」というのがポイントで、これは単行本の『超クソゲー』でも同じなんですけど、僕たちは単に面白くない、出来の悪いゲームは取り上げないんです。それは、単純に気の毒ゲームですから(笑)

 僕たちが取り上げる「超クソゲー」というのは「どこかしら突き抜けた魅力を持ったゲーム」のことなんです。「一点突破しているゲーム」というか、「この仕様、誰か止めなかったのかよ?」っていうような特殊な面白さを持ったゲーム(笑)。たとえば2007年に「超クソゲー」部門で第1位になった『THE 落武者』っていうゲームがあるんですけど。

――タイトルからして、すごいですね。

林 このゲーム主人公明智光秀なんですけど、光秀が落武者狩りと戦いながら宿敵・豊臣秀吉の打倒を目指すんです。途中、敵から攻撃を受けると弓矢とか刀とか槍とかが身体中に突き刺さりまくるんですよ。それで全身ハリネズミみたいな状態でプレイをしていたら、いきなり「怒獲武(ドえむ)神」が降臨して敵をブン殴りまくれる、という(笑)

――それは斬新ですね(笑)

林 公式設定では「怒獲武(ドえむ)システム」って名付けられてるんですけど、とにかく「明智光秀はドMである」っていう一点突破で成立してるゲームなんですよね(笑)。『THE 落武者』は「SIMPLE2000」っていうシリーズの1本なんで値段は2000円なんですけど、もう、2000円でこれだけ笑えたら確実に元が取れる。だから、毎年そういったゲームを積極的に評価しよう、というのが「超クソゲー」部門ですね。

プレステ4の最後を飾った『サイバーパンク

――というわけで昨年、2020年の「ベストゲーム」部門の第1位ですが……。

林 はい、第1位は年末に発売された『サイバーパンク2077』。いや、すごいですよ、『サイバーパンク』は。前に話したロックスターゲームスが2001年に発売した『Grand Theft Auto Ⅲ』以降、プレイヤーオープンワールドゲームの世界観に入り込みながらプレイするっていうスタイルメインストリームになりましたけど、その最新型にして、現在のところの究極型なんじゃないですかね、『サイバーパンク』は。

 舞台は「ナイトシティ」っていう猥雑な街なんですけど、そこを歩くだけで最高に楽しいんですよ。ポルノショップと食べ物屋さんと、あとは人体改造できるお店しかなくて(笑)、看板を見ると日本語だらけだったりして。

――『ブレードランナー』みたいな世界観ですかね?

林 そうですね。だからウィリアム・ギブスンだとかフィリップ・K・ディックとかのSFで僕たちがイメージしていた「これぞサイバーパンク!」という街が実際に目の前にあって、自由に歩き回れるんですから、そんなの最高に決まってるじゃないですか(笑)

 もちろんメインストーリーも存在するんですけど、それをほっといて歩き回るだけで楽しいし、とてもじゃないけど「ナイトシティ」の全貌を把握するのは不可能なんじゃないかな? それくらい膨大な箱庭世界が用意されてるんですよね。

――そのため……でもないと思うんですけど、発売後には大量のバグを指摘されましたよね。返金騒ぎも起こって、実際にPS Storeではダウンロード版の販売が中止になってますけど(2021年2月現在)。

林 それについて言うと、もちろんバグはホメられたものではないですし、僕自身、それを肯定するつもりもないんです。ただ、ここはデリケートな言い方になっちゃいますけど、バグを補って余りある魅力が『サイバーパンク』には、「ナイトシティ」にはある、ということですよね。

 奇しくも2020年プレステ5が発売されましたけど、それも象徴的だなあ、とは思っていて。だから2020年末に僕たちは、『サイバーパンク』によって、プレステ4のキャパシティがオーバードライブされる瞬間を見れたのかな、とも思うんですよ。「プレステ4の最後を華々しく飾ったタイトル」というか。そういう意味も含めて、『サイバーパンク』は2020年を象徴する1本だと思うんですよね。

あつ森』は「希望」のゲームだった

――これも2020年を象徴するゲームだと思うんですけど、『あつまれ どうぶつの森』は「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」の中でどのように評価されましたか?

林 いや、ランキング決定座談会でも紛糾したんですよ、『あつ森』の評価って。僕個人でいうと、実は『あつ森』が「ベストゲーム」の第1位でもありましたから。2020年、いわゆるコアなゲーマーではない人たちまで巻き込んで『あつ森』が大ブレイクした、というのは特筆すべきことだったと思うんです。

 ただ、そこがポイントでもあって、果たして新型コロナ禍という人類史に残るような特殊な状況がなかったとしたら、果たして僕たちは『あつ森』にあそこまで夢中になっただろうか? という話もあって。

――確かに『あつ森』を語る際、「ステイホーム」とは切っても切れないところがありますよね。

林 実は一番最初、2001年に(NITENDO)64で発売された『どうぶつの森』は、その年の「ベストゲーム」部門で第2位になってるんですよ。あの時点で『どうぶつの森』というゲームの魅力、本質的な面白さは完成してる。

 それを2020年型にアップデイトした『あつ森』が面白いのは当たり前で、そこに誰もが予期だにしなかった新型コロナ禍による「ステイホーム」という特殊な状況が加わって、全世界的に大ブレイクを果たした。

 でも、僕たちの提唱する「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」が「ゲームそれ自体の面白さを積極的に評価する」ものなのであれば『あつ森』の第1位は違うのではないか……というのがランキング決定座談会の結論ではあったんです。だから「限りなく第1位に近い選外」という意味で「次点」にしました。

――異論反論ある人も多そうですけどね。

林 いや、編集長の僕からし2020年の第1位は『あつ森』ですからね(苦笑)。ステイホームで外出もままならなかったとき、世界中の人たちの心に寄り添い、ある種の慰めになったのが『あつ森』だった。その事実は絶対に変わらないと思うんですよ。人によっては「たかがゲームじゃん」って言うかもしれないですけど、それは「希望」と名づけても構わないものだったんです、あのときの僕たちにとっては。

――それが、2020年の『あつ森』。

林 もちろん、いろんな意見はあって然るべきで、当然ながら「納得いかん!」という声もあるとは思うんですけど、雑誌『CONTINUE』としてはそう考えました、ということですよね。(#2に続く)

「マッチングアプリで出会った椅子に腰を振りまくる」「三角コーンを振り回す“木村拓哉”」突き抜けすぎた奇跡のゲーム へ続く

(林 和弘)

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