新型コロナウイルスの感染拡大によって、困窮者が増えるとともに、「闇バイト」と呼ばれる「特殊詐欺」や「給付金の不正受給」などの犯罪に手を出す人が増えているという。

特殊詐欺の金の流れる先には暴力団や半グレなど反社会的組織が控えている。目先の数万円に目がくらみ、一度手を出せば、人生は大きく狂うという。

反社対策に詳しい青木知巳弁護士は、闇バイトの危険性とリスクの大きさを強調し、その3つの理由を解説した。

「闇バイト」が蔓延しているらしい

指定暴力団の組員らによって、70歳の女性が1000万円をだましとられた特殊詐欺事件「住吉会事件」で、東京高裁は1月29日、会長ら最高幹部の責任を認め、計1210万円の支払いを命じた。

この事件では、「闇バイト」で受け子の役割をしていた男性も逮捕。実刑判決を受けるとともに、民事でも賠償を命じる判決がくだっている。

被害女性の弁護団員である反社や特殊詐欺の実情に詳しい青木弁護士は、「特殊詐欺の被害者の金は、暴力団や半グレなど反社に流れていきます」と指摘する。

コロナで増えている?

「闇バイト」とは、特殊詐欺の末端役や、2020年5月から始まった持続化給付金の不正申請など、報酬と引き換えの違法な仕事の総称である。

ほかにも、違法薬物の運び屋なども該当する。これは特定の日時や場所(駅のロッカー等)を指定され、出し入れし、あるいは引き渡す役割だ。

特殊詐欺の被害額は、1回に数百万〜1000万円と高額の場合もある。しかし、受け子など下っ端の「バイト」がもらえるのは、3〜5万円程度であり、実際には募集する側が収益の大半をもっていくケースがほとんどであるという。

これまで、特殊詐欺バイトを集めるには、人集め役(リクルーター)個人の人脈を利用して知り合いや後輩に声をかける手法がとられてきた。

「しかし、コロナで人の接触が少なくなる中でも、不特定多数に呼びかけられるSNSバイトを募る手段は効果的です。裾野が爆発的に広がり、悪事に手を染める入り口が格段に広くなりました」

実際、ツイッターなどのSNSで「闇バイト」と検索すれば、「高額」「闇バイト」「裏バイト」「運び」などの文言とともに、実態の不明なバイトの情報が多くあらわれる。

また、「お金がないのでバイトを紹介してくれませんか」などのSNSへの投稿に対して、「闇バイト」を持ちかけられるケースもあるという。

コロナの影響を理由とする解雇・雇い止めの人数は、累計8万7450人(見込みを含む)と厚労省が発表した(2月12日時点)

「困窮している方が多いのは事実で、ハローワークに行っても仕事がない、バイトもすべて落ちてしまった、生活ができないという相談が弁護士にも寄せられています。

SNSでの闇バイトの応募は、一般的な感覚からしても、あからさまに怪しい雰囲気があります。

それでも、学費や生活費に回すお金がないという深刻な状況があるため、バイトに応募する本人も、犯罪がからんでいると薄々わかりながらも手を出してしまうことになります」

「闇バイト」に手を出してはいけない理由。1つ目「簡単に抜けられない」

青木弁護士は「特殊詐欺の受け子役の場合、目先の3〜5万円をもらっても、ほぼ間違いなく刑務所に行くことになります。闇バイトの代償はとてつもなく大きいということを強く伝えたいです」と強調する。

「1つ目の理由は、特殊詐欺は厳罰化の傾向にあり、末端の受け子で初犯でも実刑になることがあります。実刑を避けようとしても、だまし取った金額に応じて、報酬を大きく上回る被害弁償を覚悟しなければいけません」

「1〜2回やって、やめよう」「やばくなったらやめよう」という考えも通用しないという。

「反社にとって、犯罪に加担する人材は貴重ですから、なかなか手放してくれません。

暴力団の組の名刺を見せたり、事務所に連れていったり、住所を聞いておいたうえで、いざとなれば、実家に行くぞと伝えたりして、圧力をかけてきます。犯罪にならない範囲で有形無形の脅しをしてくるのです。

そのうち、抜けられなくなって、何回か続けるうちに、必ず捕まることになります」

2つ目「検挙される可能性が高い」

「2つ目の理由は、闇バイトで募集される役割は、詐欺の受け子など実際に被害者と接することが多く、リクルーター役等とくらべて検挙されるリスクが極めて高いことです。いわば使い捨てで、捨て駒という言葉がふさわしいのです」

肝に銘じておくべきは、反社側は、応募してきた人に「君は捨て駒だよ」とは絶対に教えてくれないことだ。

「どんな詐欺でもそうですが、悪い人は、入り口では良い顔しか見せないものです。闇バイトの投稿には、『絶対安心』『高額保証』『物を運ぶだけの仕事です』などとは書いても、『逮捕されるかもしれません』『前科前歴がつきますよ』とは書きません」

3つ目「刑務所から出てきた後も社会復帰が難しい」

3つ目は、逮捕後の更生が難しいことだ。

「もともと困窮していた人が刑務所に入ると、外に出てきてもますます真っ当な仕事が見つかりにくくなります。それでまた、手っ取り早くお金を稼げる手段として、闇バイトに手を出してしまう。

また、刑務所のなかで反社とつながって、グループとのつながりができてしまうこともあります。

『目先のお金につられて人生を台無しにしないでほしい』と口を酸っぱくして言うのは、こうした負のスパイラルに取り込まれてしまうからです」

犯罪の加害者となってしまう前に

バイトに手を出す人をへらしたり、または闇バイト自体をなくしたりすることはできるのだろうか。

例えば、「自殺」とツイッターで検索すると、自殺防止に取り組む機関などが紹介される。それと同じく、「闇バイト」など関連ワードを検索したときに、注意喚起できる仕組みができるとよいのではないかと提案する。

SNS運営会社への働きかけのほかに、小中高大学など学校での教育現場で地道に伝えていくことも有益だと思います」

近ごろ、若者の間で、「手軽に稼げる」という行為に手を出すことは、犯罪であっても心理的ハードルが低くなっているように見えるという。

「楽して儲ける、汗を流さずに稼ぐことが格好いい。そのような風潮が、若者の間に広がっているのではないでしょうか。一見、楽してお金を稼いでいるように見えるユーチューバーの存在が身近になったこともあって、闇バイトに簡単に手を出すのかもしれません。

ただ、これは犯罪です。特殊詐欺の被害にあった高齢者は本当に苦しんでいます。捕まってから事の重大さに気付いても遅いのです。ユーチューバーとは違います。3万円で人生を棒に振らないでほしいです」

コロナ禍、若者に迫る「闇バイト」、大きすぎる代償「ほぼ実刑」「3万円で人生棒に振るな」