最近では大人にも人気のカプセルトイ。ガチャガチャなどと呼ばれるそうした玩具は、家電量販店などでもズラッと並んでいる様をよく見かけるほど、人気を集めている。そんな中「妹からの手紙 お兄ちゃんへ…」というガチャガチャが話題を集めている。

◆「萌え系」ガチャなのか?実際にやってみた

 やってきたのは秋葉原ガチャガチャの機械がズラリと並ぶ中にそれはあった。その中で「妹からの手紙」は、いわゆる「萌え系」のような佇まいを発している。200円を投入し、ひとつ回してみると出てきたカプセルの中には赤いギンガムチェックの紙。

 カプセルを開けて紙を見てみると、可愛らしい文字で「お兄ちゃんへ お久しぶりです」からはじまる手紙。手書きの生々しさによって、その手紙がどこかのお兄ちゃんでなく自分に語りかけられているように感じられる。

 内容は、付き合っていた彼氏と結婚することになった妹が、敬愛する兄へ思いを語るもの。昭和の人間なら、南こうせつの「妹よ」か、さだまさしの「親父の一番長い日」の気分だ。

 手紙の中で妹は、子供の頃によく兄妹で一緒に遊んだことや、両親の離婚の時も、泣く妹の手を強く握っていた兄の優しさを回想していく。

 その後、両親の離婚によって、兄は父と、妹は母と暮らすことになり離れ離れになってしまったという。そんな状況を知り、冒頭の「お久しぶりです」に改めてグッとくる。

 そして、妹の結婚式には両親も参加するため、久々に家族四人が揃うことが知らされる。ここまでで、兄を敬愛する妹からの気持ちと、結婚をきっかけに離れた家族が再会を果たす姿が頭に浮かび、ジワっとくる。

 ところが、最後の2行で物語は急展開。「お兄ちゃん…ちょっと聞きづらいんだけど…わたしたち、昔、おとうといなかった??」で手紙が終わる。

「は!?何!?怖っっ!!」である。

 この戦慄するようなギャップで話題を呼んでいるのだ。しかも、手書きと思われる文字が、リアリティをもって迫ってくる。

◆萌え系ではないガチャガチャに騒然とするネット

 妹からの手紙には、他にも種類があるようでSNSなどでもこれを引いた人の、戦慄している投稿が見られる。

 その中には、萌え系という予想どおりに「お兄ちゃん大好き」的な内容ではあるが「おにいちゃん他の子と一緒にいないで!あの子だれ?あの子だれ?一緒になにしてたの?おにいちゃん殺おにいちゃん許さない許さない許さない」という、ねじ曲がった愛情が殴り書かれているもの。

 さらに「去年、お母さんが階段から転落して亡くなったよね。それさ、実は私が突き飛ばしたんだ」という衝撃の告白を聞かされるものまである。

 購入者は、兄妹の間に巻き起こるサスペンスドラマの一端を、ランダムに垣間見ることになる。どの手紙も全容が書いていないため、読んだものの想像は猟奇的な方向へ進むばかり。この特有のゾクゾク感は、実際にこのガチャガチャを回した筆者もクセになりそうだ。

◆誰が書いているのか?

 油断している者を戦慄させるような内容で、話題となっているこのガチャガチャ。いったい誰が書いていて、本当に全て手書きなのか。運営元である株式会社カプセルコーポレーションの代表取締役が江遠秀彰氏に取材した。

 まず気になるのが、本当に若い女性が書いているのかという部分。これについて江遠氏は「だいたい20代~40代の女性に書いてもらっています」と話す。若い女性を想像していた方はガッカリされたかもしれないが、よく考えて欲しい。素敵でファンタジーな世界観のあのジブリだって、世界的に可愛がられているあのネズミキャラクターだって、ひとりのおじさんの脳内から生み出されている。ファンタジーファンタジーとして、真っ当に享受しよう。

 書いている人の人数について「普段は、1人とか2人なんですけど、たくさん生産しなくてはいけない時は5~6人のパートさんにお願いしてますね」と江遠氏。手間と経費を惜しまず、手書きのために人員を割いているからこそ、生々しい手紙が生まれるのだろう。江遠氏は「卸に出している分で、印刷しているものもあります」としながらも、シークレットのものは全て手書きとのことで、是非とも手書きのものを手にしたい。

 他に類を見ないガチャガチャに、ネットでの反応も尽きないが、その反響について同氏は「取材依頼は多いですよ。それで、取材された情報が出た後は結構出ますね」と話す。

女の子からのラブレター『ききからの手紙』の裏話

 取材を終えた筆者の電話に、江遠氏から折り返しの電話がかかってきて「話しておかないといけない部分があります」とのこと。内容を聞くと「この『妹からの手紙』の前に、『ききからの手紙』という商品も出してるんですよ」と江遠氏。

 話によれば、こちらは妹からの手紙のような狂気に満ちたものではなく「きき」という女の子からのラブレターなのだという。萌え系を求めるならこちらということだ。この「ききからの手紙」は、かなり具体的で10代の頃の甘酸っぱい気持ちが押し寄せてくるような文面になっているが、江遠氏は次のように話す。

「これ、文章は私が考えてるんです。夜中にラブレターを書くテンションで考えてます(笑)」。

 江遠氏はもしかすると、ジブリネズミキャラクターの生みの親と並ぶくらいにファンタジーな方なのかもしれない。また「妹からの手紙」に関しては、文章を考えているのは誰かについて回答はもらえなかったが、推して知るべしである。

おっさんが考えたラブレターなんか」と感じる方も多いかもしれないが、江遠氏はこう続けた。

「うちの会社の飲食事業部でやっている、メイド喫茶メイドさんに実際に書いてもらってるんですよ」。

 なんとこちら(ききからの手紙)は、メイドさんの直筆だという。実際に手書きすることで、見るものに迫るリアルさを生み出す秘密は、ここから「妹からの手紙」にも受け継がれていた。

「妹からの手紙」と「ききからの手紙」のどちらにもある「なんかクル感じ」は、奇抜な発想と手書きという工数を惜しまないこだわりに裏打ちされたものだった。ガチャガチャコーナーで見かけたら、体感してみてはいかがだろうか。

※冒頭で紹介した「妹からの手紙」は、株式会社カプセルコーポレーションとは別会社の商品であることが記事公開後に判明。調査不足であったことをお詫びすると同時に、この商品の反響の大きさを改めて実感した。(3/2追記)

<取材・文/Mr.tsubaking>

Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

「お兄ちゃんへ お久しぶりです」からはじまる手紙