大阪府内にJRと大阪メトロとで同じ「高井田駅」があります。同一の場所ではなく、互いに地理的に無縁な2つの駅ですが、なぜ名前が同じなのでしょうか。実は興味深い共通点があります。

遠くても何か運命を感じるふたり

大阪府内には「高井田」という名前の駅が異なる場所に2つあります。ひとつは東大阪市にある大阪メトロ中央線の駅、もうひとつは柏原市にあるJR大和路線関西本線)の駅です。この2駅は直線距離で13.5km離れています。

同名の駅が別に存在する場合、一般的にはあとに生まれた駅が、旧国名を冠したり(和泉橋本など)、会社名を冠したり(近鉄宮津など)、「〇〇駅」に対し「〇〇市駅」とするなどして、混同を避ける措置がとられてきました。

また、異なる場所に漢字も読みも同じ駅が複数ある例は、大久保や長田、春日井などいくつかありますが、「同じ都道府県内」で、「別の地区を由来」として生まれた例は他に見当たりません。たとえば長田駅神戸電鉄神戸市営地下鉄大阪メトロの3か所にありますが、最初の2駅は離れているものの同じ神戸市長田区を由来としています。

実は2つの高井田駅、ほぼ同時に開業しています。大阪メトロ高井田駅は1985(昭和60)年4月5日、JR(当時は国鉄)の高井田駅はわずか5か月後の8月29日です。

開業のタイミングが近かったため、どちらもまさか同じ駅名で設置が進んでいるとは思いもよらなかったということでしょうか。あるいは、互いにさほど離れているわけではないため、降り間違ってもさほど大事に至らない、という判断もあったのでしょうか。その後、改称を要望する動きもありません。

高井田駅」の由来について大阪メトロJR西日本に確認したところ、どちらも所在地の地名を冠したとのことで、駅名が重なることを認識していた、あるいは互いに調整を行った、といった記録は残っていないということでした。

さて、時は下って2008(平成20)年、JRおおさか東線の放出(はなてん)~久宝寺間が開業し、交差する大阪メトロ中央線高井田駅付近にも新駅が設けられます。この時、おおさか東線ではJR俊徳道、JR河内永和、JR長瀬と、他社線の駅名に「JR」が冠されて区別されました。しかしこの駅は大和路線高井田駅とは区別する必要があるとのことで、「JR高井田駅」とならず「高井田中央駅」となっています。

大阪メトロ中央線とJR大和路線の両方に同じ名前の駅がある(恵 知仁撮影)。