長年にわたって放送された「あいのり」(フジテレビ系)、「恋のから騒ぎ」(日本テレビ系)が終了した2010年前後は恋愛バラエティーがほぼ消滅。その理由に「若年層のテレビ離れ」が挙がっていたことから、「この先、テレビ番組として復活することはないだろう」とも言われていました。

 実際、恋愛バラエティーはその多くがABEMAなどで配信されるネットコンテンツとなり、さらに昨年、「テラスハウス」(フジテレビ系)が出演者の死去に伴い打ち切り。2017年に復活して、昨年6月まで放送されていた「あいのり」もコロナ禍で続編制作は不可能と言われていました。

 しかし、ここに来て、ジワジワと復活のムードが漂い始めているのです。

 その兆しが見られたのは昨秋。恋愛トークバラエティー「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)、芸能人がガチンコ合コンをする「ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”」(同)がスタートし、さらに「林先生の初耳学」(MBSTBS系)でも、芸能人がマッチングアプリに挑む恋愛ドキュメントが繰り返し放送されていました。

 年をまたいだ今冬、「あざとくて何が悪いの?」で、乃木坂46の新センター・山下美月さんを主演に据えた連続ドラマがスタート。さらに今月23日、「幸せ!ボンビーガール」(日本テレビ系)で、恋愛リアリティーショー「幸せ!ボンビーLOVE ~こんな私でも好きになってくれますか?~」もスタートしました。

 すっかり軌道に乗って、毎週ネット上をにぎわせている「ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”」、昨年7月から放送されている恋愛トークショー「中居大輔と本田翼と夜な夜なラブ子さん」(TBS系)もジワジワと盛り上がりを見せ始めています。

 なぜ、今、恋愛バラエティーが復活の兆しを見せているのでしょうか。

今のテレビに足りない中毒性と連続性

 恋愛バラエティー最大の魅力は「気になって誰かと話したくなる」「早く続きが見たい」という中毒性と連続性。スマホを触りながらの消極的視聴の人が増えた中、恋愛バラエティーは「見るだけでなく、ネット上に書き込む積極的試聴の人が多い」という強みがあります。

 バラエティーは週替わりのテーマで、ドラマも一話完結が多数派となった今、その中毒性と連続性は「今のテレビ番組に最も足りない」と言われるもの。さらに視聴者層の中心はスポンサー受けのいい若年層だけに、どのテレビ局も「できれば放送したい」と思っているはずです。

 また、恋愛バラエティーはネットでの視聴も見込めることから、「ネットCM収入を得る」という期待もあるほか、SNSとの親和性も大。例えば、2月25日の「ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”」では、放送前から多くのネットニュースで武井壮さんと安藤美姫さんが参加者の誰かとカップル成立したことが予告され、反響を集めていました。恋愛バラエティーは放送前、放送中、放送後でネットニュースになりやすく、それがシェアされることで大きなPRの効果が得られます。

 メリットは収入やPRだけではありません。恋愛バラエティーは他のジャンルと比べて制作費が安いことで知られ、出演者やセットなどの費用を抑えることが可能。各局がコロナ禍で広告収入減に苦しんでいるだけに、コストの安さは恋愛バラエティーを増やす理由になり得るのです。

恋愛ドラマのヒットが追い風に

 ドラマに目を向けると「恋はつづくよどこまでも」「私の家政夫ナギサさん」「この恋あたためますか」などTBSの恋愛ドラマが次々にヒットし、それを受けて他局でも増えてきました。恋愛ドラマの成功で「今でも恋愛は若年層の心をつかめる」という確信を持って恋愛バラエティーの制作に挑めるようになったのではないでしょうか。

 一方、恋愛バラエティーの出演者たちは基本的に「出たい」という人がほとんど。恋愛トークショーなら、視聴者の共感をつかんで好感度を上げられますし、恋愛リアリティーショーなら、「出て、顔と名前を売りたい」という若手タレントが多いそうです。

 視聴者と出演者のニーズがあり、スタッフにメリットがある恋愛バラエティーは、いいことずくめのように見えますが、ふとした言動で批判を受けやすいもろ刃のつるぎ。出演者を誹謗(ひぼう)中傷から守り、心のケアをするなどのフォローが求められます。

 また、質よりリアリティーの高さの方が重視されやすい時代であり、逆に「やらせ」と言われないために過剰な編集を行わないことも重要でしょう。コロナ禍で、現実の恋愛が進みにくい今だからこそ、今後の恋愛に希望を持てるような内容が求められているのではないでしょうか。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

「あざとくて何が悪いの?」MCの田中みな実さん