わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。


◆香りは衣服の一部



香りは衣服の一部(※画像はイメージです



 日本語では「香水をまとう」と言います。英語でもwearを、フランス語でもporter(プレタポルテポルテと同じ)というように、香水をつけることを表現するのに、衣服を着るときに使う動詞と同じものを使います。


 洋の東西を問わず、香りというものは、昔から衣服の一部として考えられてきたのでしょう。多くの服のブランドでは香水も売っています。




 そのせいでしょうか。洋服を作る人たちは、何かしらの香りをまとっている人が多いように感じます。それぞれに自分の香りというものを持っていて、その香りをつけて職場に来ても、誰かからとがめられることはありません。


◆はやっている香水も考えものと思った理由
 皆さんもご存知のように、香りは記憶と深く結びついています。歌うたいの彼がドルチェ&ガッバーナで何かを思い出すように、香りは、時には誰かに何かを思い出させます。



ドルチェ&ガッバーナで何かを思い出す…瑛人『香水』のアルバム(※画像:Amazonより) 私の場合はカルバンクラインのエタニティでした。


 私が働いていたアパレル企業にいた、部下に暴言を繰り返していた最悪の女性の上司がいつもつけていたのがエタニティ。そのため、私は道ですれ違う誰かからエタニティの香りが漂ってくるたびに、いちいち具合が悪くなったのでした。


 そのときに思いました。あまりにもはやっている香水も考えものだな、と。


ステイホームでの日常、香水一吹きで気分転換
 それ以来、私はもう日本では廃盤になった香水を使うか、そうでないものの場合は家にいるときにこっそりと使うか、そのどちらかでやり過ごしてきました。


 それで足りていたのですが、足りないと思ったのが去年の緊急事態宣言が出たとき。


 外出を極限まで減らし、毎日、家の中で代わり映えしない日々を過ごしていると、気分転換に香りがとても役に立つということに気づきました。フラットな日常が、香水を一吹きするだけで、特殊フィルターをかけたかのような、鮮明な色合いに変化します。


 もうちょっと違う香りで、今の日常生活に合ったものが欲しいな、そのとき私は思いました。というのも私が最近、気に入って使っていた香水はたいそうロマンチックな香りで、近所のコンビニへ買い物に行くときには、不似合いなことはなはだしかったからです。



香水を一吹きするだけで、フラットな日常が鮮明な色合いに変化する(※画像はイメージです



◆小さな会社が小ロットで作っているニッチフレグランス
 今は不必要な外出もできないし、どうしようかと思ったとき、ネットで検索してみると、ニッチフレグランスを扱うショップが数種類の香りのムエット(試香紙)を送ってくれるサービスをしている、ということがわかりました。



ニッチフレグランスを扱うショップNOSE SHOP」の通販サイト ニッチフレグランスとは、大手化粧品メーカーの大量生産品よりもずっと小さな規模の会社が、小ロットで作っている香水のことです。現在、たくさんのブランドがあり、ニッチフレグランス沼の住民でもない限り、すべてを知り尽くすのは困難でしょう。


 そのときから、ニッチフレグランスのムエットを片っ端から送ってもらう日々が始まりました。


 けれども、中にはセクシーすぎたり、変な香りのものもあったりと、なかなか思うようなものが見つかりません。想像以上に沼は深く、このままではお目当てのものにたどりつかない、そう気づいたときに、そうだ、日本に関連するエリアを探索しようということで、出合ったのがçanoma(サノマ)の香水です。




◆日本の感性とフランスの調香の技術の掛け合わせ
 çanoma(サノマ)は去年ローンチしたブランドで、4本の香水はブランドのファウンダーの渡辺裕太さんが大学院卒業後、金融関係の仕事をした後、香水業界で働く夢を実現するために渡仏し、「日本の感性と、フランスの調香の技術を掛け合わせて、日本人でも日常使いできる香水を作るため」クラウドファンディングしてできたもの。


 香りのディレクションをするのは渡辺さんで、実際のプロダクトを作るために調香するのがフランス人調香師のジャンミシェル・デュリエ氏です。



渡辺裕太さん(左)とジャンミシェル・デュリエ氏(右)を紹介するページ(※画像:NOSE SHOPのサイトより)



 4本の中で私が気に入ったのが「4-10 乙女」。


 説明を読むと、ラベルにあるマークは源氏香の「乙女」の図であるとのこと。「乙女」といえば、夕霧と雲居の雁の恋と、その別れの物語が描かれている帖です。A・ウェイリー版の源氏物語をちょうど読んでいる最中だったので、この趣向も気に入りました。



çanoma(サノマ)「4-10 乙女」(オードトワレ)30ML 8,250円(税込) ◆単調な1日を、起承転結のある物語に変えてくれる香り
 そうして今、この香水を毎日つけていますが、これならば近所のコンビニでも、不似合いなんてことはありません。小田急線の混雑した車内でもきっと平気でしょう。そして私がよく行く江の島の海辺のカフェにも似合いそう。


 鮮烈な出会いのようなトップノートから、懐かしく切ない思い出のようなラストノートまでが、何も起こらない単調な1日を、起承転結のある物語に変えてくれる、これはそんな香りです。



 何よりも、これなら街で誰かとすれ違っても、誰かに同じ香水の誰かを思い起こさせてしまう可能性は低いでしょう。だって、みんながこの香水を使っているなんてことは、たぶんないから。


 ところで、ジャンミシェル・デュリエ氏は著名な調香師で、過去にはドルチェ&ガッバーナの香りも作っているとのこと。このお二人による次の新作も、今からとても気になっています!



çanoma(サノマ) 4-10 乙女(オードトワレ) 30ML 8,250円(税込) 100ML 19,250円(税込)



<文/小林直子>


【小林直子】ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に



香りは衣服の一部 (※画像はイメージです)