新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延し始めてからほぼ1年が経つ。

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 日本を含めた多くの国では感染者数と死亡者数が減少しているが、社会全体に目を向けると直視しなくてはいけない別の問題が浮上してきている。

 コロナを抑え込むことが最重要課題であることは論を俟たないが、特に米国などでは大恐慌以来と言われるほどの社会現象が起きている。

 人口減少だ。

 それは日本時間2月23日時点でコロナによる死亡者累計が50万人を突破したという事実だけでなく、人口構造の変化を伴うことですらある。

 人口減少について述べる前に、コロナだからこその人口動態の変化について記しておきたい。

 実はコロナの影響によって、多くの米市民が都市部から去っているという現実がある。コロナというパンデミックによって都市部の活力が失われてさえいる。

 米大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーがまとめたリポートによると、都市からの流出者と都市への流入者の比率はニューヨーク市で27%、サンフランシスコ市が24%、ボストン市が13%、ロサンゼルス市とシアトル市がそれぞれ11%で、流出者の方が高い割合だった。

 これは2019年と比較した2020年の数値である。

 こうした都市部での人口減少の要因はコロナによるリモートワークなどにより、勤務先に近い地域に住む必要性が薄れつつあることを意味している。

 米オンライン誌「スレート」は次のように現状を記している。

「米都市部に居住することは、多くの人にとってもはや魅力的ではなくなってきている」

ズームで会議を行える利便性に気づいた人たちは、あえて家賃の高い都市内部に住居を構える必要がなくなったのだ。コロナ収束後、元の生活に戻りたい人がいるのだろうか」

 都市部では賃貸マンションの空室が目立ち始め、店舗の閉店も目立つ。

 ニューヨーク市ブロードウェイで40年近く営業してきたコスチューム販売店「ハロウィーン・アベニュー」が1月初旬に店じまいした。同店をよく利用していた客がニューヨークポスト紙に述べている。

「この街は『決して眠らない』と言われてきた。だから毎日、どこかでパーティが行われ、突飛なコスチュームも必要だったが、とうとう同店も閉店となった。ミュージカルの出演者も困るに違いない」

 さらに同市ミッドタウンで1924年から続いていた歴史的なホテルルーズベルトホテルも昨(2020)年10月に閉館した。ホテルの広報担当がCNNの取材に答えている。

新型コロナウイルスによる未曾有の経営環境と長引く不確実性により、同ホテルオーナーは閉館という判断を下しました」

 コロナという健康上の問題が、市民生活と経済環境をマイナス方向へ変化させた典型例である。

 さらに市民が都市部から去ることで、サービス部門が衰退し、失業者が増え、税収も減るという流れになっている。

 前出の「スレート」誌は書いている。

「米国の都市人口が急落するということは、過去30年の都市復興モデルが失われることであり、移民とヤッピーが死を迎えるということに等しい」

「今後、この現実に立ち向かわなくてはいけない」

 米国ではこれまで都市の拡充モデルの基礎として、人口増が組み込まれていた。その結果、米国は先進国の中では異例とさえいえる「人口が増え続ける国」として知られていた。

 人口増を活力にして経済を活性化し、新たなモノを創リ出す流れができていたが、今その流れが変化しつつある。それが冒頭で触れた人口減少である。

 コロナによって都市部からの人口流出が明確になる中、米国の人口も以前のような伸び率では増加しなくなっている。

 2010年から2020年の10年間で、全米の人口増加率は約7%でしかない。これほど人口が増えないのは大恐慌以来といわれている。

 7%も増えていると思われるかもしれないが、10年間での7%である。

 ここで人口統計の分野で使われる合計特殊出生率を持ち出したい。

 合計特殊出生率というのは男女比を1対1として、女性が出産可能年齢の中で出産する子供の平均値を算出したもので、2であれば人口は横ばいを意味する。

 この数値が2以下になると、人口は減少していくことになる。

 米国の同率は2006年が2.06だったが、 2015年には1.88となり、減少へと転じた。

 2020年はさらに減って1.78。つまり米国の人口は減少へと転じているのである。

 ただ合計特殊出生率が2を割っていても、米国の実質的な人口は毎年少しずつ増えている。

 それは移民を受け入れているからである。

 これまで、年平均で約100万人が移民として米国にやって来ている。最も多いのが中国からの移民で約15万人。次いでインド(13万人)、メキシコ(12万人)、フィリピン(4.6万人)となっている。

 米国の国政調査局によると、2021年2月26日現在の人口は3億3010万4440人。その中での移民の割合は13.7%。

 そうした移民を含めても、2019年から2020年にかけて、米国の人口増加率は0.35%でしかない。

 首都ワシントンにある大手シンクタンク、ブルッキングス研究所のウィリアムフレイ上級研究員は「0.35%という増加率は少なくとも西暦1900年以降では最も低率」と述べた後、原因を「まずコロナを指摘しなくてはいけない。実質的な死亡者数だけでなく、新規の移民数も減少した。さらに高齢化する社会構造もある」と指摘した。

 米国では長い間、人口増加が経済成長の一因であり国のエネルギーの源泉と言われてきた。

 ただトランプ大統領が移民の受け入れに消極的だったことから、移民の受け入れ割合がこれまでのほぼ半分にまで下落。その代わり、カナダの移民受け入れ割合が増えることになっていた。

 しかし、ジョー・バイデン大統領が発表した移民政策を眺めると、トランプ政権時代から方向展開した寛容な移民政策が目を惹く。

 不法移民に対しても市民権取得の道を開く考えで、米国が伝統的に築いてきた本来の寛容な移民政策に戻っている。

 それにより、どこまで米国の人口増につながるかは不確かだが、少なくともバイデン政権下では、米国らしい寛容さが戻ってくるかもしれない。

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