現在放送中のTBS系連続ドラマ「天国と地獄~サイコな2人~」(毎週日曜 後9:00)で、主演の綾瀬はるかさん演じる主人公の同居人・渡辺陸役を務める柄本佑さん。陸は綾瀬さん扮(ふん)する刑事・望月彩子の家に居候するヒモ男でありながら、彩子にとって唯一の心のよりどころとなり、そばで支える役どころです。

 柄本さんは昨年、ドラマ「知らなくていいコト」(日本テレビ系)に出演。吉高由里子さん演じる主人公の元恋人・尾高由一郎役で演じた、色気のあるいい男ぶりに魅了される女性が続出し、話題を集めました。

 近年、ヒロインに近しい役どころを務め、作中で存在感を放つ柄本さんの魅力について、テレビドラマに詳しいライターの田幸和歌子さんに聞きました。

怪しげな雰囲気を自然に

 柄本さんは2003年公開の映画「美しい夏キリシマ」で映画初出演ながら主演を務め、デビュー。同作での演技が評価され、「第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞」「第13回日本映画批評家大賞新人賞」を受賞します。

 2012年に女優・安藤サクラさんとの結婚を発表。以降、ドラマ「天皇の料理番」(TBS系)、NHK連続テレビ小説あさが来た」(2015年度後期)などの話題作に出演し、2018年には「素敵なダイナマイトスキャンダル」「きみの鳥はうたえる」の2本の主演映画が公開されました。

 そして、昨年、日本テレビ系連続ドラマ「知らなくていいコト」に出演。同作での“いい男ぶり”が話題になった柄本さんの演技について、田幸さんは「柄本さんのミステリアスな雰囲気が見事にハマった役だった」と評します。

「表情から感情が読み取りにくいミステリアスな存在で、既婚者でありながら、元恋人の吉高さん演じるケイトのことを気にかける大人な男性、余裕のある雰囲気がとても魅力的に映っていました。大人の色気を醸し出し、包容力のある頼もしい存在の尾高にハマる人が増え、“尾高沼”とも称されていました」(田幸さん)

「当時、重岡大毅さん演じる野中のクズ男ぶりも話題になりましたが、野中とはあまりにも対照的だったため、尾高のキャラクターがより魅力的な存在に映ったのかもしれません。世の女性たちが魅了されたのも納得できる、抜群のかっこよさでした」

 今クール最大のヒット作となっているTBS系連続ドラマ「天国と地獄~サイコな2人~」での柄本さんの存在や役どころについて、田幸さんはこう話します。

「綾瀬さんと高橋一生さんの役が入れ替わることが今作の目玉であり、視聴者もその点に注目していた一方、柄本さんも何かしら重要な役どころを務めるはずだと期待されていましたが、第1話ではそこまで出番が多くありませんでした。しかし、回を重ねるごとに印象が強くなり、一部で『真犯人では?』と怪しまれるくらいの存在になっています」

「第5話で彩子への実直な思いを告白し、疑惑は晴れたかのようにも思いましたが、頭が切れるキャラクターなのに、2人の入れ替わりをすんなり受け入れたことなど、いまだに謎めいた部分も多くあるので本当の姿がまだ分からず、最後まで目が離せない存在です。そんな怪しげな雰囲気を自然に醸し出せるのは、柄本さんの特徴の一つでしょう」

 田幸さんによると、柄本さんはミステリー作品で力を発揮するといいます。

「『知らなくていいコト』『天国と地獄』に共通するように、ミステリー要素のある作品でこそ大きな力を発揮します。ミスリードを誘うような謎めいた存在で、登場人物の中でも思わず気になってしまうようなキャラクターを演じるのがうまい役者さんです」

ヒロインに対する心情の変化、巧みに

 柄本さんとヒロインの関係性についても田幸さんは分析しています。

「見た目からもクールな印象が強いですが、ヒロインに対して、実は熱い思いを胸に秘めていたりと心情の変化やギャップを見せるのが上手だと思います。物語の序盤はその思いが分かりにくいですが、話が進むにつれて徐々に人が分かったり、ヒロインとの関係性が見えてくるような温度変化の見せ方が巧みなのです」

「この温度変化は『知らなくていいコト』『天国と地獄』の他、朝ドラあさが来た』で演じた眉山惣兵衛役でも垣間見ることができ、ヒロインや周囲の人々に対する心情や関係性の変化を見事に演じていました」

 田幸さんは「天国と地獄」で共演する柄本さんと高橋さんのバディーものを見てみたいと期待を寄せています。

「柄本さんの大人な恋愛ものをまた見てみたいと思う一方、『天国と地獄』での柄本さんと高橋さんの並びがすごく魅力的だと感じています。声の相性や体格差のビジュアルなどが非常にマッチしていて、2人の横並びの構図が画面に映えるのです」

「この2人のBL(ボーイズラブ)作品、もしくはバディーを組んだ作品も見てみたいです。表面上はいがみ合っているけど、胸の奥では互いに信頼しているような関係性で、また、2人の共演に期待しています」

オトナンサー編集部

柄本佑さん(2016年2月、時事通信フォト)