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 アメリカ、カリフォルニア大学の研究によると、十代のいじめのほとんどは友人間で発生しているという。ここでいう友人とは真の友人ではない。

 さも親しいふり友人(フレンド)のふりをして近づいてくるが、心の底では利用するだけの存在としかみなしていない敵(エネミー)、フレネミーのことである。

 一般的にイメージは、弱い者いじめの印象が強いが、実際には対等の立場に見える友人の中にこそいじめの加害者が潜んでいるというのだ。

【画像】 十代のいじめは友達同士の間で起きるという調査結果

 カリフォルニア大学デービス校の社会学者、ロバートファリス教授は、他の大学の社会学者と共に、ノースカロライナ州で暮らす9年生と10年生(日本の中学3年生、高校1年生に相当)の学生3000人を対象にいじめ調査を行った。

 その結果、新学期(秋学期)には友達だったが、その学年中に交友関係が"終わった"ケースでは、春学期(新学期から半年後)に両者間でいじめが起きている可能性が3倍も高いことが明らかになったという。

 注目すべきは、その学年中に交友関係が”終わらなかった”ケース、つまり相変わらず友達付き合いが続いているケースだ。

 こちらのケースの場合、友達同士であるにもかかわらず、いじめが起きる可能性がなんと4倍も高かったのである。

十代のいじめは友達同士で多く発生している

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共通の友人がいることでフレネミー効果が高まる

 もう1つ興味を引かれるのは、いじめの加害者と被害者には、共通の友人がいるという特徴があることだ。

 交友関係がまったく異なる学生同士に比べると、交友関係がほとんど同じ学生たちの間でいじめが起きる可能性は3倍も高い。また同じ被害者をいじめている学生たちの間でも、いじめが発生する可能性が2倍になる。

 いじめが起きやすいのは、所属しているグループがまったく違う学生の間ではなく、同じグループに属する学生同士だったのだ。

友達グループ間で起きやすい、いじめ問題

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いじめは思春期における承認欲求の表れ

 従来、いじめの原因になるのは、加害者が抱える心理的な飢餓感・情動の制御不全・共感の欠如・家庭の問題といったことであると考えられてきた。

 しかしファリス教授によれば、いじめの動機は「人気者になりたい(自分が優位に立ちたい)」という承認欲求も関与しているという。

 それは自分が抱える問題への反応などではなく、ライバルを蹴落としたり、優越感を得るための手段なのだという。

 いつも一緒にいる友達は、クラスや部活などでは競い合わなければならないライバルになってしまう。これが衝突やいじめのリスクを高めるのだそうだ。

思春期におけるいじめの構造

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いじめ防止の鍵は社会的な報酬をなくすこと

 こういった点から、ファリス教授らは、加害者が抱える問題を解決するような対策では、いじめはなくならないという。

 そうではなく、いじめの加害者になることで、人気者になってしまう(あるいはそう思わせる)現在の状況に働きかけなければならないという。

 人気が大きな意味を持つ年齢では、いじめによって社会的な報酬を得られるのならば、そのために親友すら裏切る者が出てくるからだ。

 ファリス教授によれば、キャンプや訓練といった課外活動で、人気の重要性を低めるようにすれば、フレネミー(友達が敵になるような状況)を減らせるのではないかとのことだ。

 この研究は『American Journal of Sociology』(20年11月付)に掲載された。

References:Most Teen Bullying Occurs Among Peers Climbing the Social Ladder | UC Davis/ written by hiroching / edited by parumo

追記:2021年3月の記事を再送してお届けします。

 
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10代のいじめのほとんどは友人間で発生。友人のふりをして近づいてくる敵「フレネミー」が関与(米研究)