居住地はどこか、車は何に乗っているのか、子どもはお受験するのか――。巷には自分が相手より優れている、イケていると必要以上にアピールする「マウンティング」で溢れていた。しかし、コロナ禍によって顔を合わせてコミュニケーションをとる機会が激減。マウンティングも減るのかと思いきや……そうでもないらしい。いま、コロナ禍ならではのマウンティングコロナマウンティング)が登場しているという。

コロナ禍マウンティング「有名メーカーマスクで1枚3000円」

 東京都内の運送会社勤務・野田順一さん(仮名・40代)の話。

「財布はボッテガで時計はウブロ、と会う人に自慢する同僚(40代・男性)がいたのですが、コロナ禍の現在、彼が自慢しているのはマスク。有名スポーツメーカーのもので1枚3000円もするらしいんですよ。

 自分を含め他の社員はみんな、安くて洗って使えるものとか使い捨てタイプを使っているのですが、『衛生意識が低い』とか『3個も買った』と触れ回っているんです。でもあいつ、思いっきり鼻を出して着けていて、みんなから引かれまくってます」(野田さん)

 つい先日も別の社員が「空気清浄機を買った」という話を聞いて、間も無く「次亜塩素酸水の除菌ができる清浄機を買った」と騒いでいたんだとか。

笑えない人脈自慢「俺の周り、コロナの人たくさんいますよ」

 清々しいほどのマウンティングだが、都内の一部上場企業の人事部・小椋健太さん(仮名・30代)が経験した「コロナマウンティング」は笑えない

「都内の感染者数が何百人も出ているのに、コロナに感染したとか、体調がおかしいとかいう社員が、うちからはほとんど出なかったんです。我が社の人間は気をつけているな、と上司が話していたところにやってきたのが、人脈マウンティングをすることで有名な部下でした」(小椋さん、以下同)

 普段から「大企業幹部と飲んだ」だの「タレント合コンした」だの、コネクション自慢が絶えなかった。そんな部下が、感心する上司に向かってこう言い放ったという。

「俺の周り、コロナの人たくさんいるんですよね、って。どこの会社の誰が感染しているとか……。そこまでして人脈マウンティングしたいのかと呆れました。冗談で言っているのかと思いきや、どうも部下の情報が本当だったぽくて。実際に取引先にも感染者が出たようです。ただ、こういうことをあまりペラペラと言うのは信用にかかわるのでどうかと思います」

リモート会議で背景にゴージャスなインテリア

 最後は、無理なマウンティングによって人生をかけて演出してきたことが全てオジャンになった例。関西地方の化粧品メーカーに勤務し、現在は仕事のほとんどがリモートワークという庄野梢さん(仮名・30代)が話す。

「一部の女性上司たちのリモート会議で映る背景が、日に日に豪華になっていったんです。最初は殺風景な背景だったのに、いつの間にお花が飾ってあったり、カーテンがゴージャスなものに変わったり。顔にライトを当てておきながら“すっぴんで何もしてないの”と言い合うのが、“お決まり”になったほどです」(庄野さん、以下同)

 ここまではよくある「マウンティング」だが、自身を「お嬢様」と言って憚らない直属の上司(40代・独身)の背景には目を見張った。

「実家は裕福で父親は経営者、母親はお花とピアノの先生をやっていて、自分も両親も方言を使ったことがない、というのが彼女の口癖でした。コロナで完全リモートワークになり彼女は実家からリモート会議に参加していました。頭のすぐ上にシャンデリア。その後ろには銀の燭台(しょくだい)があり、ろうそくが燃えていました」

 誰もがお嬢様というのは本当だったのだ、と思った。

◆嘘がバレることも…

 しかし背景の引き戸が「ガタタ」と音を立てたかと思うと、そこに映ったのは上司の母親と思しき女性。

「上司に向かって『あんたパソコンに向かって何をブツブツいいよんの』みたいな、思いっきり方言で話しかけていたんです(笑)

 庄野さんは「答え合わせのような反応」と笑う。マウンティングを取りたくてたまらない、という人がいるかもしれないが、コロナ禍のような「本当のピンチ」の時に空気を読まずにやってしまうと、思わぬ形で足元を救われるかもしれず、注意が必要だ……とでも言っておこう。<取材・文/森原ドンタコス