今回紹介する、ゆっくりするところさんが投稿した『【ゆっくり解説】毎日ラジウム水を飲み続けた男「エベンバイヤーズ」の悲劇』では、音声読み上げソフトを使用して、20世紀初頭に販売されていた「ラディトール」という放射性物質を含んだ薬品を摂取し続けたある男性の悲劇について解説していきます。


当時「放射線は体に良いものだ」と考えられていた

魔理沙
 これはエレン・バイヤーズという、とある御曹司の話だ。1880年、実業家で鋼鉄王であるアレクサンダー・バイヤーズの息子、エベン・バイヤーズは生まれた。バイヤーズはアメリカのセントポールスクールとイェール大学で教育を受けて、スポーツも万能なプレイボーイだった。

 バイヤーズは大学を出た後、父親によって創設された製鉄会社の会長に就任した。バイヤーズが会長になった1920年代は「狂乱の時代」と言われるほど、未曾有の好景気が訪れていた時代でもあった。

霊夢:
 完璧すぎてもう何も言うことなしって感じね。

魔理沙
 だが1927年バイヤーズは寝台列車ベッドから転落し、腕を打撲負傷してしまった。バイヤーズはそれ以降、持続的な痛みに苦しめられることになってしまった。腕の痛みがなかなか治らなかったバイヤーズは、ウィリアム・ベイリーという医師に相談した。その医師はバイヤーズに自分が製造した「ラディトール」という飲み薬を勧めた。このラディトールというのは、ベイリー医師が製造した特許薬だった。

 バイヤーズはベイリー医師の指導を受け、ラディトールを1日に数回ほど服用しはじめた。服用をはじめた当初、バイヤーズは「腕の痛みが引いてきたし、なんだか体が引き締まるような感じがする」と話していたそうだ。本人が言うには、腕の痛みは消えるし、肌のツヤも良くなって精力的になったという。バイヤーズはすぐにラディトールケースで大量に買い込んで、1日に何度も飲んだ

霊夢:
 薬でしょう? そんなにガブガブ毎日飲んで平気なのかしら。

魔理沙
 バイヤーズがラディトールを毎日飲み続けて約1年が経過した頃、体重が減り、歯が少しずつ抜けはじめていたんだ。実はこのラディトールという薬は、蒸留水とラジウムトリウムを混ぜた「放射性物質が溶けた水」だったんだ。

 しかもこの薬を勧めたベイリーという医師は、実は医師ではなく、ただハーバード大を中退しただけの一般人だった。彼は自分を「医学博士」だと偽って「ラジウム水」が内分泌系を刺激して健康になれる水だと主張して販売し、大金持ちになっていた。

霊夢:
 ただの詐欺師じゃん!

魔理沙
 今考えれば、ただの詐欺師に聞こえるかもしれないが、当時の一般市民は放射線は体に良いものだと考えていたんだ。当時は歯磨き粉や化粧品にまで放射性物質が入れられているような時代だった。だからバイヤーズが彼の言うことを信じてしまったのは、無理もないことだったのかもしれない。

 しかもこのラディトールを販売する時、「成分表以下の放射線量しか出ていなかった場合、1000ドルをお詫びとして差し上げます」とまで宣伝して、放射線量の保証までしていた。

霊夢:
 放射線が多いほうが良いとされていたなんて怖すぎる。

魔理沙
 体に不調が出てきたバイヤーズは病院で検査を受けたが、その時にはすでに手遅れな状態だった。彼はおよそ2年間にわたり、1400本にも及ぶラディトールを飲み干していた。推定でも彼が体内に入れた放射線は、計1億8500万ベクレルにも及ぶと言われている。

 バイヤーズの体重はどんどん減っていき、頭痛がして歯も次々と抜け落ちていった。頭痛の原因は脳が膿んでいたからだと言われている。次第に歯もほとんど抜け落ち、顎の骨が壊死して、ボロボロになった。1931年、連邦取引委員会が動き出して、彼にラディトールとその販売者などについて証言してもらうように依頼したが、当時の彼はとてもそんなことができるような状態ではなかった。

 証言をするために移動することさえもままならない体になっていたからだ。委員会は彼の声明を聞き取るために、彼の家に弁護士を送った。その時に彼の話を聞きに行った弁護士は、「彼は前歯と下顎を除く上顎部分全体を失っていた」「その他の残りの部分は、骨がすべてボロボロに崩壊していて、実際に頭蓋骨に穴が開いていた」と報告している。

 エベン・バイヤーズは苦しみ抜いた末、1932年にこの世を去った。彼の骨には放射性物質が定着してしまっていて、それをすべて除去するのは不可能だったという。また彼の死因は急性放射線症候群ではなく、癌によるものだったらしい。骨に定着してしまった彼の遺体は、絶えず放射線を放っているので、鉛でコーティングされた棺桶で埋葬されることになった。

 当時、専門家の間では、放射性物質の危険性は十分認知されていた。しかしそうした事実はなかなか世間には浸透しなかったから、放射性物質が身体に良いと信じられていたのかもしれない。ラディトールでバイヤーズが悲惨な死をとげると、アメリカの新聞、ウォール・ストリートジャーナルは「ラジウム水の効果馬群! 顎が外れるまでは」という見出しでラジウム水の危険を大きく報じた。

霊夢:
 なんか皮肉っぽい見出しね。

魔理沙
 1938年には、連邦食品、医薬品、化粧品法で虚偽の表示を含むパッケージが違法になったため、放射性物質入りの商品の奇抜な宣伝はやりづらくなった。この時には放射性物質の恐ろしさも少しずつだが広まっていて、一般市民の間でこうした医薬品などを求める声も 減っていた。一部で生き残った商品もあったが、有効成分は含有しておらず、「放射性物質入り」とは名ばかりのものになっていった。

霊夢:
 この時代は放射性物質の悲劇的な事件が多いわね。

魔理沙
 この頃は一般的にまだ認知が進んでいなかったからだろう。

 20世紀初頭、まだ放射性による被害が知れ渡っていなかったために起きてしまった悲劇でした。より詳しい解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。


▼動画をノーカットで楽しみたい方は
こちらから視聴できます

【ゆっくり解説】毎日ラジウム水を飲み続けた男「エベンバイヤーズ」の悲劇

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