1月に出された2回目の緊急事態宣言で、人々の意識はどう変わったのだろうか。

日本人の情報行動について長年研究を続ける東京女子大学の橋元良明教授によると、2回目の緊急事態宣言をめぐる意識調査を実施した結果、人々の危機感や自粛意識と、テレビワイドショー番組の視聴時間に強い関連性がみられたという。

橋元教授は「マスメディアの影響は非常に大きい。特に、ニュース番組よりも、連日、コロナ関連のニュースを取り上げ続けるワイドショー番組によって、危機感が増幅されている」と語る。調査結果と、その分析について聞いた。(新志有裕、武藤祐佳)

2回目の緊急事態宣言、1回目よりも危機感や自粛の意識は低下した

――どのような調査を実施したのでしょうか。

1回目の緊急事態宣言が出されていた2020年4月15日から17日、約3000人を対象に意識や行動を尋ねるアンケート調査を行い、結果を公表しました。そして、2021年1月7日緊急事態宣言が出された後、1月20日、21日にも約3000人を対象とした同様の調査を実施しています。調査はいずれも橋元研究室グループNTTセキュアプラットフォーム研究所の共同研究の一環として行われました。

――2回目の緊急事態宣言時の人々の意識や行動の変化は、1回目と比べてどう変わったのでしょうか。

結果を比較すると、2回目は1回目に比べ、「新型コロナウイルス感染症に対する危機感」や「外出を自粛しなければいけないという気持ち」が宣言後に増えたという人の比率がかなり低下しています。

危機感が「とても増えた」と回答した人の比率は、1回目の59.6%から、26.5%に減少しました。外出自粛の意識も同様で、1回目の62.7%から、29.7%に減少しています。

新型コロナウイルスの致死率などに関する実態の認識が広がり、恐怖心自体がかなり減少しているからだと考えられます。

――年代による違いはないのでしょうか。

若年層の危機意識が低い、と言われることはありますが、とくに2回目の調査では、「とても増えた」という回答比率には年代による大きな差は見られませんでした。

ワイドショーコロナの話題をずっと放送することで、人々の意識に影響を及ぼした

――多くの人が外出自粛やマスク着用を続けているのは、日本人ならではの同調圧力が働いているという指摘もありますが、どうみますか。

数値データがあるわけではありませんが、日本のように同調志向が強い社会では、同調圧力が外出自粛やマスク着用につながっている側面は強いでしょう。

しかし、2回目の調査では、「マスクを着用するのは他人の批判をさけるためだ」という質問に対する肯定的回答は13.6%にとどまっています。他者の目を気にしてというばかりではなく、それなりに自分の意志が外出自粛やマスク着用につながっていることも否めません。

この点に関して、マスメディアの報道の影響がかなり大きいと考えています。2回目の調査では、「この先の1カ月であなたまたはあなたの家族が新型コロナウイルスに感染する確率は何%程度だと思うか」という質問を設けました。

これは、「カルティベーション効果」という、マスメディアの情報に接触し続けることで現実に対する認識が影響を受けてしまうという理論を検証しようとしたものです。

例えば、テレビドラマニュースなどで現実よりも暴力を多く描くため、テレビをたくさん見る人は自分が暴力に遭遇する可能性を高く見積もることが実証されています。

調査結果では、テレビ番組全般やニュース番組、ワイドショー番組の視聴時間が長い人SNSコロナ関連投稿との接触が多い人ほど、コロナの感染確率を高く見積もっています。特に、ワイドショーの視聴時間との関連が高かったのです。

また、「危機感の増加」「自粛をしなければならないという意識の増加」についても同じような傾向が見られましたが、やはりワイドショー番組の視聴時間との関連が高くなっています。

つまり、ワイドショー番組を始めとするテレビ番組で連日、コロナ関連のニュースが取り上げられることで、不安度が増し、危機感が増幅されていると言えるでしょう。特にワイドショー番組では、緊急事態宣言を出すか出さないかも含め、コロナに関する話題をずっと放送していました。それが人々の関心をひきつけ、頭の中を占拠する効果があったと思います。

――緊急事態宣言は、人々に対する自粛要請であり、行動を直接的に制限するものではありませんが、緊急事態宣言が発令されることで、ワイドショー番組がコロナ一色になるので、宣言は大きな影響を及ぼしていると考えてもいいのでしょうか。

そういうことになります。間接的と言ってもいいかと思いますが、大きな影響を及ぼしています。

ネットの影響が大きくなっていたが、コロナ禍ではテレビの影響が目立った

――SNSなどインターネットの影響よりも、テレビの影響の方が大きいのでしょうか。

インターネットも、接触時間が長い人の方が危機感や自粛意識が増加しているのは同じですが、テレビの方がその関連は大きいですね。長い時間見ていると、頭の中がその情報に染まっていきます。

1回目の調査では、トイレットペーパーの買いだめ騒動に関して、トイレットペーパー不足の情報源を尋ねましたが、テレビで知った人というが圧倒的に多かったですね。

――「日本人の情報行動」について、5年おきに大規模な調査をするなど、長年にわたって、日本人メディアの関係を分析してきた中で、今回のコロナ禍をどう位置付けていますか。

コロナ禍では、テレビの影響力の強さを改めて実感しました。「日本人の情報行動」に関する調査で、これまではネットの影響が大きくなり、テレビは小さくなる傾向でした。しかし、5年おきの調査が、たまたまコロナ禍2020年3月だったのですが、テレビが持ち直している、という特徴がありました。

普段テレビを見ない人でも、コロナに関しては「ネットだけだとわからなくなるから、テレビで何を報道しているか確かめるようになった」という人もいます。中長期的にネットの影響力が大きくなる傾向は変わらないと思いますが、改めてテレビの強さを実感しましたね。

ーー国際的にみて、コロナ禍日本人の情報行動にはどのような特徴があると推測しますか。

日本では、他国と比べてテレビを始めとするマスメディアの影響力が大きいという仮説があります。

10年ほど前、不安度に関する国際調査を行った際には、日本人の不安度はほかの国と比べて高い結果でした。テレビの視聴時間が長い人ほど不安度は高くなっていたのです。

日本のように数少ないチャンネルで、長い時間テレビを見ている国民はあまりおらず、しかも放送する内容が似たり寄ったりですから、コロナ禍でもそれが影響したのではないでしょうか。

コロナ禍の危機意識を増幅させた「ワイドショー」の存在感 橋元良明教授が語る「情報行動」論