未払いの正当性を主張する者と、支払いが義務であるという立場をとるNHKが対立している「受信料」の問題。先日、注目すべき判決が出ました。世界各国の受信料事情を見ながら、この問題を考えます。

◆受信料に関する東京高裁の判断

画像はイメージadobe stock)

 NHKの受信料についての裁判で、注目すべき1つの判決が出ました。NHKの放送を受信できないテレビを設置した文京区の女性が、受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた裁判で、東京高裁の広谷章雄裁判長は24日、女性の主張を認めた東京地裁の判決を取り消し、請求を棄却する決議をしました。

 原告の女性は、大幅にNHKの信号を弱めるフィルターのついたテレビを使用していました。これについて、東京地裁は昨年6月にこのテレビを「NHKが受信できるテレビとは言えない」として、契約締結義務を追わないものと判断を下していました。しかし今回、広谷裁判長は「NHKを視聴できなくする機器をテレビに取り付けても、元に戻せる場合は契約締結義務を負う」として、請求を棄却しています。

◆これまでの訴訟
 こうした受信料の徴収に反対する声が高まったのが2004年紅白歌合戦の担当プロデューサーによる制作費の不正支出が発覚すると、いくつもの不祥事が白日のもとに晒されました。それを受けて、受信料の不払いが続発するようになったのです。そうした事態に対しNHKは、2006年から未払い者への督促を開始し訴訟に発展するケースも頻発しました。

 大きな判決となったのは2017年12月6日最高裁が「テレビがあればNHKと受信契約を結ぶ義務がある、とした放送法の規定は『合憲』」という判断を下したもの。それでも、現在まで受信料の支払いを拒否を主張する人は少なくありません。

◆受信料の歴史
 受信料の歴史は1926年NHKの前身にあたる社団法人日本放送協会が「ラジオ聴取料」として月々1円を徴収したのが元になっています。その後、1950年に放送法が改正されて協会が解散し、NHKが設立されて、現行の受信料制度(当初はラジオのみ対象)が始まりました。

 そして、時代を下るにつれ、テレビ受信料の登場やカラー契約の追加、衛星放送契約の開始などを経て現在の形に至っているのです。

◆各国の受信料とサービス
 では、諸外国と日本の受信料や徴収方法と状況について比較してみましょう。

 まず受信料ですが、おとなり韓国KBSは年間2,958円と、NHKの年間15,120円地上波)の1/5程度の安さになっていながら、地上波ではNHKと同じ2チャンネルを展開しています。

 一方、イギリスBBCは日本円にして年間約22,168円、フィンランドYleでは約21,014円(年収約264万円以上の世帯)、ドイツのARD、ZDFでは約27,073円と、フランスFTVは17,920円など、欧州各国は日本に比べて高値。

 とはいえ、BBCが7チャンネル(加えてスコットランド限定2チャンネル)、ドイツはARDとZDFをあわせて10チャンネルフランスFTVで5チャンネル(加えて地域チャンネル多数)など、国民の需要を網羅するよう多くのチャンネルが用意されているのが特徴です。

◆受信料の徴収。税金として引かれる国も
 続いて、徴収について見ていくと、強制徴収ができないNHK受信料に対して、ドイツフランス・韓国では強制徴収ができるように規定されており、不払い者に対する罰則についても法律で定められています。

 また、日本と同じく強制徴収ができないイギリスでも不払い者には1000ポンド以下の罰金が課せられ、罰金未納の場合には刑務所に収監されることに。こうしたことから、徴収率はNHKが81.8%(2019年度)であるのに対し、前述の各国は軒並み90%を超えているという結果につながっています。それでも日本は2011年度が72.5%だったことを考えると、かなり上昇傾向にあると言えるでしょう。

 そうした中でも、特徴的なのがフィンランド。受信料という形態ではなく「公共放送税」という税金で所得税に含まれる形で徴収されるのです。日本は世界に比べると、受信料の徴収が比較的「甘い」ということが見えてきます。

◆受信料を税金で徴収するフィンランド
 所得税に含まれる形で受信料を徴収しているフィンランドですが、この徴収形態については、放送局の運営の変遷と法改正に理由がありました。フィンランド公共放送Yleは1926年に民間企業として設立されました。しかし、1993年にYle法が成立するとフィンランド政府が保有する株式会社になったのです。現在政府はYleの株式の99.8%を保有しています。こうした経緯もあって、日本をはじめ各国では、徴収にかかる費用を放送局が負担しているのに対し、Yleの受信料(公共放送税)の徴収費用は国が負担する形態を取っています。

 元々フィンランドでは、NHKの受信料に当たる「テレビ免許料」をテレビ1台に対して課していました。それが、1998年の法改正でテレビだけでなくインターネットで放送を視聴できる端末も対象になったことから、管理と徴収が困難化したため現在の税金として徴収する方式になったのです。

 法解釈の違いや不祥事によって対立する受信料を徴収したいNHKと未払い者。各国の動向もふまえ、両者がこの先、どういった動きを起こすかにも注目が集まります。

<文/Mr.tsubaking>

画像はイメージ(adobe stock)