◆接種が始まったワクチン、安全性は?

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 米食品医薬品局(FDA)は、2020年12月11日ファイザー、2020年12月18日モデルナの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可しました。まずは、医療従事者と介護施設の居住者に、初回投与を推奨。どちらも2回接種する必要があります。米疾病予防管理センター(CDC)によると、2021年2月25日現在、米国では、4600万人以上(人口の13.9%)が、少なくとも1回、新型コロナウイルスワクチンを接種しました。

 そのような中、CDCは、米国民が知るべきこととしてワクチンは安全で効果があること」「何百万人もの米国人が、米国史上最も厳しい安全監視の下でワクチンを接種していること」「対象になったらすぐに接種を推奨すること」と強調しています。

 そして2021年2月19日、CDCは、安全性のモニタリングの最初の結果を公表しました。結果は「ワクチン副作用は予想通りであり、大多数にとって深刻でなかった」「ワクチンを提供する医療従事者とワクチンを接種する人は、ファイザーとモデルナのワクチンの安全性について安心できる」。詳細は以下になります。

◆ほとんどの副作用は一時的
 CDCの報告は、2020年12月14日から2021年1月13日までの間に投与された、「合計1380万回分(61.2%、女性)」のワクチンの有害事象のまとめです。米国では、ワクチンの安全性の問題を早く見つけるために、「ワクチン有害事象報告システム(VAERS)」と「v-safe」を使用しています。

 ワクチン接種後に有害事象が起きたら、医療提供者、ワクチン製造業者やワクチンの接種を受けた人は、「VAERS」に報告します。「VAERS」は、CDCとFDAが共同で管理し、有害事象の報告を分析します。

 2月19日のCDCの情報によると、ファイザーとモデルナのワクチンの「VAERS」への報告は6,994件。ほとんど(6,354件、90.9%)が重大ではない、局所的および全身的な症状で、重篤と分類されたものは640件(9.2%)でした。最も頻繁に報告される症状は、頭痛(22.4%)、倦怠感(16.5%)、めまい(16.5%)、悪寒(14.9%)、吐き気(14.8%)です。

 さらに、ワクチンを接種した人は、スマートフォンを使って「v-safe」に登録し、ワクチン接種後の副作用をCDCにすばやく報告できます。「v-safe」は、上記の期間に160万人以上が登録し、上記以外に、注射部位の痛み(70.9%)、筋肉痛(22.9%)、発熱(11.4%)、注射部位の腫れ(10.8%)、関節痛(10.4%)などの副作用が報告されました。

 CDCは、「これらの副作用は、日常の活動に影響するかもしれませんが、数日で消えるはず」「ワクチン接種後に、痛みや不快感がある場合は、アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症薬NSAID)、抗ヒスタミン薬などの市販薬の服用について医師に相談すること」「これらの薬がワクチンの効き具合にどのように影響するかは不明ですので、副作用を防ぐために予防接種の前に服用することは勧めない」といいます。

 また、ワクチン副作用として、脇の下や鎖骨の上のリンパ節の腫れを経験する人もいます。腫れは害ではありませんが、数週間続く可能性があります。乳房イメージング学会(SBI)は、スクリーニング中に乳がんの兆候と誤認される可能性があるため、新型コロナウイルスの予防接種を受けた女性は、可能であれば、マンモグラムを少なくとも1か月遅らせることを推奨しています。

副作用ワクチンが効いている兆候
 非営利団体の全米退職者協会(AARP)のニュースで、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学大学院の国際ワクチンアクセスセンターウィリアム・モス所長は、「ある意味、これらの軽度から中等度の反応は『良いこと』です。免疫系ワクチンに反応していることを示しているからです」と言います。

 また、クリーブランドクリニックのラーナー研究所サデウス・スタッペンベック所長は、次のように説明します。

「mRNAワクチンを接種すると、mRNAを含む小さな脂肪滴が腕の筋肉の細胞に取り込まれます。細胞はスパイクタンパク質を作り始めるので、体は筋肉細胞がコロナウイルスに大量に感染していると思います。このため、体は細胞内の見せかけの感染を撃退しようとして、炎症を引き起こします」

「ただし、症状がなくても心配する必要はありません。実際に試験の統計では、50%強は副作用をまったく経験しておらず、ワクチン接種後も94%は保護されています」

 ワクチンによる副作用は珍しいことではありません。たとえば、季節性インフルエンザの予防接種は、発熱や倦怠感を引き起こす可能性があります。また、帯状疱疹を予防するワクチンは、震え、筋肉痛、胃のむかつきなどを引き起こす可能性があります。

 専門家は、「重要なのは、一時的な不快感と長期的なメリット、つまり、多くの人の日常生活を破壊し、世界中240万人以上の命を奪った病気への予防とのを比較検討すること」と言います。

 モス教授は、「私たちは生活の他の面で、不快感をいとわない。運動の後筋肉痛があっても、多くの人は「二度と運動するつもりはない」とは言いませんよね」「生活には、長期的な利益のために、ある程度の不快感のトレードオフをすすんで行う必要があります」と指摘します。

アナフィラキシーは非常にまれ
 さて、アナフィラキシーは、重篤で生命を脅かすことがあるアレルギー反応です。アレルギーのあるものにさらされてから、数秒または数分以内に発生する可能性があります。前述の「VAERS」へのアナフィラキシーの報告は計62件あり、ファイザーのワクチン接種後46件(74.2%)、モデルナのワクチンの接種後16件(25.8%)でした。

 アナフィラキシーの発生は、投与された新型コロナウイルスワクチン100万回あたり4.5回であり、不活化インフルエンザワクチン100万回あたり1.4回)、肺炎球菌ワクチン100万回あたり2.5回)、弱毒生帯状疱疹ワクチン100万回あたり9.6回)の範囲内にあります。つまり、アナフィラキシーは「非常にまれ」であり、ワクチンの接種を受けることを思い留まるべきではありません。

 アナフィラキシーには、効果的な治療があります。CDCは、アナフィラキシーの病歴のある人は接種後30分間、その他の人は15分間の観察を推奨しています。なお、CDCは、新型コロナウイルスワクチンの成分に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある人、mRNAワクチンの初回投与直後にアレルギー反応があった人は、2回目の接種を行わないことを推奨しています。

 一部の人は、接種した部位の赤み、かゆみ、腫れ、または痛みを伴う発疹を経験しました。これらの発疹は、最初の投与後、数日から1週間以上後に始まり、時には大きくなります。これらの発疹は「COVIDアーム」としても知られています。発疹がかゆい場合は、抗ヒスタミン薬を服用できますし、痛みを伴う場合は、アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症薬NSAID)などの鎮痛剤を服用できます。

 またCDCは、ワクチンや注射薬とは関係のない、食品、ペット、毒、環境、ラテックスなどに重度のアレルギーの病歴がある人も、ワクチンを接種することを推奨しています。さらに、経口薬にアレルギーの病歴がある人、または重度のアレルギーの家族歴がある人もワクチン接種をさしつかえないとします。

 さらに、「VAERS」に、合計113人の死亡が報告されました。ただし、死亡診断書、剖検報告書、医療記録、およびVAERSの報告書と医療提供者からの臨床的な状況の説明から、ワクチン接種と死亡との因果関係は示されませんでした。

 合計113人の死亡者うち78人(65%)は介護施設の居住者で、そのうち約半分は、ホスピスの利用者、または蘇生処置の拒否を意思表示している人でした。多くの介護施設の居住者は基礎疾患を持つ高齢者のため、ワクチン接種後にワクチンとは無関係に死亡している可能性があります。実際、入手できる死亡診断書の死因は、心臓病、認知症、肺炎、老衰などでした。

 介護施設の居住者ではない人の死因は、心臓病、がん、脳卒中、肺塞栓症などの基礎疾患、その他虚弱な健康状態が示されました。

◆高齢者は副作用が少ない傾向
 CDCのデータによると、新型コロナウイルスワクチンは、高齢者にも同様に効果がありますが、50歳以上の人は、若い人よりも副作用が少ないです。

 具体的には、50~64歳の人の25.3%、65~74歳の人の3.7%、18–49歳の64.9%が副作用を報告しました。原因は明らかではありませんが、加齢に伴う免疫反応の低下の可能性が考えられています。

 また、ほとんどの人は2回目の投与後にさらに重い副作用を経験します。

◆米、ワクチンの希望者が増える
 米国では、新型コロナウイルス感染症による多くの犠牲者、経済の崩壊、日常活動の制限、感染の恐れ、新しい変異種の拡大などにより、多くの人がワクチンの接種を望んでいます。カイザーファミリー財団(KFF)による、去年12月初旬の調査では、71%の米国人が、ワクチンを絶対にまたはおそらく受けると言います。9月の63%から上昇しており、11月のピュー研究所の調査でも同様の傾向がありました。今回のCDCの副作用データで、さらに多くの米国人がワクチンの接種を希望することと思います。

 さて、先進国で際立って遅れて、日本でも新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりました。米国では、「それにしても、なぜ、これほど遅れたのか?」「ファイザーのワクチンの承認の遅れに関しては、日本政府は、国内のワクチン懐疑論を克服するために、意図的にゆっくりと行動することを選択したようだ」「国民のワクチンへの不信感、輸入ワクチンの不足などの状況において、展開が遅れるとオリンピックまでに集団免疫は不可能では?」など、メディアを通じて話題になっています。

 2020年9月の英医学誌「ランセット」に、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院ハイジ・ラーソン教授らのチームは、2015年から2019年の間に世界149か国からの約30万人にわたる、ワクチンの信頼性に関する最大の研究を報告しました。報告では、「日本は、ワクチンの信頼度が世界で最も低い国の1つ」にランク(末尾の図参照)されています。

 新型コロナウイルスコントロールするには、効果的なワクチンの集団接種が鍵になります。日本でもワクチンの信頼性が高まり、積極的に接種する人が増えることを期待します。

2015年11月2018年11月ワクチンの安全性に対する認識。ワクチンは安全(A、B)、ワクチンは重要(C、D)、ワクチンは効果的(E、F)、と強く同意している回答者の割合(%)。(引用:The Lancet;Vol 396, Issue 10255, 26 Sep 26, 2020 , Pages 898-908)

強く同意している回答者の割合(%)

2015年11月ワクチンは安全である。

2018年11月ワクチンは安全である。

2018年11月ワクチンは重要である。

2018年11月ワクチンは重要。

2015年11月ワクチンは効果的。

2018年11月ワクチンは効果的。

<文/大西睦子>

【大西睦子】
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。

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