山奥の小さな診療所を舞台にした医療ドラマでありながら、風変わりな医師と看護師、個性的な村人たちの心温まる交流を描いた人間ドラマとしても人気を集める「にじいろカルテ」(テレビ朝日系)。

【写真を見る】結婚式の準備をする雪乃(安達祐実)

岡田惠和が脚本を手掛けていることでも話題の本作の監督を務めるのは、映画「神様のカルテ」やドラマ「僕とシッポ神楽坂」(テレビ朝日系)などの深川栄洋。その深川監督に岡田脚本の魅力、キャストの印象、演出に対するこだわりについて聞いた。

■現場で脚本を分解し、別の人にセリフをふり直しすることもあります

――岡田さんの脚本を演出するにあたり、大切にされていることを教えてください。

岡田さんとご一緒するのは、映像作品では今回で3回目。舞台を含めると4回目になるのですが、岡田さんの脚本には型がないので、演出する立場からすると、とても難しく思っています。たとえば今回の場合は、どこで(主軸となる)物語が始まっていくのか、毎回変わるんですね。それを大事にひろっていく作業を慎重にやっているのが、いつもとは違う仕事かなと思っています。

――具体的にどういうところが今までと違うのでしょうか?

より自由度が高くなったのが、これまでと違うところだと思います。今までは一つの流れを作るために物語をA地点からB地点に持っていくことが多かったのですが、今回は行き先を決めずに港を出向しているような感じがします。最初に僕と岡田さんで決めたことがあったのですが、それをひょいと裏切ってくるというか(笑)。なので、いつもよりも緊張感があります。

――そういった岡田さんの自由度を特に感じたエピソードはありましたか?

第3話で雪乃さん(安達祐実)と晴信さん(眞島秀和)のエピソードがありましたが、最初に決めたところでは、もう少し病気の治療の方に話の流れを持っていく予定だったんですね。ですが、実際に脚本があがってきたら、これまで二人が病気にどう向き合ってきたかと、彼らを支える村人たちのエピソードが軸になっていました。医者の活躍を全く描かずに村人たちの活躍を描くというのは、予想していなかったので驚きました。

――その上で、演出で工夫されていることはありますか?

役者が脚本通りにやっても岡田さんの描きたいことを表現できない、というのが今回の現場で僕が感じたことでした。脚本にはこう書いてあるけれど、「この言葉じゃないんじゃないかな」とか、「これは言わずにいた方が岡田さんの目指すところにたどり着くんじゃないか」と思うことが多々あったりするので、それを現場で役者と確認し合いながら進めるようにしています。なので、現場で脚本を分解し、別の人にセリフをふり直しすることもあります。役者さんからすると、自分が覚えてきたものとは違うセリフを言わなければいけなかったり、全く違う動きを求められることもあるので、最初はとまどいがあったと思います。

■僕は監督としてトラップのようなものを毎回仕掛けるようにしていました

――本連載のご登場いただいたキャストのみなさんも「深川監督の演出は斬新で、何が起きるのか分からない現場になっている」と口をそろえて言われていました。

岡田さんの脚本はとても余白が多く、「自分が書いたものとは違うことをやってもいいよ」と言われている気がしたので、自分なりの演出をさせていただきました。その上で、視聴者の方たちが予想できるお芝居だと、テレビから目が離れてしまうと思うんですよね。毎話ごとに「今回のお話はこの人に注目をしないといけないんだ」と思っていただくためには、それぞれのキャラクターが役者のイメージから離れたり、普通はやらないことをやらせてみる。そうすると、視聴者の集中力があがったりするんですよね。役者さんの中には「何で(その演出)?」と思った方もいるかもしれませんが、僕の中ではそういう思いがありました。

――脚本にない演出を加えられたところで、特に印象に残っているシーンはありますか?

第1話で、村人たちが集まって真空先生(高畑充希)の歓迎会をするジーンがあったと思います。あそこで全体が同じ流れになると面白くないなと思ったので、(“じじーず”の日出夫さん役の)泉谷しげるさんに「機嫌が悪く、怒っていてください」と伝えました。そうすると一つのシーンに緊張と緩和が生まれて、目が離せなくなるんですよね。たぶん、それは役者の立場からは見えないことなので、僕は監督としてそういうトラップのようなものを毎回仕掛けるようにしていました。

――役者さんもいろいろと試される現場だったということですね。

みなさん、ものすごい集中力で現場に挑んでくださっていました。ときにはほかの役者には伝えていないことをその人だけに言ったりすることもあったので、たぶんドキドキの連続だったと思います(笑)

■北村さんは、役者としてのポテンシャルがとても高い方だと思います

――病を抱えたポンコツ女医・紅野真空役の高畑さん、ヘンテコ外科医・浅黄朔役の井浦新さん、キレキャラ看護師・蒼山太陽役の北村匠海さんの印象を教えてください。

高畑さんは、刹那的でいられる稀有な女優さんだと思います。僕の感覚では、女優さんは「ここから、ここまで」という枠を決めている方が多いように思うのですが、高畑さんは何か言葉を投げ込まれたら、そこから違う波紋を広げていきたい方なのかなと。自分の枠を決めずに反応でお芝居ができることが彼女の特徴で、いい意味での自由さを持った女優さんだと思っています。

井浦さんは、僕が脚本で「ちょっと飲み込めないな」とか「こんなことを言うかな」と思ったところを相談すると、すぐに「やってみる!」と言ってくださるんですよね。そうすると僕と同じような思いを抱いていた高畑さんも「こう返せばいいのか」というのが見えてくるようで、井浦さんが柱になってできあがったシーンがいくつもありました。なので、井浦さんは大黒柱のような強い心を持った方だと思います。

北村さんは、役者としてのポテンシャルがとても高い方だと思います。太陽というキャラクターはワンシーンの中で笑ったり、怒ったりすることがよくあるのですが、それを1㎜単位の細やかなお芝居で表現されるんです。たとえカメラが太陽の方を向いていなくても、ずっとお芝居を続けられていて、気がついたら涙が流れているということが何度もありました。これからもっとスターになるんじゃないかな。本当に末恐ろしい俳優さんだと思います。

――物語も中盤に向かい、これから真空がどうなるのか、虹ノ村の人々がどうなっていくのか気になるところですが、3月4日(木)に放送される第7話の見どころを教えてください。

第7話では、雪乃さんと晴信さんの結婚式が描かれます。ただ、虹ノ村の結婚式は独特で、みなさんが見たことのない結婚式になっていると思います。もちろん、笑いもありますが、その後に押し寄せる引き波のように涙があふれる展開になっていますので、楽しみにしていてください。

独特な虹ノ村の結婚式の準備をする、真空(高畑充希)たち/(C)テレビ朝日