自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第20回:3度の地獄を経て気づいた“尿管結石にならないために気をつけること”!


食のコラムですが今回のテーマは尿・管・結・石!

 『掟ポルシェの食尽族』、通常こちらは食に関するコラムになっておりますが、おいしいのまずいのだけじゃないのもたまには、ということで今回は食と健康の話です。
 まぁ言うてもこれまで“健康に良い”とかいう眠たい観点から食事を選んできたことはほぼないに等しいわけでございます。ありがたいことに生来体は丈夫な方でして、年中食べたいものを食べたいだけ食べて、多少なりとも内臓に無理させてる割には50過ぎて特に体で悪いところはなし。快眠快便がチャームポイント。
 なんもしなくても健康ですが、実はかつてはキッツイ持病に悩まされておりました。それが、「尿管結石」! 一度でもこの病気にかかった人ならこの文字列見ただけで震え上がってることと存じます! いや痛えの痛くねえのって! マジで死ぬかと思うって! いや、率直に言って「地獄」のひと言。
 この病気についてご説明しますと、“腎臓でできた結石が尿と一緒に流れ、腎臓と膀胱の間をつなぐ尿管の真ん中の細くなってるとこに詰まって激痛が走る”というもの。本来液体しか流れてないところに固体が詰まる! その辺の川に川幅よりデカい岩石が転がってんのと一緒! 無茶苦茶じゃないですか、そんなもん。自分の場合、12歳&20歳&25歳の計3回ハードな尿管結石やってまして、20歳のときはレントゲン撮ったら左右の腎臓に合計7個(ギャー!)のデカイ結石ができてました。そしてこの病気が怖いのは、その治療方法にあります。1988年、20歳のときに尿管結石だと診断したお医者さん、なんて言ったと思います?

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「ビールたくさん飲んでください!」

 マジですからね、これ。全然医学じゃねえっつう。今は違いますが、当時の医学では尿路結石の治療法として利尿作用のあるビールを飲んで尿量を増やせば結石も流れやすくなると考えられていました(尿酸量が増えると尿酸由来の結石に関しては逆にできやすくなりますので今では推奨されていません)。なんだそれ。
 「痛くなったら(※ある程度の大きさまでは)利尿剤を処方し尿と一緒に出てくるのを待つ」という超原始的な対処療法が依然一般的なのには閉口します。ちっちゃくても固体は固体、石は石! 尿管に詰まったら痛えに決まってんだろ! (※ある程度の大きさまでは)って書きましたけど、この“ある程度”には現代と昔では差がありまして、現在では直径4mmまでは尿と一緒に排出待ち、それ以上の大きさの場合特殊な機械を使って衝撃波を当てて破砕(やり方は何種類かありますが、尿道に内視鏡を入れて超音波で破砕する方法もあるとか……尿道に管通すだけでも恐怖なのに尿道内で超音波って痛みとれるとしても超怖いんですけど)、細かくしてやはり尿と一緒に排出待ちなんですが、衝撃波破砕器具があまり導入されていない1988年ではこの“ある程度”が“直径1cm以下”(死)。俺の場合、大量の血尿とともにやっとのことで自然排出された尿管結石は直径8mmありました……なんでこんなもの無理矢理ションベンと一緒に出してんだよ医学ってなんだよと医学の進歩してなさを全力で恨んだものです。
 で! すみません、ようやくここから食のコラムっぽくなりますので! 尿管結石は、食事の影響でできると言われています。特に近年、我々日本人の食生活が西洋化して肉食中心になったことで、昔に比べて尿管結石ができやすくなっているのだそう。自分の場合、出てきた結石を病院に持っていって成分を調べてもらったところ、もっとも一般的なシュウカルシウムの結石であることがわかりました。肉類等を食べるとシュウ酸や尿酸等の物質が体内に増えます。このうちシュウ酸にはカルシウムと結合しやすい性質があり、腸内でカルシウムと結びつくと大便と一緒に排泄されます。ですが、肉類の過剰摂取等によりシュウ酸の量が増えすぎると、余ったシュウ酸は尿に混じって排出され、尿の中でシュウ酸がカルシウムと結合・結晶化し、蓄積して巨大な塊になってしまいます。これが尿管結石です。無論、肉類を大量に摂取すると誰でもなるわけではなく、余ったシュウ酸が尿中に排出されがちな体質の人がなるのだと思います。
 病院に持参した結石の分析結果を医者から説明されました。そこで医師が言ったのは、こういうことでした。
尿管結石の種類によっては原因となる食品の摂取を控えるなどの治療法があります。この石の成分はシュウカルシウムで、もっともオーソドックスな尿管結石です。1番多いタイプのものですが、現代の医学(1988年)ではこの結石についてはまだあまりよくわかっていません。なので、痛くなったらまた病院に来てください。利尿剤と痛み止めを出しますので」
 結局治療法ないんかい! あの激痛に対して打つ手がなく、「痛くなったらビール飲んでください」と医者が絶対言わないようなことを平然と言われて絶望的な気持ちに。本気でグッタリしました。尿管結石、誰かちゃんと研究しろよマジで。

激痛に苦しむみなさんにお伝えしたい“尿管結石にならないために気をつけること”!

 痛くなったら小便と一緒に出るまで耐えるしかない。25歳の頃にも尿管結石の第3波が来てまたしてもキッツイ思いをしたわけですが、3回も大波が来たことで重症化したときの法則性のようなものが見えてきました。

1:ストレスを抱えていたときになっている。
2:痛くなる前には同じ食品をずっと食べ続けていた。

 このふたつです。12歳のときは学校行事でひとりで演芸をやることになったのがプレッシャーだったり、20歳になる少し前には大学受験があって当然ストレスだらけでしたし、25歳のときは初めての就職に失敗してエロ本の出版社を渡り歩いてはすぐクビになっていたりと、個人の感想ではありますが、どうやら俺はストレスが溜まると尿管結石ができているようだなと。そこで「これからの人生、ストレスを極力溜めないように生きよう」と開き直って、自分の楽しいことを優先し、堅い勤めの正社員人生は自分には不向きとスッパリあきらめることにしました。文章を書いたりバンド活動のみで生きていこうと肚が決まったわけです。細かいことで悩まないのが第一のライフスタイル、楽観的な姿勢が作られたのは実は尿管結石のおかげです。もともと難しいことを考えるのに向いてないというのもありますが。

 そして2番、食事の影響です。子どもの頃からある食品が大好物で、そればかり食べていた時期とどうやら尿管結石の時期が重なることにも気づきました。ある食品とは“ツナ缶”です。シュウカルシウムの結石は肉類の過剰摂取でできがちだという医学的研究結果とは違うのですが、自分の場合それが原因と考えると合点がいくというか(実際にはツナそのものが悪いのではないとのちに判明します)。
 12歳のとき。この世にシーチキンというものがあることを知り、とにかくアホみたいにそればかり食べていました(うまいよね~)。いつも腹部に謎の鈍痛を抱え、ラジオ体操でジャンプするところで痛みが増したりとか。住んでいた町で一番大きい市立病院に2週間検査入院したものの原因がわからず、「心因性の大腸麻痺」という見事な誤診を頂戴しただけで終了。20歳のときに診てもらった医者に過去の検査入院の診断結果を伝えたところ、「泌尿器科で初歩中の初歩の尿管結石がわからなかった!? 滅茶苦茶だよそれ!」と同情されました…。
 20歳のとき。東京の大学を何校か受験するために1988年2月~3月に3週間ほど東京の叔父の家にお世話になっていました。叔母さんが好きな食べものを食事で出してくれるというのでツナ缶をリクエストしたところ、毎日大量に出してくれたのです。好きなものを出してくれたのだから叔母さんには感謝しかないですが、結果的に大量の尿管結石ができあがっていたようで、大学に入学するぐらいからニヤニヤとした腰の裏側の鈍痛が続き、5月に20歳の誕生日を迎えた辺りで激痛に変化し病院に搬送、そこでやっと自分の病気が尿管結石であることを知った次第です。遅えよ。
 25歳のとき。何を食べていたかは実のところあまり覚えていません。ただストレスだけは猛烈にありました。ナメた心持ちで働いていたためよくバイトをクビになり、自分が社会不適合者であることを嫌というほど思い知らされていた時期ですね。金がないので食事はほぼ100%自炊。北海道の実家から送られてきたじゃがいもでよくフライドポテトを作って食べていました。揚げ油なんかも当然バリバリの使いまわしでかなり真っ黒になるまで使い続けたものです。安いツナ缶ももちろん常備して死ぬほど食ってたと思います。そして気がつけばまた腰の裏に激痛……尿管結石再発という、かなり人生の底の時期でした。ああああ思い出すだけで暗くなってきた……。
 計3回の尿管結石大漁祭りのあと、ストレスを溜めないことを心がけると、ごくたまに単発の痛みはあったものの尿管結石らしき持病は次第に抑えられていきました。そして幾度かの尿管結石単発小当りを引くうち、前日食べたものから自分の体の反応をもってハッキリと元凶となる食品が見えてきたのです。それは、

“痛くなる前日、古い油で揚げものを作って食べている”

 そう、ツナ缶ではなく、ツナ缶に入っているサラダ油が原因だったのです。
 そういえば若い頃、金がないので何度も使った酸化したサラダ油ポテトフライとか作って食べていたことを思い出しました。自分だけではなく、割とどこの家庭の台所にも油こしとオイルポットがあり、一度揚げものに使った油を濾して炒めもの等に使用していたと思います。12歳で尿管結石第一波が押し寄せる前にも、なんかことあるごとにお腹が痛くなっていたのは別段センシティブだったからではなく、揚げ油を再利用して作った料理を日常的に食べていて、それが体質に合わなかったからだったのだと。昔のフライパンはテフロン加工じゃありませんから、使い終わって洗剤で洗って台所の鍋が置いてあるところにしまうときに油を塗っておいたりするものでしたし。酸化した油を摂取する条件が整いすぎていたのか……ホント誰か教えてくれよ……。
 自力で持病の原因に気づいて以降、ツナ缶はノンオイルのものに変え、揚げものを作る頻度をかなり少なくし、どうしても食べたいときは新しい油で揚げてキッチンペーパーで執拗に油を取るようにしたところ、尿管結石が治りました。今もたびたび尿管結石を発症して激痛に苦しむみなさんにお伝えしたい。

 尿管結石ができないために気をつけること!
1:ツナ缶はノンオイルのものにする!
2:揚げものを食べるのをできるだけ控える!
3:一度揚げものに使用して酸化した油は料理に再利用しないで捨てる!

 ぜひ、これだけやってみてください! 医学的根拠はないですが実感としてこれで治りましたので(ただしシュウカルシウム尿管結石に限ります)。
結局食のコラムには全然なりませんでした! 長ったらしくてすみません! 次ちゃんとやります!

ネットで調べても「シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、筍、バナナ、お茶、コーヒー、紅茶、チョコレート等)を控えること」ぐらいしか書いてなくて最悪。酸化した油とシュウカルシウム尿管結石の因果関係、誰か研究してくださいマジで

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掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。

【掟ポルシェの食尽族】第20回:3度の地獄を経て気づいた“尿管結石にならないために気をつけること”!