フランスの首都パリ中心部には、今はもう使われなくなった地下駐車場が多数存在している。その巨大なスペースを再利用する試みとして行われているのが、キノコなどの農作物の栽培だ。
2017年に、初めてパリ18区の未使用の地下駐車場を有機ファームに大改造したフランスの新興企業は、現在もスペースを活かした新たな農業開発とより良い環境への取り組みに邁進中だ。
Why Paris is turning car parks into mushroom farms
1960年代と70年代、パリでは多くの地下駐車場が建設された。特に18区ではアパート300戸が入っている建物群の地下には、4階分、面積にして約9000㎡に及ぶ巨大な駐車場が広がっている。
当時、市はアパート1棟ごとに2つの駐車場を義務付けしており、居住者の多くも車を所有していたため、地下駐車場は収容スペースとしては最適だった。
ところが、近年のパリは人口密度が高くなるにつれて車の所有数は減少。複数のスタートアップ企業が、環境のために車を使用しなくてもいいようにと、街に電動自転車や電動キックボードを導入して交通の便宜を図る取り組みがなされているからだ。
すると、地下には空っぽの駐車場が残される。これまで廃墟化したこのスペースを利用していたのは、ドラッグ密売人もしくは売春婦たちだった。
地下駐車場を農作物の栽培に利用する試み
そこで2017年、フランスのスタートアップ企業『Cycloponics』が、パリの地方自治体の許可を得て地下駐車場を大改造した。光を必要としない作物を栽培するための地下農場「La Caverne(ラ・カヴェルヌ)」をスタートさせたのだ。
La Caverneは、巨大な地下駐車場でマッシュルームやしいたけ、まいたけなどの複数の有機きのこの他、エンダイブやLEDの光源で育つケールやスプラウトなどを栽培している。
実は、パリで地下きのこ栽培はCycloponics社が初めてではない。1800年初頭でも行われていたが、19世紀の終わりにパリのメトロの開発で停止されたそうだ。
それ以降も、地下きのこ栽培はあったが、最後となったのは50年位以上前のことで、今回Cycloponics社がそれを復活させた形となった。
現在、“より環境にやさしい都市のためのゼロカーボンデリバリー”と呼ばれる地域流通用の食品生産の継続を目指して、同社はLa Caverneで収穫された新鮮な作物を近所の店に売ることで、運搬の手間や交通による汚染をカット。
またLa Caverne創設者は、スペースの1部を地元NGOにリースし、地元コミュニティにも取れたての野菜を提供しているという。
大都市の新たな農業開発への推進と、より良い環境への取り組みを実践するため、広大な地下駐車場を再利用し、地元だけでなく環境にも大きな利益をもたらしているLa Caverne。今後は、フランス全土で同様のビジネスを展開する計画を立てていくということだ。
written by Scarlet / edited by parumo
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