南極にある、厚さ150メートルの「ブラント棚氷」は2020年11月に巨大な亀裂が観測されていたが、それが大きく成長した結果、ついに分離して巨大な氷山が誕生したそうだ。
氷山の面積は1270平方キロメートルと、東京都23区の約2倍の大きさもある。
Brunt Ice Shelf - North Rift flyover (16 February 2021)
「ノース・リフト」と呼ばれていた亀裂は、過去10年にブラント棚氷で確認されたものとしては3番目に大きなものだった。
棚氷とは、陸上の氷河または氷床が海に押し出され、陸上から連結して洋上にある氷のことだ。
いずれは分裂するだろうことは英国南極観測局によってすでに予測されていた。1月中、ノース・リフトは日に1キロのペースで北東へ伸びていたが、2月26日の朝になってほんの数時間のうちに2300メートルも広がったという。
その結果誕生したのが、1270平方キロもの巨大な氷山だ。
じつに東京23区の2倍である!
自然のプロセスによるもの
南極の亀裂と聞くと、また地球温暖化のせいかと思ってしまうが、今回のものは自然のプロセスによるもので、温暖化が関与した証拠はないとのこと。厚さ150メートルもあるブラント棚氷は、年に2キロずつ西へ流れながら、定期的に氷山を生み出しているのだという。
とはいえ、ここまで大きなものはやはり珍しいようで、衛星画像で亀裂の動向を追っていた英スウォンジー大学のエイドリアン・ラックマン教授は、「南極の棚氷が大きく分裂するのは普通にあることですが、金曜日にブラント棚氷で発見された氷山のように大きなものは珍しく、ドキドキしますね」とコメントしている。
新しく誕生した氷山の行方は?
なおブラント棚氷には英国南極観測局のハレーVI研究ステーションが設置されており、研究者が大気や宇宙の天気の観測を続けている。
幸いにも、今回の氷山誕生によって彼らが危険にさらされるようなことはなかった。隊員12名は2月初旬に帰国して、研究ステーションは閉鎖されていたからだ。
ちなみに、氷山の発生が予測しにくいことや、ただ寒いだけでなく暗闇にも包まれる冬季では思うように避難もできないことから、ここ4年は夏の間しか隊員が駐在していないのだそうだ(南極の冬は、日本の夏に訪れる)。
同局は2016年にも、大型の亀裂から隊員を守るために、研究ステーションを内陸へ32キロ移動させたことがある。
新しく誕生した氷山だが、今後数週から数か月、ブラント棚氷から離れていく可能性も、近くにとどまる可能性もどちらもあるとのことだ。
References:Brunt Ice Shelf in Antarctica calves - British Antarctic Survey/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2021/03/04)衛生画像を衛星画像に修正して再送します。
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