福山哲郎官房副長官(左)と元経産官僚の岸博幸氏

福山哲郎官房副長官(左)と元経産官僚の岸博幸氏

ニコニコニュース(オリジナル)

 福島第1原子力発電所の事故を受けて、自然エネルギーが注目されるなか、太陽光や風力など自然エネルギーで作った電力の買い取りを電力会社に義務付ける再生可能エネルギー特別措置法案が2011年7月14日衆議院本会議で審議入りした。翌15日に放送されたニコニコ生放送と論壇誌『Voice』とのコラボレーション企画では、福山哲郎官房副長官と元経産官僚の岸博幸氏が、日本のエネルギー政策について議論を交わした。

■「保安院だけではなくエネ庁も経産省から引き離すべき」

「エネ庁も経産省から引き離すべき」と語る岸博幸氏

「エネ庁も経産省から引き離すべき」と語る岸博幸氏

ニコニコニュース(オリジナル)

 東京電力の隠蔽体質に対する批判が高まるなか、それを監督・管理するはずの行政(経済産業省)がその役割を怠ってきたと岸氏。「経産省はしっかりとチェックしているのか」と疑問を呈した。この発言を受けて、福山官房副長官は「規制機関である保安院と、安全をチェックする安全委員会と資源エネルギー庁が、呉越同舟していた。制度的に。安全委員会は内閣府の下ですけど。その体制に問題があったことは間違いない。規制官庁と推進官庁が一緒にいるのだから」と、日本の原子力行政に関する組織のあり方を批判した。

 経済産業省原子力安全・保安院を同省から分離・独立させるといったような、原子力行政見直しの声が高まっているが、岸氏は保安院だけを分離・独立させるだけではいけないという。

保安院を(経産省から)引っぺがすだけで本当にいいのか。保安院を(経産省から)出した場合に、原子力を推進するエネ庁(資源エネルギー庁)は経産省の下に残る。これまで安全規制が緩かった原因は、経産省と電力会社の癒着があったわけで、これは経産省の幹部とエネ庁がやっていた」

と、資源エネルギー庁が経産省と電力会社の癒着に関与してきたことを指摘。その上で、

保安院が(経産省の)外に出て安全委員会とくっついて内閣府の下にぶらさがる組織になった場合には、霞ヶ関の力学の中で圧倒的に『経産省・エネ庁』軍団のほうが強くなってしまう。保安院を(経産省から外に)出すときは、同時にエネ庁を引っぺがして電力会社と密接すぎる関係を一回断ち切ることがいいと思う」

と、原子力行政の見直しのためには資源エネルギー庁の分離・独立も必要だと訴えた。この意見には福山官房副長官も「傾聴に値するご意見だと思います」と述べた。

■発送電の分離は必要か

 福山官房副長官は、日本のエネルギー政策を考えるにあたり、原子力行政の見直しだけではなくエネルギー供給体制のあり方を考えなければならないと主張。その中で、「送電の分離も議論の一つの対象」と述べた。この「発送電分離」論について、岸氏は

「ある程度やったほうがいい。電力は部分的に自由化されたから、もっと価格が下がっていいはずなのに、新規に入った人(電気事業者)の託送(電力網の利用料)が高いからなかなか下がっていない。どうやって新規参入者に公平な条件で使わせるか。通信の世界と同じようなことをするしかない」

と述べ、1985年に自由競争の時代に突入した通信市場のように、電力市場での自由化を促進する必要性を強調。これに対し福山官房副長官は

「まったく同意。インターネットも通信のいろんな工夫が行われ、携帯電話NTTの独占ではなく、いろんな他社が出てきたことによって競争が起こった。電力はこれに近いと思っている」

と賛同した。

太陽光発電、発電コスト削減のための課題

 さらに、発電をめぐる問題に議論は進んだ。原子力に代わる代替エネルギーとして自然エネルギーが注目されている。中でも、太陽光発電については、ソフトバンク社長の孫正義氏が大規模太陽光発電所(メガソーラー)の計画を打ち出したほか、菅直人首相は5月の主要国首脳会議(G8)で「1000万戸の家庭に太陽光発電パネルを置く」との構想を示した。

 司会の経済学者駒澤大学准教授の飯田泰之氏が「再生可能エネルギー特措法が提出されたが、現時点では、再生可能エネルギーで一番普及しているのは太陽光。しかし、太陽光はコスト面で大きな問題を抱えている」と発電コストの高さを指摘。これに対し、福山官房副長官は「それは今まで日本で(太陽光発電)普及の政策が取られてなくて価格が下がるインセンティブがなかった」と、普及に伴い発電コストを下げることができるとの認識を示した。

 岸氏もこの意見に同意し、「そこは正しくて、エネルギーというものは投資を増やせば、技術進歩でコストダウンが起きる」と述べた。その上で「一番問題だと思うのは、再生可能エネルギーの特措法だけでは話は進まない」と岸氏。その理由について

「政府がエネルギーに対する予算の集中投下をしなければいけない。でも残念ながら、今年度予算で、原子力は4300億円もある。でもエネ庁予算を見ると太陽光・風力・バイオマス、有力な3つで650億円しかない。これでは普及するはずはない。かなりドラスティックに再生可能エネルギーに予算をシフトできるのか。恐らくエネ庁とか電力会社が抵抗する」

と、太陽光発電の普及には電力会社の抵抗を乗り越えた上で、より多額の予算を確保しなければいけないとの見方を示した。

(三好尚紀)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「保安院を引っぺがすだけで本当にいいのか」から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56266352?po=news&ref=news#46:51

福山哲郎官房副長官(左)と元経産官僚の岸博幸氏