小脳に発生する脳腫瘍「小脳髄芽腫」と診断された小児科医の男性が今年2月、妻と3歳の息子を遺して亡くなった。男性は病床で「息子がもう少し大きくなったら、父親にいったい何が起きたのかを理解してもらいたい」と絵本を書いて出版。亡くなる前に息子に読み聞かせもできたという。『Manchester Evening News』『Mirror』などが伝えた。

英マンチェスター在住の小児科医アリア・ニックジョーイさん(Aria Nikjooy)が先月8日、総合診療医で妻のナオミさん(33)とエリヤス君(Eliyas、3)を遺して小脳髄芽腫で亡くなった。30歳だった。

アリアさんは2018年11月、酷い頭痛や呂律が回らないなどの症状に襲われ、ステージ4の小脳髄芽腫と診断された。その後約7時間に及ぶ開頭手術を受け、化学療法と放射線治療により一旦は仕事に復帰したものの、2020年3月に再発。2度目の開頭手術を受けたが、7月に再び腫瘍が見つかって3度目の手術を受けた。

ナオミさんによると、アリアさんの最初の入院は2か月半に及び、肉体的、精神的にも過酷な日々が続いたという。アリアさんはバランス感覚を失い、話すこと、歩くこと、食べること、書くことなどを一から学ばなければならず、回復にも時間がかかった。

ナオミさんは「夫が小脳髄芽腫と診断された時、エリヤスはまだ1歳4か月で、病気の説明をすることはありませんでした。しかし2回、3回と手術が続き、息子にも夫の病気について知らせる必要が出てきたのです。嘔吐を繰り返し、眠ってばかりいる父親の姿を目の当たりにしていたからです」と当時を振り返り、こう続けた。

「夫は最悪の体調でも『息子のためにどうしても絵本を完成させたい』という意欲を失いませんでした。そしていくつもの出版社にアプローチした結果、昨年9月に『The Endless Bookcase』によって最初の絵本が出版されたのです。手術の度にどんどん弱っていったアリアですが息子を膝に乗せ、自分の思いがたくさん詰まった絵本の読み聞かせをすることができました。そんな2人を見るたびに私は、胸が押しつぶされそうでした。」

「そうして昨年12月初旬、夫のがんが脊椎に転移していることが判明しました。夫は自分の死期を悟っていたのでしょうね。家族で穏やかなクリスマスを過ごした後に容体が悪化し、今年の2月8日に自宅で息を引き取りました。」

なおアリアさんの1冊目の絵本は、3~7歳の子供向けで「病気になった父親の恐竜を助けるために、ライオンが困難に立ち向かっていく」ストーリーだという。エリヤス君はアリアさんの絵本が出版され、多くの人に読まれていることをとても誇りに思っているとのことで、現在はナオミさんが読み聞かせをしているそうだ。

またアリアさんはロックダウン中、家族の大切さをテーマにした2冊目の絵本「エディ・アンド・ザ・ラスト・ドゥドゥ・オン・アース(Eddie and the Last Dodo on Earth)」を書き上げた。こちらももう間もなく出版され、2冊の本の収益は脳腫瘍の研究やがん患者を支える4つの施設に贈られるという。

ナオミさんは「まだ若かった夫が病気になり亡くなったことは、私たち家族にとって本当につらいものでした。エリヤスはまだ2冊目の絵本の存在すら知らないので、ビッグなサプライズになるでしょうね。息子は絵本を通して、病気だけでなく家族に向けた父親の思いを理解することができるのですから、アリアには本当に感謝しています」と語っている。

画像は『Metro 2021年3月3日付「Doctor, 30, writes book to son as heartbreaking last gift before dying of brain tumour」(Picture: PA Real life)』『Manchester Evening News 2021年3月3日付「Doctor, 30, dies from rare illness after complaining of bad headaches… he left his young son two heartbreaking gifts before his death」(Image: PA REAL LIFE)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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