藤井美菜 撮影:宮田浩史 衣装:CLANE

鋭い視点のドラマ『ドクター探偵』で見せた新境地「後編」

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インタビュー前編では出演ドラマ『ドクター探偵』や、これまでのキャリアについてたっぷりと語ってくれた藤井美菜さん。後編では韓国との10年で気づいたこと、自身を取り巻く環境の変化やプライベートについて話してくれた。

最近の“韓欲”は、何で満たす?

――日本は第5次韓流ブームの真っただ中にありますが、すでに韓国で活躍中の藤井さんは、どのように感じていますか?

ステイホーム期間あたりから『韓国語を勉強したいんだよね』という連絡が一斉にきて、みんな“染まってるな”と思っていました(笑)。自分もそうだったので、気持ちが分かり過ぎるくらいに分かるなあと。『冬のソナタ』ブームの時は、家族全員が完璧に染まっていました。レンタル店で『3巻借りておけば、しばらく見られるよね』って借りた当日に見終わっちゃって、続きが気になって眠れなかったんです(笑)。染まった人はみんな、そうなります。なので、“ハマりそう”と思ったら、あえてオンエア中はパスして、最終回まで録りだめてからバーッと見るのもいいかもしれません。気になり過ぎて何も手に付かなくなって眠れなくなるよりは、健康的ですよ(笑)。そうこうするうちに“字幕なしで番組を見たい”という欲がでてきたら韓国語学習のチャンスです。はかどると思います」

――藤井さんは、どうやって韓国語を学んだんですか?

「大学の授業で2年間学んだ後、個人的にレッスンを受けました。その後はエンタメに支えられましたね。一番力になったのは、当時ハマっていた冬ソナからの“四季シリーズ”でリスニングしながら勉強できたこと。韓国語でセリフを話したくなるし、知っている単語が出てくるとわくわくするし、何よりドラマが楽しいんですよね。でも、いちばんは韓国人のお友達を作ること、だと思います。会話が一番上達が早い。今は日本にいても韓国のオンエアとほぼ同時に見られるので、会話のネタにも困らないんじゃないでしょうか」

――韓国にもなかなか行けなくなりましたね……。

「今、ものすごくジャージャー麺が食べたい気分です」

――お好きなんですか?

「好きな韓国料理を聞かれると、タッカンマリとずっと答えてきたんですけど、今は無性にジャージャー麺が食べたいです……」

――韓国ドラマには欠かせない国民食メニューですから、恋しくなるのも当然です。

「辛いイメージのある韓国料理ですが、ジャージャー麺のように辛くない料理もたくさんあっておいしいので、早く韓国に食べに行ける日がくるといいのですが」

――普段、どうやって“韓欲”を満たしていますか?

「韓国のアーティストのSNSを拝見しながら、今、何が流行ってるのかなってチェックしてます。でも、実際に行けてないので流行の正解が分からないんですよね。いつもワンテンポ遅れちゃうタイプなので飛びつけないんです。オシャレの流行だけじゃなくて韓国は何でも早い。ドラマの制作発表が3分後くらいにはもうニュースになっていますからね。そのテンポ感は本当に驚かされます。空港ファッションが話題になるのも韓国独自の文化じゃないですか? 空港へ向かう道も“ランウェイ”にしてしまうというか。衣装とは違う私服のちょっと抜けた着こなし、一時期夢中でチェックしていました。一度『ハッピートゥゲザー』というバラエティ番組で、スタジオ入り前の路上で撮られました。慌てたんですけど、その時の私服はギリセーフだったんでホッとしました。ジャージじゃなくて本当によかった(笑)」

何か変わったね

藤井美菜 撮影:宮田浩史 衣装:CLANE

「何か変わったね」と言われたことがうれしかった

――ご自身でもSNSで発信してますよね。

「5年前にインスタグラムを、2年前からYouTubeで動画配信をやらせていただいてます。コロナ禍で行き来はできないんですけど、昔に比べて海外の方にも自分が今何をしてるかを伝えやすい環境になっているので、それはありがたいなと思います。今では作品がやって来るスピードも速いし、オフショットをいろんな形で発信できる。すごくボーダーレスになったと感じています。インスタは“自分の言葉で、日本語と韓国語で同じ内容を書く”というのが始めた時からのルールです。たまに日本語で熱く、難しいことを書いてしまって“これ、韓国語で何ていうんだったっけ?”っていうこともあるんですけど、ファンの方が「つづり間違えてますよ」と訂正のコメントをくださったりして、勉強になっています」

――どの言語であれ、自分の言葉で発信するのは、すごくいいことですね。

「語学は“間違いをおそれる”のはよくないなと思います。韓国のバラエティ番組にも出演させていただいているんですけど、今も昔も間違えまくりですよ(笑)。でも、それすらも楽しんで個性ととらえてくださる方もいて。その反応が温かくて“間違えてもいい、人間らしくていいんだ”って思えるようになりました。それは日本でのお仕事にも役に立っています。韓国で活動するようになってから、昔から知ってる方とお会いした時に『何か変わったね』と言われるようになって、それがすごくうれしかった。とても多くのものを学んだんだ、と思えたので。韓国では何をするにも言葉の壁があって、その中でどうにかこうにか伝えなきゃならないですけど、日本に戻って『言葉の壁がないなら何でも伝えられる』って、自分が広がって自由になった感じがして、コミュニケーションも楽になりました」

――物事を多面的に見れるようになった、と。

「日本と韓国は似ているようで、やはり違いますよね。同じように“こういうものだ、こうしなきゃいけない”って思い込んでいたことが、実際はそうでもないこともあるということを、韓国で知ったんですね。日本にいたままでもそういうことを学べる人はもちろん多いですが、私の凝り固まった脳みそは(笑)、海外で苦労したくらいがちょうどほぐされてよかったんだろうな、と思います。周囲で温かく見守ってくれる方々がいるので、これからもたくさんの壁にぶつかることがあるでしょうけど、今なら突破できる気がします」

息を抜くことで、壁を飛び越えられることもある

――日韓の橋渡し役として、現在の活動を教えてください。

「日本を紹介する韓国の旅番組に出させていただいています。知られざる場所を紹介したり、有名な観光地の新しい魅力を再発見したり、反響は大きいようです。個人のYouTubeに関しては、韓国のスタッフと連絡を取り合って、私もいろいろアイデアも出しながらやっています。面白かったのは、おせち料理の回。おせちは韓国でも認知されているのに、“黒豆はマメに働く”のように、料理一つ一つに意味があることを知っている方は少ないんです。日本人からすると小さいころから知ってることなので、盲点だったというか。生活の中のちょっとしたことを発信できるというのは楽しいですね」

――ご自身を「ワンテンポずれがち」とおっしゃっていましたが、逆に先読みが早いのでは?

「私ではなく、韓国が早いんです。YouTubeは2年前すでにタレントによる動画配信がブームになっていたので、韓国のスタッフにすすめられたんです。私も脳がほぐれてきた時期だったので、状況が分からないけどやってみたら、コロナ禍でも個人の魅力を発信できるツールになっていた。ちょっと早めに始めることができてよかったです。今年は日本の皆さんによいお知らせができそうです」

――ボーダーレスに活躍する藤井さんの人生に大切な3つの要素を教えていただけますか?

「信頼、夢、余裕です。人間関係の上に成り立つのが信頼。それがないと安心して毎日が過ごせませんから。そして2つめは夢です。9歳からこの仕事をさせていただいていて、ずっと走って来た感はあるんですけど、すてきな先輩が目標になったり、こうしたい、ああなりたいという願望があるからこそ、毎日が輝くし、大変でも笑えます。3つ目に余裕を挙げたのは、少し息を抜くことで、ずっと越えられなかった壁をふいに飛び越えられることもあるから。ずっとガチガチじゃアカンな~(笑)って最近思いました」

――その3つの要素が、藤井さんのしなやかさに磨きをかけていたのですね。

「“このままでは新しい何かが生まれない”という時には余裕を持って1度離れて俯瞰で見てみる。これまで楽しいこともスランプもあったんですけど、そのほうが人生輝くのかなって。また変わるかもしれないですけど。でも変わることも成長だから、ずっと成長し続ける俳優になれたらいいですよね」

藤井美菜

藤井美菜
1988年7月15日アメリカ合衆国生まれ新潟県出身。’06年、映画『シムソンズ』でデビュー。'08年東方神起の『どうして君を好きになってしまったんだろう?』のPVに出演、日本と韓国を行き来して活動し、'12年からは本格的に韓国での活動を開始。人気バラエティ『私たち結婚しました 世界版』('13)ではFTISLANDのイ・ホンギと“国際カップル”で出演。現在に至るまで、日韓でドラマ、舞台、CMなど幅広く活動中。

[医療捜査ドラマ『ドクター探偵』とは]
ト・ジュンウン(パク・ジニ)は、優秀な医師だが、大企業御曹司の元夫家族に妨害されて、娘と自由に会えない状況に追い込まれ、苦しい日々を送っていたある日、UDC(未確認疾患センター)にスカウトされる。UDCは、労働災害発生時に医学的立場から災害の原因となる物質と疾患の調査を実施、捜査権も持った独立機関のこと。そこで医師のホ・ミンギ(ポン・テギュ)や、証拠分析の要である分析チームのソク・ジニ(藤井美菜)といった個性的な仲間とともに、企業が巧妙に隠した秘密を暴き、被害者である労働者たちを救っていく。

組織的な情報隠蔽と情報操作正社員雇用をちらつかせて危険な労働をさせたり、サービス残業を強いられて心身に不調をきたす者の増加。一向に改善されない職場環境を巡る物語は、現代を生きる全ての人に刺さる内容だ。2019年に韓国でオンエアされた本作だが、現在のコロナウィルスによる世界の混乱と重なるエピソードも。現代社会が抱える労働問題について考えるキッカケになるだろう。

特筆すべきはそのリアリティ性だ。本作は1992年から韓国で放送されている真相追跡番組『それが知りたい』のプロデューサーが初めて監督を手掛けたもの。地位や権力を持つものたちが長い間、隠蔽していた不正や忖度、悪の正体、それらに対して強く憤る国民の感情……。全て実話ベースの物語は、働く人々を守りたい、社会を変えたいと、心に強く訴えかけくる。

予告編:https://youtu.be/imk4HGnKr74

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藤井美菜 撮影:宮田浩史 衣装:CLANE