皆さんの身近に「共感能力」が高い人はいるだろうか。共感能力が高い人は、優しく思いやりのある人というイメージだがいかがだろう。「教えて!goo」には「共感力がないと言われます」というユーザーから、共感力の必要性について相談が寄せられていた。そこで今回は、心理学の専門家でありパーソナリティーコンサルタントである横山人美さんに、共感能力の解説とともにその能力を努力などで高められるか伺った。

■人間の共感能力とは?

まず、人間の共感能力について聞いた。

「共感とは『相手の感情を理解し共有すること』であり、共感能力とは『自分ではなく相手に焦点をあて、相手を理解しようとすることができるか否か』です。相手の状況や体験談、それ以外にもドラマ、映画、音楽、ニュースなどに対して、自分の感情や考え方、思いは横に置き、その渦中にいる人や事象に寄り添おうとする力のことです。相手の感情や思いを尊重する力といえます」(横山さん)

「同感」と混同されることが多いが、共感と同感は「主体」が異なるとか……。

「たとえば、相手が『昨日観た映画の〇〇の場面にとても感動してね……』と話題にしたとき、『とても良い映画を観たんだね。〇〇の場面に感動したんだね』とするのが『共感』であり、『わかる、わかる! 私もその場面で号泣しちゃった』とするのは『同感』です。共感の主体は『相手』なのです。一方、同感の主体は『自分』です」(横山さん)

つまり、共感とは「相手と全く同じ気持ちではない」ということだ。

「ときには、相手と全く違う感情や思いを抱く場合もあります。それでも共感するということは『相手をありのままに受け入れている状態』もしくは、『違いを受け入れ、互いに響き合っている状態』といえます」(横山さん)

人は他者からの共感を得ると、どのような状態になるのだろうか。

「『自分のことを理解してもらえた』と安心し、もっと話したい、もっとわかってほしいと思うようになります。共感能力とは、人と人とが信頼を獲得しながら関わり合うために、必要なスキルのひとつといえるでしょう」(横山さん)

人間関係を円滑にする共感能力は、高い低いに関わらず持っておくべき能力のようだ。

■共感能力は高められる?

共感能力の素地を形成するためには、親の共感能力が子どもに大きく影響するという。

「アメリカの心理学マーチンホフマンは、生後1日の乳児が他の乳児の泣き声に反応して泣くことを、他者の苦痛を自己の苦痛であるかのように感じる『原初的な共感反応』と位置付けています。共感の発達に最も大切なことは、幼い頃に親から受ける共感的な対応といわれています」(横山さん)

では共感能力が低い場合、高めることはできるのか。

「『相手に共感しようとする姿勢』を身に付けることが大切ではないでしょうか。カウンセラーや心理、福祉職に就く人たちは、クライアントとの信頼関係を築くために、共感をスキルとして学びます。その能力を身に付け、高めることは可能です」(横山さん)

共感能力は、高すぎてもよくないという。

「過敏になり過ぎると、自分の感情と相手の感情のボーダーラインが見えなくなります。相手に起きている事象に入り込みすぎても、自分のことのように思い悩んでしまいストレスに感じるかもしれません。最近、共感力が高すぎる人のことを『エンパス』や『繊細さん』などと呼び、社会で生きにくい人の代名詞にされがちですが、相手に寄り添う能力が高いことは決して悪いことではありません。気にしすぎず辛いと感じたら、相手や身のまわりの事象、SNSなどから距離を取ることをおすすめします」(横山さん)

最後に横山さんは、共感能力を高めるための具体的なアドバイスをくれた。

「他者から愛され、共感されているという認識や実感がなければ、他者への共感能力を高めることはできないでしょう。そのためにはまず自分を愛し、そして自分から他者を愛することが大切ですね」(横山さん)

共感能力とは、愛情同様、一人で高められるものではない。大切な仲間などの相手との相互作用のもと、身に付け磨かれるものなのだろう。

●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害との関わり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)