批評家だけの目で選んだ映画賞として1991年に発足した日本映画批評家大賞の第30回受賞者が10日、公式サイトで発表され、作品賞に『星の子』が選ばれた。主演男優賞には『山中静夫氏の尊厳死』の中村梅雀と津田寛治、主演女優賞には『私をくいとめて』よりのんを選出。また、『MOTHER マザー』で長澤まさみ演じるシングルマザーの息子を演じデビューを飾った奥平大兼が、新人男優賞(南俊子賞)を受賞した。

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 作品賞を受賞した『星の子』は、芥川賞作家・今村夏子の同名小説を大森立嗣のメガホン、芦田愛菜の主演で映像化。“あやしい宗教”を盲信している両親の元で暮らす娘(芦田)が、次第に自身を取り巻く環境へ疑問を抱き、葛藤する姿を描き出した。

 のんは、『私をくいとめて』で主演女優賞を受賞。芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を大九明子監督のメガホンで実写化した同作は、のん演じる脳内に相談役が《爆誕》した31歳おひとりさまと、林遣都演じる年下男子の、あと1歩近づけないむずがゆい恋模様を描いた。

 梅雀と津田は、ともに『山中静夫氏の尊厳死』で主演男優賞を受賞。南木佳士の同名小説を基に村橋明郎監督が実写化し、末期がんで余命3ヵ月の宣告を受け、ある決意をした患者と、彼を担当することになった医師の命をめぐるやりとりを描いた。患者役を梅雀、医師役を津田が演じた。

 監督賞を受賞した大九監督は「監督賞。なんと畏れ多い。何かを作りたくて模索して、映画の道にたどり着いて以来私は、映画作りに夢中です。しかし撮りたいものが私の脳内にどれほど湧いたとて、それを形にしてくれるスタッフ、俳優がいなければ、1フレームたりとも作ることができません。私に、映画監督という立場を与えてくれる全スタッフ・俳優、そして何より、私の映画を観てくださる全ての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました」とコメントした。

 主演女優賞を受賞したのんは「この度は、素敵な賞をいただき心から嬉しく思います。演技をする事は私にとって生きる術で、これがなかったら自分は何者にもなれずにモヤモヤとした日々を送っていただろうなと確信しています。そんな私が役を演じて賞をいただけるのは、こんなに幸福な事はないっていうくらいに嬉しい。明日からも元気に演技に励めそうです。これからも楽しく、精進して参ります。ありがとうございます」としている。

 また、新人男優賞(南俊子賞)を宮沢氷魚と奥平大兼が受賞。奥平は「これまで頂いた賞と同じように僕がこんな賞を頂いていいのか、という気持ちはありますが、このように映画批評家の方々に評価して頂ける事はすごく嬉しいですし、今後の役者活動の糧になりました。そして今回、演技経験のない僕を選んでくださり、僕に演技のことを教えてくださった監督・キャスト・スタッフの皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。他の作品でも来年、再来年とまた違う賞を受賞出来るように頑張ります」とコメントした。

 授賞式は、5月31日17時、新宿文化センター大ホールにて行われる。

 「第30回日本映画批評家大賞」受賞作品・受賞者は以下の通り。

作品賞:『星の子
アニメーション作品賞:『劇場版 ごん ‐ GON, THE LITTLE FOX ‐ 』
ドキュメンタリー賞:『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』
監督賞:大九明子/『私をくいとめて』
主演女優賞:のん/『私をくいとめて』
主演男優賞:中村梅雀/『山中静夫氏の尊厳死』
主演男優賞:津田寛治/『山中静夫氏の尊厳死』
助演女優賞:浅田美代子/『朝が来る』
助演男優賞:宇野祥平/『罪の声』
新人女優賞(小森和子賞):服部樹咲/『ミッドナイトスワン
新人女優賞(小森和子賞):佳山明/『37セカンズ
新人女優賞(小森和子賞):吉本実憂/『瞽女GOZE』
新人男優賞(南俊子賞):宮沢氷魚/『his』
新人男優賞(南俊子賞):奥平大兼/『MOTHER マザー
新人監督賞:内山拓也/『佐々木、イン、マイマイン』
新人監督賞:HIKARI/『37セカンズ
新人監督賞:佐藤快磨/『泣く子はいねぇが』
編集賞(浦岡敬一賞):李英美/『スパイの妻<劇場版>』
ゴールデングローリー賞(水野晴郎賞):火野正平/『罪の声』
特別賞(松永武賞):新文芸坐
映画音楽賞:渋谷慶一郎/『ミッドナイトスワン
国際審査員特別賞:チェ・ブラム

「第30回日本映画批評家大賞」のんが主演女優賞&奥平大兼が新人男優賞受賞  クランクイン!