米マイクロソフト(MS)と米グーグルが、互いの商慣行を非難し、激しく「口撃」し合っていると、米CNBCや米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが3月12日に報じた。

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MS社長「グーグルは報道機関の利益を吸い上げている」

 マイクロソフトブラッド・スミス社長は、米下院司法委員会の反トラスト法・商法・行政法小委員会が3月12日に開いた公聴会での証言で、「グーグルは報道機関を自社サービスに依存させる一方、報道機関のニュース記事を使って利用者をつなぎとめ、利益を上げている」と批判した。

 「グーグルのサービスが利用者を報道機関のサイトに誘導していることは事実だが、グーグルが利益のほとんどを吸い上げているため、報道機関は収益化が困難になっている」と述べた。

 同氏は、米国の世論調査機関、ピュー・リサーチセンターのデータを引用し、2005年に494億ドル(約5兆3900億円)あった新聞広告収入は18年に143億ドル(約1兆5600億円)に激減したと指摘。「グーグルの広告収入は同じ期間に61億ドル(約6700億円)から1160億ドル(約12兆6600億円)に増えた」とし、「これは単なる偶然ではない」と述べた。

グーグル上級副社長「MSは20年前と同じ手法で競合を攻撃」

 グーグルは反論している。同社の国際問題担当ケント・ウォーカー上級副社長は声明で「グーグルマイクロソフトはクラウドサービスや生産性アプリ、ビデオ会議、電子メールなどの分野で競合している」としたうえで、「競争が激化する中、残念ながらマイクロソフトは20年前と同じ手法で競合を攻撃している。マイクロソフトの主張は利己的で、オープンな規格のウェブを破壊しようとしている。当社と報道機関の関係に関する同社の主張は明らかに間違っている」と批判した。

 米司法省は1998年マイクロソフトが、自社オペレーティング・システム(OS)の独占的地位を利用して、自社ウェブブラウザー「インターネット・エクスプローラー」を標準ブラウザーとして搭載することや、インターネットサービスプロバイダーと排他的契約を結ぶなどし、不当に競争を阻害したとして、同社を反トラスト法違反で提訴した。

 また、マイクロソフトは2012年に「Scroogled」と呼ぶグーグルを攻撃対象にした広告キャンペーンを展開した。グーグルのウォーカー上級副社長は、これらマイクロソフトの過去の行為に触れ、今回の証言は昔を思い出させる攻撃であり、お得意の作戦がまた始まったと批判した。最近は、マイクロソフトのメールソフトを標的にした大規模なサイバー攻撃があった。グーグルは、「今回の証言はこの騒動から注意をそらす狙いもある」と述べた。

グーグルとMS、記事対価巡り豪州で火花

 グーグルマイクロソフトは報道機関のニュース記事を巡ってオーストラリアでも対立した。 豪政府は20年12月、グーグルや米フェイスブックを念頭に、IT大手に対し記事使用料の支払いを義務付ける法案を議会に提出した。これにグーグルフェイスブックが反発。グーグルオーストラリアニュージーランド担当幹部メル・シルバ氏は21年1月22日、豪議会の委員会に出席し、「法が成立した場合、グーグルは検索サービスをオーストラリアでやめざるを得なくなる」と述べた。

 これに対し、マイクロソフトブラッド・スミス社長は21年2月3日に声明を出し、豪法案を支持する立場を表明。「他のテクノロジー企業は時に豪市場から撤退すると脅すかもしれないが、マイクロソフトは決してそのような脅迫はしない」と述べた。そのうえで、自社の検索サービス「Bing」を競合サービスに匹敵するものにするため、さらなる投資を行うと述べた。

グーグルに対する3件の反トラスト訴訟

 グーグルは現在、厳しい状況に直面している。同社は米国の連邦政府と州政府から計3件の反トラスト訴訟を提起されている。司法省は20年10月20日、11州の司法長官とともにグーグルを提訴した。この訴訟には後にカリフォルニア州などの3州が原告団に加わった。同年12月16日にはテキサス州など10州の司法長官がグーグルを提訴。同12月17日にはコロラド州など38州・地域の司法長官が同社を提訴した。

 21年3月9日、米政治専門サイトのポリティコCNBCは、バイデン大統領グーグル、米アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、米アップルのいわゆる「GAFA」などのテクノロジー大手の商慣行を批判する反トラスト専門家2人を起用すると報じた。

 米連邦取引委員会(FTC)の委員に米コロンビア大法科大学院のリナ・カーン准教授を指名するという。バイデン大統領は21年3月5日、米国家経済会議(NEC)でテクノロジー・競争政策を担当する大統領特別補佐官にコロンビア大法科大学院のティム・ウー教授を起用した。バイデン政権は著名な2人を起用し、テクノロジー大手に対する規制強化の意向を示したようだと報じている。

 (参考・関連記事)「フェイスブックが豪政府にあらためて反論

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マイクロソフトのブラッド・スミス社長。3月12日の公聴会にて(写真:ロイター/アフロ)