キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)のキリン中央研究所(所長 出内桂二)は、慶應義塾大学との共同研究で、乳由来の「βラクトペプチド※2の1つであるGTWYペプチド※3」(以下、GTWYペプチド)が集中力を高めるメカニズムの一端を世界で初めて※1解明しました。当社はこの研究成果を2021年3月18日(木)から21日(日)までの期間に開催される「日本農芸化学会2021年度大会」で発表します。
※2 乳タンパク質に由来し、トリプトファン‐チロシン(WY)のアミノ酸配列を含み認知機能改善作用を有するペプチドの総称。
※3 βラクトペプチドの主要な1成分で、グリシン‐トレオニン‐トリプトファン‐チロシン(GTWY)という4アミノ酸配列のテトラペプチド。
●研究の背景
「超高齢社会」を迎えた日本において、加齢に伴う認知機能の低下や認知症は大きな社会課題となっています。認知症は有効な治療方法がないことから、食事などの日常生活での予防に注目が集まっています。近年の日本人を対象とした疫学研究では、牛乳や乳製品の摂取が認知症や認知機能低下のリスクを低減すると報告されています※4。
当社は東京大学や協和キリン株式会社と連携した長年の脳科学研究の成果として、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれる乳由来の認知機能改善ペプチドとしてβラクトペプチドを発見したことを2018年に報告しました※5。また、当社は慶應義塾大学と連携したヒト試験で、GTWYペプチドが記憶力および注意力を改善することを2019年に報告しました※6。
※4 Ozawa M, et al, Journal of the American Geriatrics Society, 2014, 62(7): 1224-1230
※5 Ano Y, Nakayama H, et al., Neurobiology of Aging, 2018, 72: 23-31
※6 Kita M, Ano Y, et al., Frontiers in Neuroscience, 2019, 13: 399

●本研究の概要
当社は慶應義塾大学との共同研究で、健常中高年を対象に、ランダム化二重盲検比較試験※7を実施し、GTWYペプチドを含むサプリメントの摂取がヒトの脳活動に及ぼす作用を検証しました。負荷課題中の脳波を測定した結果、GTWYペプチド摂取群では、集中を要する認知課題中の前頭葉から頭頂葉における測定箇所のP300の振幅が、プラセボと比較して統計学的に有意に増大しました。P300は集中力に関わる神経活動の指標ともされており、本結果はGTWYペプチドが集中力を高める脳内のメカニズムの解明につながります
※7 参加者を無作為に偽薬と実薬の群に分け、試験完了までいずれの群かわからない、治験で用いられる試験方法。
<試験方法>
45歳から65歳の健常中高齢男女30名を対象に、GTWYペプチドを摂取する群とプラセボ摂取群に無作為に割り付け、6週間摂取する二重盲検化試験を行いました。摂取0週目および6週目に認知機能課題実施中の脳内の神経活動状態を64チャネルの脳波計を用いて測定しました。
<試験結果>
GTWYペプチド摂取群では、摂取6週目の集中力を要する認知機能課題中の頭頂葉および前頭葉から頭頂葉の測定箇所において検出される脳波P300の振幅が、プラセボ群と比較して統計学的に有意に高まることを確認しました(図1)。

図1 脳波測定の結果
介入前後の聴覚提示課題中の脳波測定の結果。GTWYペプチド摂取群ではプラセボ群と比較して有意にP300の脳波変化が増大。Bars are mean ± S.E. (各群N=15), p*

配信元企業:キリンホールディングス株式会社

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