新型コロナウイルス感染症に端を発した急速なテレワークの普及や価値観の変化を背景に、「地方への移住」に関心が高まっています。

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その中でも「ゆるい移住」と呼ばれるおためし移住や、初回の移住がうまくいかなくても次を探してまた試せばいいといった柔軟な考えのもと、まずは移住してみるという人が増えてきています。

そこで今回は、ゆるい移住や、移住にまつわるお金や教育事情について解説します。

コロナ禍で注目が集まる「ゆるい移住」

ひと昔前の移住というと、定年退職後の夫婦がUターンまたはIターンして第2の人生を始めるというのが一般的だったようですが、近年は30代~40代の若い世代での移住が増加傾向にあります。

価値観や働き方の多様化が移住のハードルを下げているようです。

そうはいっても移住となると環境が大きく変化します。そのため、まずは試しに移住体験ができる「ゆるい移住」に注目が集まっています。

先駆けは福井県鯖江市

「とりあえず住んでみる」というコンセプトで2015年にゆるい移住を募集し始めたのが、福井県鯖江市です。

従来のIターンや移住促進事業は地元企業への就業や地元での起業、農業や地場産業への従事など条件があるものが多かったのですが、鯖江市はそれらの条件がありません。

まずは市が管理する住宅を最大半年間無料貸出しするので、移住体験をしてみて気に入ったらその後も住んで下さい、といったゆるさです。

移住への金銭的・心理的負担を減らしてお試し移住できるなら、本格的な移住を前に実際に体験することができて良い企画ですね。

全国に広がる「ゆるい移住」

現在は鯖江市以外に長野県鹿児島県などの市町村でも、多少条件は異なりますがゆるい移住を実施する自治体が広がっています。

また、自治体だけではなく、全国のシェアハウスの個室を「定額住み放題」で利用できる民間サービスも登場しています。

これらのサービスを利用して、気になる地域にまずはひと月だけでも試しに住んでみることが可能になりました。

移住と「お金事情」の変化

移住と仕事

移住する場合、考えなければいけないのが仕事をどうするかです。

地方は都会に比べて仕事の絶対数が少ないため、基本的には転職先を決めてから移住した方が確実です。

しかし、テレワークの普及により出社不要な完全テレワークの会社や、月に1~2日程度出社すれば良い会社も一部ですが増えてきました。

この場合、移住先のインターネット環境が整っていて勤務先の許可が下りれば仕事を変えずに移住が可能になります。

もし移住に合わせて転職や起業をする場合は、賃金水準が都会に比べ低くなることが一般的です。

その場合はライフプランを考えて、減った収入に見合った暮らしに合わせる、他の家族も就労して世帯の収入を増やすなど、必要に応じて対策した方が良いですね。

家族で移住する場合の「お金と教育」

家族で地方へ移住する場合、お金と子どもの教育環境について下調べをしておくことが必須になります。

お金と教育、それぞれ移住で変化するポイントについて確認しましょう。

移住とお金事情の変化

移住に伴い転職や起業をした場合、都会で働くことに比べ収入は減ることが一般的です。

支出は、食費や住居費が低くなる傾向にありますが、極端に割安になる費用ばかりではありません。公共交通機関が発達していない地域だと車移動が必須になり、車関係の保有コストが上がります。そして気候が寒い地域だと冬場の燃料費もかさみます。

また、移住には引越し代や住居関連費用、家具・家電の購入費などもかかります。地方に移住したからといって金銭的にゆとりある生活には必ずしもならないことは認識しておいた方が良さそうです。

参考に、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が作成した「平成29年2月17日 地方における生活について~各県が作成している移住PRパンフレット等より~(平成29年2月17日)」の、夫婦と子ども2人の家族が福井県東京都で暮らした場合の世帯収支の差の比較を見てみると、世帯主の年齢が23歳~60歳までのトータルで、福井県の方がなんと約3,000万円も多く手元に残るのだそうです!

色々な条件の差や地方のアピールも兼ねているので、一概にそこまで収支の差があるとは考えにくいですが、世帯主の年齢が若いうちに移住してうまく生活すると、金銭的にもゆとりある生活が送れる可能性が高くなります。

移住者の誘致をしている自治体では、移住者への支援制度や教育費の助成制度などを用意していますので有効活用したいですね。

移住と教育事情の変化

子どもがいる家庭にとっては、教育事情も大事な要素です。子どもには自然豊かな環境でのびのびと育ってほしいと願う親は多いですが、成長するにつれて学習塾や進学先の数も気になるところです。

都会では私立の学校も地方に比べて数が多く、中学から私立へ行く子も少なくありません。しかし、地方ではそもそも私立の学校数が少ないため、都会に比べ高校までの教育費は少なくなります。

しかし、大学等への進学にあたっては自宅から通える学校数が限られることから自宅外通学になる確率が高く、費用がかさむ場合がでてきますので、その点は注意が必要です。

地方だからといって一概に教育の質が下がるわけではなく、公立学校でも優秀な教育が受けられる地域があったり、自然教育や国際教育に力を入れている学校もあったりします。

そのため、子育てや教育で重視したい項目に適した移住先を選ぶことが大事ですね。

移住は実際に行動に移してみないと分かりません。迷うことも多いかと思いますが、現地に一定期間滞在したり「ゆるい移住」をしたりして、まずは体感してみるのが一番ではないでしょうか。

【執筆者プロフィール】
田端 沙織
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャル・プランナー

証券・運用会社で10年以上の勤務経験を活かし、FPサテライト(株)所属ファイナンシャルプランナー 兼 金融教育講師として、「正しく・楽しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える活動をしています。得意分野は資産運用。2男1女を絶賛子育て中。